「お客さまの中に、ネコちゃんのお医者さまはいらっしゃいますか」。新大阪発東京行きの東海道新幹線「のぞみ」の中で、獣医を求める車内放送があった。飛行機で医師を求めるアナウンスは聞くが、新幹線の中で獣医とは。熱中症になっていたネコを助けてもらった飼い主は「親切な車掌さんにひとことお礼を言いたい」と話している。
9月5日午後1時過ぎ、大学教員の樋川和子さんが、愛猫ズズ(メス・5歳)を連れて、新大阪から東京に向かう東海道新幹線「のぞみ」普通車指定席に乗車していたところ、ケージに入れていたズズちゃんの様子が突如、おかしくなった。
「舌を出して息が荒くて、すぐに熱中症だと思ったんです」
これは東京まで持たないかもしれない。そう思った樋川さんは、巡回してきた車掌に助けを求めた。「まさかこんなお願いを聞いてくれないだろう」と思った樋川さんだったが、男性車掌は、「前例のないことだが、緊急事態なので」と決断し、車内放送を行ったという。
「車内に具合の悪くなったネコちゃんがいらっしゃいます。お客さまの中で獣医さまがいらっしゃったら、お申し出ください」
残念ながら獣医は見つからなかったが、今度は1号車から16号車まで巡回し、すべての車両で声掛けを行ってくれた。そして、樋川さんのところへ戻ってきた車掌は、申し訳無さそうに「どうかこれをお使いください」と、グリーン車用の氷と冷やしたタオルを持ってきたくれたという。親切な車掌さんの助けもあり、スズちゃんは回復した。
「その優しさに感動した」という樋川さん。実はズズちゃんは赴任先のイラク・バグダッドで拾った子。海を越えて連れ帰ったという。「帰りに東京から大阪に戻った際は、心配だからペットタクシーを使った」と樋川さん。「親切な車掌さんにぜひ一言、お礼を言いたい」と、その車掌さんを探している。
※当初、愛猫の名前を「スズ」と表記しましたが、正しくは「ズズ」でした。取材時に聞き間違えました。訂正してお詫びします。(2020年10月20日午前9時)