茨城県土浦市にある「吉田農園」は、直売所も経営されているれんこん農家です。地元でも愛されているこの農園を始めるきっかけとなったのは、あの東日本大震災でした。今回、実際にれんこんの収穫から出荷までの様子を取材し、さらに会社員かられんこん農家に転身をしたその経緯についてもお話を伺いました。
目次
土浦市が位置する霞ヶ浦周辺は良質なれんこんの一大産地
茨城県にある湖、霞ヶ浦。琵琶湖に次いで日本で二番目に大きいこの湖の周りを走ると、広大なれんこん農場の水田が目に入ります。
霞ヶ浦の周囲は湿地帯が多く稲作では農機具を扱いにくいということと、減反政策の影響もあり、このあたりには数多くのれんこん農家が見受けられます。
れんこんの生産は茨城県が日本一。現在では国内の収穫量のおよそ半分が茨城県産。中でも土浦市がある霞ヶ浦周辺は、豊富な水に恵まれており良質なれんこんの産地として知られています。このあたりの産地を指定して購入する業者も数多くいるそうです。
このたびこの地域で、れんこんの栽培と出荷、そして直売所も経営されている「吉田農園」に協力をいただき、れんこんの実際の収穫の様子を見せてもらいました。
いざ、収穫!真冬の寒さの中、水中での作業
れんこんの収穫について自分は全くと言っていいほど知識を持ち合わせていなかったのですが、冬の寒い時期でも朝から、時には氷の張る水田でれんこんは収穫されています。
両足の先から胸までが一体となった厚いゴムでできた作業着。これを着て水田に入り、れんこんを収穫します。井戸から水をポンプでくみ上げ、ホースから勢いよく吐出させて水中の足元にある泥を払いのけ、蓮(はす)の地下茎であるれんこんを掘り当てます。
このポンプを使って井戸水を噴出させる「水堀法」が考案される以前は、水田の水を抜いたあと土から掘る方法が採られていたそうです。
れんこんの植え付けと収穫の時期
れんこん栽培は、まず種れんこんを水田に植えるのが4月頃。そして夏の一番暑い頃になると、蓮の花が一面にきれいに咲き誇ります。その後10月頃までが、れんこんの肥大期。収穫は早いものでは8月初め頃、その後冬から春先まで収穫が続けられます。
もっともも忙しくなるのは、「お歳暮」や「おせち」の材料として需要が高まる12月。この時期は収穫だけでなく、箱詰めや出荷の対応で大忙しです。
「おせち」にも使われる通り、れんこんは縁起のいい食べものとして昔から重宝されてきました。
れんこんを漢字で書くと「蓮根」。蓮は仏教における極楽浄土に咲く花として知られるうえ、穴が開いているので「先が見通せる」としてとても縁起がいいとされています。
「家族で一緒に」東日本大震災でれんこん農家への転身を決意
この農園のオーナーの吉田さんがれんこん農家を始めたのは今から13年ほど前。それ以前は印刷会社に勤務されていたそうですが、大きな転機のきっかけとなったのが2011年の東日本大震災。当時は単身赴任中だったため、家族と離ればなれれで生活をしていました。
幸い震災での被害は甚大でなかったものの、家族と連絡が取れない状況が発生し、心配な時間を過ごすのを余儀なくされました。
家族はみな無事でしたが、その後、ご両親を含むご家族とその後のことについて話し合うことになりました。「やはり家族・親族で一緒に暮らせるのがよい」。真剣にその先のことを検討した末に出た結論は、会社を辞め、祖父母が過去に営んでいた「れんこん農家」を始めることでした。
その後は知り合いのれんこん農家で実務を学び、今から10年前の2015年に独立する形となりました。
季節の花を添えて。収穫後のれんこん出荷の様子
ここ「吉田農園」では、土壌に良いとされる微生物の力を生かし農薬を出来る限り減らして育てたれんこんを、掘りたての新鮮なうちに出荷しています。収穫後は水のシャワーで泥を落とし、水槽で丁寧に洗ってから仕分けをして箱詰めです。箱詰めの際には、箱の中に飾りの花(取材時はスイセン)などが添えられ、各地に送り出されます。
超シンプルなレシピで引き立つれんこんのおいしさ!
「吉田農園」のれんこんは地元でもとても人気があって、直売所には平日でもたくさんのお客様が来店されています。現在は公式通販サイトも設けており、蓮の葉茶など、れんこん以外の商品販売も行えるようになりました。
「れんこんをもっと多くの方々に楽しんでいただきたい」。そんな思いから、公式HPには「かんたんに作れるれんこんを使った料理レシピ集」も載せられています。
自分もこれまで、天ぷらか煮物、きんぴらでしか、れんこん料理を食べたことはありませんでしたが、「オリーブオイルとガーリックで軽く炒めて、塩コショウするだけ」という超シンプルな食べ方を教えていただいたのでさっそく試してみたところ、めちゃくちゃ簡単なのにおいしさ抜群でした!
直売所から見える筑波山が最高です
冬の澄んだ空気の中、直売所のすぐ目の前からは地元の筑波山がすごくよく見えます。吉田さんも「ここから見る筑波山は、木や建物などにじゃまされることがないので最高です」と話します。
最後に「転身した結果はいかがですか?」の質問に、「この農園のれんこんは違うね」とお客様に評価していただいているのが何よりです。そして今はこの道で生活もちゃんとできています….」と語る吉田さん。これからもご家族と一緒にそしていつまでも仲睦まじくお過ごしください。この度はたいへんお忙しい中ご協力いただきまして本当にありがとうございました。
情報
れんこん農園&直売所「吉田農園」
住所:茨城県土浦市田村町1071
駐車スペース:直売所の前にあり(計約8台)
TEL:029-828-0549
営業時間:9:30-16:30 / 定休日:土曜日
公式HP:https://www.yoshida-emrenkon.jp/