〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
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2代目が育てるバラは40種・33000株!
滋賀県竜王町(りゅうおうちょう)で、1971年からバラの花を作り続けている杉本バラ園。支えているのは2代目代表の杉本正樹(すぎもと・まさき)さん(47歳)です。約5400㎡という農園は規模でいうと「中くらい」とのことですが、その中で33000株、40種類くらいのバラを育てているそうです。
バラは、一年を通して60日に一回咲きます。定植すると4〜5年咲きますが、杉本バラ園では人気や流行りに合わせて5年サイクルで品種を入れ替えています。その花たちを、10名のスタッフでローテーションを組んで育てています。
「世界で8人しか作ることのできないイングリッシュローズという特殊なバラを中心に作っているんです」と語る杉本さん。
世界で8人しか作れない!? いったいどんなバラなんでしょう。
アジアでは二人しか作れない「バラの最高傑作品」
イングリッシュ・ローズは、イギリスのデビッド・オースチンという方が改良した品種で、紀元前から続いてきたバラの系統を、現代風に改良したバラです。オールドローズ(古代バラ)とモダンローズ(現代バラ)のいい部分だけを掛け合わせていて、愛好家からは「バラの最高傑作品」と言われています。
その中でも、切り花専用品種はデビッド・オースチン社が認めたライセンスを持った人しか作れないといいます。現在ライセンスを持っているのはアジアでたった二人で、ヨーロッパやアメリカ、ケニアなど、世界でも8人だけだそうです。
デビット・オースチン社の方がイギリスから現地に訪れ、生産管理の現場を見学し、花のクオリティがどういうものかを確認した上で、「ここの産地になら作ってもらっても安心だ」ということを判断されると初めてライセンス契約ができます。
「実際にはとても繊細で作りにくいバラで、生産量も普通のバラの半分くらいしか取れません。でも、世界で8名の中から選んでいただきとても光栄なので、その『最高傑作品』という付加価値をみなさんに知っていただきたいと思って作っています」と語る杉本さん。
「杉本さんにとってイングリッシュローズの良さとは」との問いかけには次のように答えてくださいました。
「良さはまず、花びらの数。ふつうは30枚くらいですが、100枚くらいとボリュームがあるのです。見た目の形も、よくみなさんが見るのは花びらがとがった、芯の部分が高くなった形のバラだと思うのですが、古代バラは花の中心が一番低くて、お皿のような形でロゼット咲きと呼ばれます。とてもかわいらしい形です。また、香りの良さも特徴的なんですよ」
「お花っていいなあ」って思ってもらいたい
杉本バラ園は、日本ばら切花品評会で農林水産大臣賞を4回受賞しているほか、多数の品評会で賞を取っています。そんな実績のあるバラ農園でも、花を作り続けることの難しさを感じることもあるそうです。
「お花に限らず、生き物を扱う分野全般に言えることですが、ちょっと気を抜くと病気が出てしまったり、日々の管理の仕方で商品の出来も変わってくるので、365日目が離せず、大変です。気象異常や物価高などの影響もあり、お花を作る条件は年々厳しくなっています」
一方で、杉本さんはいい方向への変化も感じると話します。「バラは高嶺の花というイメージがあるのも確かですし、でも、コロナ禍でうちで過ごす時間が増えて、少しお花を飾ろうかと、そういう方が増えたのも事実でうれしいです。みなさんにお花を身近に感じてもらいたいとふるさと納税にもきっかけの一つとして出品させていただいています」
「コロナ禍」をきっかけに花を作るだけじゃなく、情報発信にも力を入れて、広くお花の楽しみ方を知ってもらいたいと体験教室なども開いているそうです。
今回の取材を通して、杉本バラ園のみなさんがバラを本当に大切に、愛情を込めて栽培していることが伝わりました。また、HPやインスタグラムにはため息が出るほどの美しいバラの花の写真がたくさんあって、うちにも飾ってみたくなりました。
ぜひみなさんも杉本さんのバラに癒されてみてください。