小麦粉の生地に餡を入れ、金属製の焼き型で焼いた円形の和菓子…。冬においしい熱々の大判焼きの名称は、関東では「今川焼き」、大阪、高知、九州西部では「回転焼き」、北海道を中心に青森や岩手で「おやき」、富山の「七越」、近畿・山陰・四国で「太鼓焼き」「太鼓饅頭」、福岡などで「回転饅頭」、大分、宮崎、長崎、鹿児島などで「ほうらく饅頭」、兵庫では「御座候(ござそうろう)」など、本当〜に全国さまざま、多種多様。
呼び名だけでも100種類はゆうに超えるものの、さらには中の具のバリエーションでも呼び名が変わるなど、手がつけられない状態に(笑)。
ちなみに秋田では、餡の代わりにハムとマヨネーズが入った「オランダ焼き」、小麦粉の生地が白い「ミルク焼き」なども存在する。
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山形などで有名なあじまんが、大判焼き論争に一石を投じる「振り込まん」を発売
そんななか、山形を中心に展開する大判焼きの「あじまん」は、毎年10月頃から3月頃まで冬季のみ限定営業。スーパーやホームセンターなどの敷地にプレハブ屋台で営業するスタイルは、山形はもとより東北地方の冬の風物詩ともなっている。
そのあじまんが、大判焼き論争をさらに混迷させるような商品「振り込まん」を、山形と秋田で2月1日から25日までの土曜、日曜、祝日に期間限定発売中だ。
さまざまな名称がある大判焼きのバリエーションが、なぜこのネーミングになったのか?
なぜ、全国に出店しているのに、山形・秋田限定なのか?
気になる疑問を、株式会社あじまんの取締役副社長である堀越一道(ほりこし・かずみち)さんに直撃取材をしてみたぞ。
名付け親は副社長。振り込まん誕生の秘密に迫る!
「振り込まんは、山形では今年で9年目、秋田では4年目になります。元々は山形県警から振り込め詐欺防止の啓蒙(けいもう)となる商品の依頼で開発したものでした」と、堀越さん。
なるほど、いきなり核心を突いた回答。
確かに、山形・秋田の両県警とコラボしているため限定発売ということらしい。注目度を高めるために、期間限定の販売スタイルになったとのこと。
しかしこの「振り込まん」、2022年からは皮にココアを入れ込みタピオカを用いたモチモチした皮に、中身はチョコレートなのだが、以前はよもぎ味だった。
その理由について堀越さんに聞いたところ「実はこの商品開発の際、振り込め詐欺を防止するということで山形県老人クラブとタイアップしたんです」と、意外な答え。
ごま味、黒豆を使った商品、よもぎ味と試作品を3つ作り、60名以上のご老人に参加してもらい人気投票を行った結果、見事60%の支持を得たよもぎあじまんが商品化されたとのこと。
さらに堀越さんが、防犯の意味合いとあじまんという商品名から「振り込まん」とネーミング。
なんと、「振り込まん」の名付け親は、株式会社あじまん副社長の堀越さんだったのだ!
あじまんキャラのスピンオフから生まれた、チョコレート味の「もっちりチョコあじまん」。
だが、ここでさらに疑問が。
なぜ、よもぎ味からチョコレート味に変化したのだろうか?
それについて、「防犯意識を地域でさらに広げるために東北芸術工科大学ともタイアップを行い、ポスターや幟旗(のぼりばた)を作成依頼していました。そのなかで、あじまんのキャラクター「あずまるくん」のキャラ変バージョンで、「さぎまるくん」が登場したんです。それを見て、その茶色のボディに合わせたチョコレート味を開発しました」と、堀越さん。
ちなみに秋田では、秋田商業高校の生徒が東北芸術工科大学の学生と同等の活動を行っている。
堀越さんは、さらに畳み込むように「サブキャラのスピンオフ企画みたいなものですね」と語る。
そのため「振り込まん」は、過去に発売されたよもぎ味と、現在発売中のチョコレート味の2種類となる。
そう考えると「振り込まん」も、「あじまん」のスピンオフになるのだろうか?
ますます、大判焼き界隈が怪しくなってきた…。
さて、この「振り込まん」。
限定品ということで毎年売り上げは好調だという。山形、秋田の方は2月25日までの限定なので、ぜひ味わって欲しい。
振り込まんの社会的な意義
県警や老人クラブ、学生など地域のさまざまな団体とタイアップして完成させた「振り込まん」について堀越さんは、「たかがお菓子なんで…」と謙遜しながらも「当社の商品でちょっとでも振り込め詐欺のことを意識してもらえればありがたいです。話題になることで防犯活動など社会貢献ができてうれしいです。お菓子屋冥利に尽きますね」と、その意義を語ってくれた。
ちなみに、このあじまん。
筆者は東北のイメージが強かったが、関東、九州まで進出し全国300店舗を展開している。
普通の「あじまん」もおいしいので、お近くにプレハブ屋台がある場合は、一度ご賞味あれ。