酷暑が続く中、JR浜松駅の北口駅前広場「キタラ」で、1日に23回も地面から水が吹き出している。1回の放水は約15分間。音楽に合わせて強弱する噴水は見る人を飽きさせず、暑さを忘れさせるひと時を演出している。
キタラはJR浜松駅のメイワン口(北口)を出ると目の前。北口の「キタ」とみんなここに「来たら」を併せた交流広場の愛称。広場はひな壇になっており、最上段には徳川家康公をモチーフとした浜松市のマスコットキャラクター「出世大名家康くん」のモザイカルチャーが展示されている。モザイカルチャーとは花と緑を立体的に配置する造園技術のこと。2009年、モザイカルチャーの世界博が日本で初めて開催されたのが浜松市だ。
2024年7月10日午前10時時点の浜松の気温は30.0℃、歩いているだけで汗が吹き出してくる真夏の暑さである。10時9分、これから水を噴射するというアナウンスが流れ、その後、20ヶ所ある噴射口から一斉に水が吹き出してきた。吹き上がった水がバシャバシャと音を立てて石畳を打ちつける。飛び散った水滴が風に運ばれ肌に触れ、ひんやりとして気持ちがよい。
◆市民が交流できる公共空間として整備されたキタラ
キタラがある北口駅前広場が供用されたのは1983年10月。人と車の動線を分け、周辺道路に散在していたバス停を集約するなど、複数の交通機関をつないで人や乗り物がスムーズに移動できるよう設計がされた。しかし、供用から20年を迎えようとしていた2001年~2003年にさらに見直しが図られる。移動の起点として整備された広場が、人が集う場所として再整備されて生まれたのがキタラだ。
地面から水が吹き出す広場は人々が交流するためのステージになった。池のように区切られていたり、フェンスで囲われていたりする訳ではない。その気になれば噴水口のすぐ傍まで近づいて、水に触ることもできる(ただし、足元はびしゃびしゃ)。人が行き交い、誰でも入れるスペースなのだ。子どもたちにとっては涼しい「遊び場」になるかもしれない。
そして、同じ場所で週末に市民によるコンサートが開かれている。
「浜松は音楽の街。ピアノで有名なヤマハ株式会社や河合楽器製作所がある。中学生や高校生が演奏することもあり、人前で発表の機会があることはよいことだ」と北口駅前広場で自転車利用のマナー向上を指導する中村さんはそう話す。
コンサートの様子はYOUTUBEでライブ配信されており、足を運べない方も楽しむことができる。録画配信はされていないので注意は必要だ。
調査の途中で再整備前の北口広場には花時計があったことも分かり、待ち合わせの定番スポットだったという情報も見かけた。定かではないが、もし、花時計の思い出がある読者がいたら、コメント欄から教えていただけたら嬉しい。
◆噴水のコンセプトは不明。景観が楽しめる市民の交流の場。夏は絶好のクーリングスポットに。
夏の暑さをしのぐことができる噴水であるが、市民に涼を提供するために行っている訳ではないそうだ。市の担当者によると、設備の点検時や野外コンサート開催時を除き、年中行っており、季節やイベントによって6種類の放水パターンを用意しているという。
噴射している水は次亜塩素酸ナトリウムで消毒しているとのこと。もし家康が生きていたら、この暑さに「皆のもの、打ち水じゃ!」と号令をかけていただろう。
季節を問わず行われているというこの噴水と市民コンサート。
他の季節に訪れたことがないのでわからないが、夏には絶好のクーリングスポットになっているようだ。浜松駅を訪れることがあったら、「キタラにぜひ来たら?」