食べられるアート⁉ オンリーワンの「野菜ブーケ」で広がる国際交流とは?【福島県郡山市】

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福島県郡山市で国際交流活動の一環として先月、野菜や果物をオブジェとして仕立てたブーケづくりのワークショップが郡山市国際交流協会主催のもと開催された。参加者たちは、地元で収穫された野菜などを使って世界に一つだけのオリジナルブーケを制作。地元野菜の新たな魅力を発見するとともに、国際交流も深まる貴重な体験となった。

東北地方で唯一のベジタブルプロダクトプランナーで、当日の講師も務めた木村美紀子さん

 郡山市中央公民館で開催された「多言語ワイワイ広場~野菜ブーケを作ろう~」と題されたワークショップにはナイジェリア、ハンガリー、フランス、インド、イギリスなど様々な国や地域の出身者と市民約20名が参加。幼児から社会人まで幅広い層が一堂に会し、和やかな雰囲気の中でのワークショップとなった。この日、講師を務めたのは、東北地方で唯一のベジタブルプロダクトプランナーである木村美紀子さん(tabaneru代表)。木村さんは県職員として観光人材育成に携わった後にベジタブルプロダクトプランナーの資格を取得。現在は福島県産の農産物の魅力を発信するため、県内を中心にワークショップを精力的に展開している。

ワークショップで使われた色とりどりの地元野菜、撮影:筆者

ワークショップの前半は、木村さんによる個性豊かな野菜の紹介から始まった。表面と中身の色が異なる郡山産の「カラフルにんじん」や冬が旬の「レジェンドほうれん草」、絵本に出てきそうな名前が特徴の「もものすけかぶ」、きんぴらとしても味わえる「キクイモ」、そして福島県産いちごの「とちおとめ」と「紅ほっぺ」など10種類の野菜や果物が用意された。参加者たちは珍しい地元農産物に興味津々のようすで、木村さんの丁寧な説明に聞き入っていた。

野菜ブーケの作り方を実演する木村さん、撮影:筆者

続いて始まった野菜ブーケの制作では、木村さんが一つひとつ手順を説明した。まず紫色のニンジンやスティックセニョールを軸に、長い野菜から順に配置して束ねていく。続いて、短い野菜や柔らかい葉物を加えながらバランスよくまとめていく作業は、まるで生け花のような繊細な工程だ。そして、束ねた野菜は輪ゴムで軽く固定した後、リボンで仕上げを施して完成。出来上がった「野菜ブーケ」はまるで花束のように華やかで、参加者からは「自分でこんなにきれいに作れるなんて驚きだ」という感想が上がった。

筆者が初めて制作した野菜ブーケ。想像していたより簡単だった。撮影:筆者

 ワークショップの後半では、「手軽に作れるおうちサラダを紹介しよう」と題し、参加者同士が交流を深める時間が設けられた。ナイジェリアやインドなど、参加者の母国のサラダや、手作りドレッシングのレシピが次々と紹介され、会場は国際色豊かな雰囲気に包まれた。また、郡山市国際交流協会のスタッフからは、「人種のサラダボウル」という言葉も紹介。これはさまざまな野菜が一つのボウルに集まるように、異なる文化や背景を持つ人々が互いを尊重し共存する社会を表す言葉で、この考え方は、福島県が取り組む「ふくしま国際施策推進プラン」に記載されている多文化共生社会の実現にもつながるものだ。参加者たちは、野菜ブーケ作りを通じて、多様性の美しさや、文化の違いがもたらす楽しさを実感した。

 約1時間の制作を経て完成した野菜ブーケは、世界に一つだけのオリジナル作品だ。完成したブーケを手にした参加者たちは、うれしそうな笑顔を浮かべていた。参加者からは、「普段使わない野菜に触れたり、地元の農産物の魅力を再発見できた。こういう国際交流はとても素晴らしい」と感想を語った。

 今回のワークショップは、地元野菜を通じた地域の魅力発信や国際交流、多文化共生を学ぶ貴重な機会となった。木村さんが手がける「野菜ブーケ」は、単なる美しさだけでなく、驚きと発見、そしてうれしい気持ちを届ける取り組みである。参加者が持ち帰った野菜ブーケは、食卓を彩るだけでなく、野菜という身近な存在を通して異文化を知るきっかけとなるであろう。

取材協力:郡山市国際交流協会、木村 美紀子さん(tabaneru代表)

参考:ふくしま国際施策推進プラン(福島県)

昆愛

昆愛

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。

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