2025年に惜しまれて閉店した名古屋市西区のリサイクル絵本や駄菓子などを扱ってきた絵本カフェ「たんぽぽ」と、愛知県を中心にマルシェやイベントを行ってきた子育てコミュニティ「あんどまま」が手を取り合い、親子の居場所「ぽぽまま」として再出発を目指している。
「ひとりで頑張らなくていい」―その思いをつなぐ二人の母の挑戦が始まっている。

目次
6坪の絵本カフェが支えていたもの
名古屋市営地下鉄鶴舞線・庄内通駅近くにあった「たんぽぽ」。
元保育士のミカさんが店主を務める絵本カフェだ。
わずか6坪ほどの店内には、リサイクル絵本や駄菓子がぎっしりと並び、ワークショップは低価格で開催されていた。
「ワンオペで知り合いもいなくて」
「今日、誰ともしゃべっていなかったんです」
そんな親子がふらりと立ち寄る、財布にも心にもやさしい店だった。
ただの絵本カフェを超えて、親子の交流の場になっていた。

しかし「たんぽぽ」は2025年12月、実店舗を閉店した。
以前から足を運んでいた私は、その知らせを聞いた時、とても残念に思ったが、驚きはしなかった。
低価格にこだわり、子育て世代の通いやすさを優先した商売っ気のなさ。それはたんぽぽの魅力でもあったが、負担はミカさん1人が背負っているように見えていたからだ。
ミカさんのもとには再開を望む声が多く寄せられたというが、本音を言えば、難しいだろうと私は思っていた。
彼女も3人の子を育てる母だ。
家庭を守らなければならない現実がある。
戻ってこられる場所を日常に
一方、愛知県を中心にマルシェやイベントを行ってきた子育てコミュニティ「あんどまま」。
代表のエリカさんは外国にルーツを持つ、現在4児の母だ。
16歳で妊娠、17歳で出産した。
初めての子育ては、頼れる人も同年代のママ友もいない環境だった。
「やっぱり、しんどかったですよね」当時を振り返って、少し目を潤ませた。
深夜、1歳の我が子を抱えて、歩道橋の上に立ったこともあるという。
孤独な子育ての経験が、今の活動の原点となっている。

コミュニティに参加する母親たちに寄り添いながら、エリカさんは課題も感じていた。
例えるなら、イベントは『点』。その日が終われば、また日常に戻る。
しかし、子育ての不安や悩みは、いつ訪れるか分からない。
「必要なのは、点と点をつなぐ 『線』のような場所。 母親たちが『そのまま』でいられる、日常の中の居場所なんです」
そんなとき、たんぽぽの閉店を知った。
「この人は、きっと同じ思いを持っている」
エリカさんはすぐに共同運営を申し出た。
ミカさんも居場所としてのたんぽぽを失くしたくない気持ちを持ち続けていた。
2人の思いが重なった瞬間だった。
続けるために「分け合う」という選択

こうして動き始めたのが、「ぽぽまま」だ。
絵本スペースやベビーコーナー、小さなワークショップを通して、親子が安心して過ごせる空間を目指す。集う人とともに、少しずつ育てていく居場所にしたいという。
運営は分業制。
週5日の営業のうち、3日を「あんどまま」、2日を「たんぽぽ」が担当する。
収益はサブスクリプション型を想定している。
場所も駅近から住宅街へ。
たんぽぽ常連の紹介で、以前より広い物件を無理のない家賃で借りることができたそうだ。
ミカさんは地元企業で正社員として働き、別の収入を得ながら、関わり続ける道を選んだ。
理想だけでは続かない。
だからこそ、それぞれの強みを生かし、負担は分け合う仕組みに設計しなおした。
住宅街にともる小さな灯り
6月の再出発に向け、現在クラウドファンディングに挑戦している。
目標は80万円。内装整備や安全備品費などに充てる予定だ。
不安がないわけではない。
それでも、2人は前に進もうとしている。
私は、あの閉店を「やっぱり」と思ってしまった。
けれど今、その続きを見られることが嬉しい。
「ひとりで頑張らなくていい。」
その言葉は、今、頑張っている母親たちにも、かつて孤独や葛藤を抱えた自分たちにも、向けられているように思えた。
住宅街の一角で、親子の居場所がもう一度動き出そうとしている。

情報
親子の居場所 ぽぽまま
オープン予定 2026年6月
店舗予定地:名古屋市西区江向町
nstagram:
https://www.instagram.com/popomama_place/
クラウドファンディング(CAMPFIRE):
https://camp-fire.jp/projects/927487/view





