牛のおいしさの秘密は餌や自然、、だけじゃない!?牛舎に鳴り響くラジオミュージックの真価とは【長崎県壱岐市】

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私の父は和牛の繁殖農家を営んでいる。牛飼いの仕事は動物を相手にしているため、年中無休の作業である。牛との生活は大変であるが、同時に安らぎも与えてくれるのだ。牛舎に鳴り響くラジオと牛の鳴き声、木々のさざめきの調和はまさにのどかな牧場生活を連想させる。そんな牛たちの多くの牛舎の空間にひっそりと馴染(なじ)んでいるラジオには、ちょっとした役割があるのだとか。

「牛が寂しくないように」牛愛が高じた牛飼いの愛情の産物

牛飼いをしている父に話を聞くと、「牛が寂しくないように」、「人の声を聞かせて人に慣れてもらえるように」といった牛への愛情が垣間見える言葉が返ってきた。牛飼いの中には、牛がリラックスできるようにとクラシック音楽や好きな音楽を流しているひともいるという。大きな体からは力強さが感じられる牛だが、実はとても繊細で牛飼いのきめ細かな配慮と愛情が牛の状態にも少なからず関わってくるのだ。

実際に牛と接していて、1頭1頭の性格や表情がそれぞれ違っていることに気付かされる。その違いを丁寧に観察して、それぞれにあったケアを心がけることで初めて牛との信頼関係を築くことができる。餌を食べ終わってじっとしている牛の中には耳をラジオの方に向けている子も。そのリラックスした表情をみると、つい顔がほころんでしまう。ラジオや音楽を聞かせるのも牛のメンタルをケアする愛の工夫の1つといえるのではないだろうか。

高品質の秘訣にもなり得る音楽の力

乳牛にクラシックやジャズの曲を聞かせると「乳量が増えて濃厚で甘い牛乳になる」、「肉牛は肉が柔らかくなって肉質がよくなる」、と日本各地で音楽を牛に聴かせるという取り組みがなされている。淡路島では、モーツァルトの曲を聴かせて育てた乳牛のみから乳を搾った「モーツァルト牛乳」が商品化されたという。ラジオや音楽によるリラックス効果、そして飼い主の愛も高品質を保つ和牛のおいしさを支えているのかもしれない。

また、私の住んでいる長崎県壱岐市には「壱岐牛」というブランド和牛がいる。父の繁殖農家とは違い、壱岐牛として出荷する肉用牛のみを取り扱う肥育農家によって育てられている。高品質な肉質に加えて、年間約1000頭しか出荷されない幻の和牛である。壱岐の人々にとっては身近な存在で、誕生日や記念日などの特別な日に食べることもある。壱岐牛も愛情をもって育てられており、上品な甘さと柔らかさが最高である。私のふるさとの和牛「壱岐牛」もぜひ一度味わってみていただきたい。

写真はすべて2025年4月29日筆者撮影

情報

JA壱岐市HP

モーツァルト牛乳

田口怜奈

田口怜奈

第8期ハツレポーター/長崎県在住のしまの高校生、6年前に大阪から壱岐島に移住。

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