農村住居の建築から始まり60余年、敬意と感謝で歴史を紡ぐ2人の軌跡。なぜ“年間10棟”?【新潟県新潟市】

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有限会社吉川建築

SATORU YOSHIKAWA/YUKI YOSHIKAWA
吉川 悟 氏/吉川 雄輝氏

お客さま目線の家造りで評判を集めている新潟の有限会社吉川建築。農村住宅がほとんどだった田園エリアで、今から60年以上も前から住む人の快適性を最優先にした家造りを開始したのが代表取締役社長を務める吉川 悟(よしかわ さとる)さんです。2015年からは息子であり、営業部長を務める雄輝(ゆうき)さんが新たに加わり、その評判はより高いものに。そんなお2人にこれまでとこれからについて伺いました。

従来の慣例は無視し、住む人の快適性を最優先に。目指す「エリアナンバーワン」

今の会社形態にされた経緯を教えてください。

悟さん:私が家業を継ぐ前から、吉川建築として個人でやってきていたのですが、私に代替わりするにあたり、信用の向上や税制上のメリットなどを考えて、1963年に会社組織にしました。

代表である悟さんはどのようにして家業に入られたのですか?

悟さん:中学を卒業してそのまま大工として家の仕事を手伝うようになりました。ずっと現場に立っていましたね。当時は中新田というこのエリアでの仕事がほとんどで、親父の代から続く家のリフォームや建て替えをしていました。25歳くらいから自分でも図面を引くようになり、現場以外のこともやるようになっていましたね。

ご自分で図面を引くようになり、お父さまに当たる先代と家造りの面で変化は出ましたか?

悟さん:親父は「俺に任せておけ」というスタイルで、お客さまの主張が図面に反映されるようなことはほとんどありませんでした。そもそもこのあたりは農村住宅がほとんどで、家のパターンも決まっていました。玄関を大きくしたり、客間を家の中でもっとも採光などが取れる一番いい場所に据えたりというふうに。

しかし、私が図面を引くようになってからはこれらの慣習をまったく無視するようになりました。住む人の快適さを一番に考え、採光や機能、動線を優先した図面を引くように心がけました。新築やリフォームもいくつかして、住んだ人たちの口コミが広まり、徐々に評判が広がっていった。そんな感じでしたね。

63年から何棟ぐらい手掛けていらっしゃるのですか?

悟さん:このエリア以外も含めたら、延べ200じゃ足りないな。でも、正直まだまだです。このエリアに住んでいる方々にもっと「吉川建築」の名を知っていただき、建築会社としてエリアナンバーワンの知名度になりたいと思っています。

“お客さまに寄り添った家造りがしたい”と大手を退職し、入社した息子。新風で変化した業務形態

現在の事業内容を教えてください。

悟さん:家を造ること全般ですね。新築だけでなく、リフォームも手掛けます。以前は、このエリアに住まわれている方々が主なお客さまでしたが、現在は同エリア以外のお客さまの割合のほうが多くなりましたね。

息子さんで営業部長の雄輝さんが吉川建築に入られたのはいつのことですか?

悟さん:2015年だったかな。

雄輝さん:大手住宅メーカーで3年営業職として働いた後、別の大手住宅メーカーで同じく3年営業職をしていました。二つの会社を経験して「お客さま目線の家造りをしていない」ということに嫌気が差すようになりました。この悩みを当時の会社の先輩に話したところ、「自分が戻れる会社が実家としてあるなら、そこで自分の目指す家造りのサポートをしたらいい」とアドバイスをもらいました。このひと言で、家での仕事に興味が生まれ、戻ってくることを決めました。

吉川建築に入って感じた大手住宅メーカーとの違いは何ですか?

雄輝さん:大手メーカーは分業制。営業がいて、現場監督がいて、設計士がいる。しかし、うちの会社はすべての案件が社長の頭の中にある。プランも打ち合わせの内容も現場仕事も、すべてを把握しているのは社長1人だけ。すごいな、と思う一方で万が一社長に何かあったらお客さまにも迷惑がかかってしまう。そんなふうに思いました。そこで僕はまず社長の仕事を少しずつみんなにシェアして、仕事を切り分けることを始めました。

悟さん:始めは感覚的に面白くない、なんて思うこともありましたよ(笑)。でもね、会社のことを思っての提案だったし、ある意味、重荷が減って楽にもなりました。そうしたら、徐々にエリア外のお客さまも増えてきて、建てる棟数も少しずつ増えていったんです。

現場を知ることで増した、提案の楽しさ。“年間10棟”にこだわる理由

担当するのは年間10棟というこだわりについて教えてください。

雄輝さん:吉川建築に入った当初、私は年間100棟担当したいと考えていました。そのくらい担当して、知名度も売上も伸ばしたい、と。しかし、実際にいろいろなことを経験し、経営にかかるお金や人件費、工数など、さまざまなことを教えてもらううちに、自分が目指すべき方向が違うことに気が付きました。見るべきはお客さま。契約前のお客さま。契約後、家を建てられた後のお客さま。その人たちの満足度を高める努力をすることが吉川建築の魅力の引き上げにつながる。これらの観点から導き出した年間の棟数が10棟という数字になったんです。

悟さん:息子が営業部長として入ってくれたおかげで、以前のお客さまのご自宅の定期点検などのアフターフォローにも目が届くようになったし、お客さまも安心感が増したと思います。私もそう若くはありませんし、1人でできることには限界がありますからね。

お客さま感謝祭を定期的に開催されるようになった経緯を教えてください。

雄輝さん:家を建てていただいた後もお客さまとの親交を深めるための一環として始めました。今年も6月に事務所のあるこの場所で行い、キッチンカーを呼んだり、団子まきやワークショップを企画したりしました。当日は土砂降りだったのですが、200人ほどの方々が来場してくださり、みんなで楽しい時間を過ごしました。

雄輝さんが入られてから、少しずつ進化を遂げている吉川建築ですが、ほかに変化を感じる部分はありますか?

悟さん:年代ごとに感性があると思っています。私がそうだったように、部長の世代の感性が吉川建築に加わったことで、若いお客さまのニーズにも対応できるようになりました。

雄輝さん:お客さまの希望をかなえながら、こんな要素を入れ込んでみませんか?と提案していくことが楽しいんです。大手にいたときは営業だけで、現場に立つようなことはありませんでした。吉川建築に入り、現場に立つことで初めて知ることが数多くありましたし、今でも日々発見ばかりです。こういった自らの体験を踏まえた提案をお客さまにすることに楽しみを覚えています。

目指すのは、より満足度の高い家造り。「すべての工程に携わってみたい」方を募集

展望を教えてください。

雄輝さん:現在、お客さまの満足度を高めるために、空間にメリハリをつける間接照明などは基本的に無料で対応させていただいています。年間10棟だからこそのクオリティー、顧客満足度をより高めていくことにこだわりたいです。

悟さん:ありがたいことに弊社の場合、家を建てた後モデルルームとして見学会場にさせていただけるお客さまがほとんど。新しく家を建てようと考えていらっしゃる方はモデルルームを見ることでイメージが明確になるし、自分たちらしい要素に気づくきっかけにもなります。こういったいい循環はこれからも大切にしていきたいですね。

どういった方々と一緒に仕事をしてみたいですか?

雄輝さん:「現場監督をしていました」「営業でした」という方よりも、1から10まですべての工程に携わってみたいという方とご一緒したいですね。現在、弊社には設計を担当するものが2人在籍していますが、2人とも基礎の検査などもすべて立ち会っていて、現場にも頻繁に出向いてもらっています。彼ら同様、あらゆる工程を体験してみたいという方が弊社には合っているように思います。

悟さん:やはりこの仕事の醍醐味はお客さまとの対話だと思うんです。ただ図面を描いて、描いたものの説明をして、そのとおりに家を建てて……というのではなく、一緒に造りあげていく過程が楽しいんです。(家が完成して)お客さまに「ありがとうございます」と言っていただける仕事にするためには、すべての工程を知り、お客さまの満足度を高める努力を続けられるような方とご一緒したいですね。

取材日:2024年8月8日

有限会社 吉川建築

  • 代表者名:吉川 悟
  • 設立年月:1963年
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:新築、リフォーム
  • 所在地:〒956-0812 新潟県新潟市秋葉区中新田262
  • URL:https://www.lafonte-niigata.com/
  • お問い合わせ先:0250-22-0572

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

コジマタケヒロ

コジマタケヒロ

新潟県

クリエイターズステーション

大学時代からライターとして文筆。大学卒業後は、新潟県内でエリア情報誌を発行する出版社に就職。編集に従事し、エリア情報誌の編集長や各種ムック本制作を担当する。2019年よりフリーランスに。出版社時代から得意ジャンルとしている日本酒や地域のグルメ情報を中心に新聞やウェブ媒体に執筆している。

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