新年の始まりを彩る小正月行事「酉小屋」を訪ねて【福島県いわき市】

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(写真:福島県いわき市四倉海岸)

「酉小屋(とりごや)」とは、福島県いわき市に伝わる小正月の伝統行事。年始を祝ったお正月飾りやお札などの縁起物を焚き上げて、五穀豊穣、家内安全、無病息災などを願います。

一説にはこの酉小屋行事は、戦国時代から今の茨城県北部から福島県にかけての太平洋沿岸地域で行われており、いわき出身の民俗学者・高木誠一の著作「石城北神谷誌(いわききたかべやし)」にもかつての様子が書かれています。

(写真:福島県いわき市赤井地区)

本来「酉小屋」とは作物を食べてしまう鳥を追うためのものでしたが現在ではその役割を変え、町内会や消防団などの協力のもと、広い場所などに竹や縄で小屋を作って、松の内が過ぎる頃に正月飾りと共に燃やす習わしとなっています(日にちは地域によって前後します)。

(写真:福島県いわき市内郷高野地区)

その中でも、今回ご紹介するのはいわき市内郷高野(うちごうこうや)地区の酉小屋。この形がいわき地方でよく見られる形です。

(写真:酉小屋の内部。囲炉裏の火がかじかんだ手を温めてくれる)

この地域の酉小屋は神棚つきの3畳ほどのスペース。稲刈りの終わった田に竹で支柱を立てた後、周囲を茅で覆ったシンプルな小屋ですが、なんと扉がついているので人の出入りもできるようになっている優れもの。ちゃっかり私も中の囲炉裏で温まりながら振舞っていただいた甘酒を美味しく頂きました。

冬休み中の子どもたちも集まって、キャッキャと大騒ぎ。コミュニケーションの場ともなっているよう。

(写真:無病息災の願いを込めて餅を焼く)

始まってから1時間ほど過ぎたころでしょうか、ロケット花火の合図とともに集まったお正月飾りを酉小屋の中へ。点火したかと思うとあっという間に燃え上がり、燃え盛る火が天高く伸びていきました。

最近では高齢化や人口減少、また、環境問題への配慮から減少傾向が続いている小正月行事。いわき市でも2011年の東日本大震災による転入出や福島第一原子力発電所事故の影響で規模を縮小したり、実施を見送ったりした地域も少なくないそうです。新年を迎え、空気の澄み切ったこの時期にこそ晴れやかな気持ちで1年の始まりを過ごしたいものですね。

お時間がございましたら、ぜひ一度ご覧ください。

昆愛

昆愛

福島県郡山市

第4期ハツレポーター

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。

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