日本の近代化を支えた美とは!?震災から立ち上がったいわきの工場夜景は海辺の空間都市【福島県いわき市】

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東京と仙台のちょうど真ん中の距離に位置する福島県いわき市。その南端に位置し、茨城県と接する勿来(なこそ)地区にある火力発電所は、福島県内でも数少ない海岸沿いの工場写真が撮影できるスポットとして知られている。

幻想的な夕焼けに心を奪われる

撮影したのは、西に沈んだ太陽の光が空いっぱいに広がるノスタルジックな時間帯。いわき市中心部を車で抜け、太平洋を臨むゴルフリゾートを左手に見ながら進むと、発電所が面する岩間海岸に出る。岩間海岸沿いの遊歩道は、犬と散歩する近隣住民の方やジョギングするランナーたちの憩いの場となっているようだ。

海岸線沿いを走る県道239号線の南側にある発電所は、常磐(じょうばん)共同火力勿来発電所だ。地元では「勿来(なこそ)火力」と呼ばれている発電所だ。この発電所は東京に最も近いエネルギー源の供給地域として日本の近代産業化を支えた常磐炭田の石炭を有効活用する目的で建設された。戦後、国の政策転換で石炭産業が斜陽になったものの、2018年からは8・9号機集合煙突のライトアップを実施しており、地元では「勿来ゆめライト」の愛称で親しまれている。

信号をイメージした交通安全バージョン、織姫と彦星をイメージした七夕バージョンなど、集合煙突のライトが“夢”となって地域を“照らす”工夫がされている地域のランドマークだ。

今となっては美しいライトアップを見せてくれる発電所だが、2011年にこの発電所がある地域を襲った津波は高さ7.メートルを超えたと言われる。防潮堤は壊れ、多くの家屋が流された中、震災の翌日には約70キロ北にある福島第一原子力発電所で爆発事故が起きた。ライフラインも十分でない中、被災者がどんな心境で不安な日々を過ごしたのかは想像に難くない。

IGCCによる産業復興への期待

そして、常磐共同火力勿来発電所と同じ敷地内にある別の発電所が、2021年から運転している勿来IGCC発電所だ。IGCCとは「Integrated coal Gasification Combined Cycle」の頭文字で、日本語で「石炭ガス化複合発電」と訳される。なんとも聞きなれない言葉だ。

つまり、ここは従来の施設よりも二酸化炭素の排出を抑え、さらなる高効率化を目指した石炭火力発電所ということだ。ここで作られた電気は東京電力・東北電力に送電されるとともに、福島の復興を加速するために、産業基盤の整備や雇用も生み出している。

普段はなにげなく通り過ぎてしまう車窓から見える発電所も、ふと立ち止まってみるといろんな姿を見せてくれる。今度の週末、ちょっと気分転換にちょっといわきの幻想的な海辺風景でも見に行ってはいかがだろうか。

昆愛

昆愛

福島県郡山市

第4期ハツレポーター

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「東日本大震災における津波で被災した月待塔の追跡調査について」で渡部潤一奨励賞受賞。

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