「血の通った」デジタルのつながりで未来をつくる—Yokotterが描く新しい関係人口【秋田県横手市】

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▲Yokotterの発足当初から関わる田畑晃子さん

秋田県内陸部に位置する横手市で2009年に発足したNPO法人Yokotter(ヨコッター)は、「この街でこどもを育てたい」と言われるような、横手市の未来をつくりたいという思いを持ち、Twitterを活用したまちおこしからスタートしました。

TwitterやFacebookといったSNSから、現在は、電子掲示板ともよばれるデジタルサイネージ「よこてれび」、そしてスマートフォンなどのアプリ「MINEBA(みねば)」に至るまで、オンラインとオフラインを融合させた情報発信が、地域外からも注目を集めています。

「このままではいけない!」ハッシュタグを使ったデジタル遊びが、地域と外部をつなぐツールに 

「このままではいけない!」Yokotterの代表を務め、横手で生まれ育った医師である細谷拓真(ほそや・たくま)さんが自身のふるさとである横手駅前の閑散とした様子に危機感を抱いたのがきっかけでした。

幼なじみである副代表の高橋淳(たかはし・じゅん)さんとともに、Twitter(現在X)で「#yokote」のハッシュタグを使い地域の魅力の発信を始めると同時に、横手についてつぶやいている人探しを始めました。当時横手にはTwitterを使っている人がほとんどいませんでしたが、横手が好きだという人や、地域独自のハッシュタグ「#yokote」を使った新しい「遊び」がおもしろいと、全国から関心が集まり仲間が増えていきました。

今回取材に答えてくれた田畑晃子(たはた・あきこ)さんは、細谷さんの父の事業にデザイナーとして関わっていて、高橋さんとは顔見知りであったためYokotterの発足に加わりました。

「これが関係人口の先駆がけだったかもしれない」と田畑さんが話すように、 その活動は、2011年に横手駅前にオープンした複合施設「よこてイースト」を会場として月一回開催される「よこいち。」というイベントや、横手のソウルフードを改良した「よこまき。(横手やきそば入り箸巻き)」といったご当地グルメが開発されるなど、Yokotterが中心となり、人々がリアルに顔を合わせる場を次々と作り上げました。 

▲「よこいち。」のInstagram

市をも巻き込むインターネットメディアでのまちづくり

▲Yokotter10周年の際、地元有志の方にプレゼントでいただいた切り絵

「Yokotterの活動が広がるにつれ、横手市もTwitterのアカウントを作り、#yokoteをつけて発信してくれるようになったんです。そこから市と連携をするような形でまちづくりに関わりはじめました」

2015年にはインターネットニュースサイト「横手経済新聞」の運営がスタートし、地域内外に横手の魅力を伝えるメディアが誕生しました。

2016年には横手市情報センターを設立し、デジタルサイネージ「よこてれび」を市内20カ所に設置するなど、情報発信の拠点を増やしています。

さらに、2020年には自主開発したアプリ「MINEBA(みねば)」をリリース。横手市推奨アプリとして1万5千ダウンロードされた実績があり、「よこてれび」と情報をリンクさせることで市民の生活をサポートし、行政とも自然につながることができる便利なツールとしてまちづくりをさらに活気づけています。

デジタルから生まれた関係人口が作り上げるあたたかい人のつながり

Yokotterは、インターネットとリアルの両面で人々をつなぐ活動を続けていますが、その背後には「関係人口」を増やすという明確なビジョンがあります。

関係人口とは、地域に住んでいないけれど、関心やつながりを持ち、地域に貢献したり、それをしようとする人々のこと。Yokotterの目標は、横手を愛し、支援したいと感じる人を秋田県外にも広げていくことにあります。

▲人が集う場として2012年にお茶屋さんの石蔵を改装して作った「MIRAI YOKOTE」
▲「MIRAI YOKOTE」の入口

「Yokotterのような存在があれば地域外の誰でも横手に関わることができます。オンラインの発信やイベントを通じて自発的に遊びに来てくれたり支援してくれたりする人が出てきて、気付いたら関係人口という名のあたたかい人とのつながりができていました」と田畑さん。

デジタルからはじまったコミュニティは関係人口という名の血の通ったあたたかい人とのつながりになって横手から全国に広がっています。

横手の未来を形作るのは、新しいものを受け入れる地盤があってこそ

Screenshot

「やってみればいいよ」。2009年のYokotterの発足当初30代だったメンバーたちは、困ったことに直面した時には地域の諸先輩方に相談をしていたそうです。デジタルを活用する、海のものとも山のものともつかぬ新しい取り組みだったにもかかわらず、それを寛容に受け入れてくれたといいます。「横手の未来を作るのは諸先輩たちが新しいものを受け入れてくれるそんな地盤があったおかげでもあります」と田畑さん。

「MINEBA」のアプリには「90歳になっても住みやすい街であること」という思いが込められています。ほかにも、運営するイベントなどの地域のニーズに寄り添った取り組みは、受け入れてくれた諸先輩の方々にも還元されています。

「私たちの活動はほんの小さな一歩から始まりましたが、その一歩が結びついて、年代も地域の枠も超えた多くの人々とともに歩んでいます。楽しみながら、より暮らしやすい地域の未来をさらにたくさんの人たちと共有できたらいいですね」

横手の人や文化の距離感。ちょうどいい具合のおせっかいに心を打たれる

東京都の出身で横手には結婚を機に移住した田畑さん。「水道をひねるとおいしい水がでてくるのがまず驚きでした」と横手についての感想を話してくれました。

そんな田畑さんはある時、イベントを行う際に着るユニフォームにどんぶく(綿入り半てん)が欲しい、さらにそれを横手オリジナルなものにできないかと考えました。そんな時「横手縞(よこてじま)」という織物の存在を知りました。詳しく知るほどに横手縞の反物は入手困難であることがわかり、それならば自分で織ってみたいと知人に相談します。

「知人に相談をもちかけた4日後に、知人の知人そのまた知人の方が、機織機を持っていて譲ってくださるうえ、織り方も教えてくれると連絡があったんです。良き文化をひっそりと残している人がいたり、それを教えてあげたいとつなげてくれる人がいることにこの地域のあたたかさというか、ちょうどいい具合のおせっかいに改めて心を打たれました」と田畑さんは話します。

また、現在東京在住でありながらYokotterで理事として活動をしている照井翔登(てるい・しょうと)さんについて、「中学生のころからYokotterに関わっていた彼が、知識を深め現在は官公庁との実証実験事業や県・横手市をフィールドとしたさまざまな事業を立ち上げるなどして、全国各地の企業との連携を構築し事業拡大に関わっています。さらなる新しい道をひらくという意味で彼も関係人口の重要人物といえます」。

最近の活動の中では、横手清陵学院高校の2年生向けの授業を担当しています。講義だけではなく、地元の商店を巻き込んだ、「赤門祭」を企画し、若者と地域の人々が世代をこえた交流の場をつくっています。若者の心のよりどころとなる場を提供し、地域の魅力を再発見し100年続くお祭りにしたいという願いから始まったプロジェクトです。

▲高校生が作成したポスター

横手市を支えるYokotterの取り組みは、単に地域内の活動にとどまらず、オンラインとオフラインを結びつけた情報発信を通じて、全国から関係人口をあつめ、未来の横手をともに築いていくことを目指し実践しています。地域づくりのロールモデルとして、あたたかい関係人口をつくるYokotterの活動に注目せずにはいられません。#yokoteとつぶやいて、あたたかい関係に関わってみませんか?

関わりしろ

1.デジタルメディアの発信サポート

  • TwitterやFacebookなどSNSを活用した横手市の魅力発信
  • 「横手経済新聞」のニュース記事のライティング
  • Yokotter所有の情報媒体への非営利イベントや活動の情報提供 

2. イベント企画サポート運営

  • 地元グルメ「よこまき。」や地域文化に関するイベントの企画運営
  • 若者向けの交流イベントやワークショップの企画サポート運営

3. 地域おこしプロジェクトサポート運営

  • 地元商店と協力して行う「赤門祭」などのイベントサポート運営
  • 新しい地域資源の発掘や地域文化の継承を支援するプロジェクト運営

4. プロジェクトへの支援

  •  活動を継続し、さらに拡大するための資金の支援

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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