「チェレンコフゼリー」。京都市内に住む友人から知らされたときには、原子炉の青白い光を思わせるそのまがまがしいネーミングから〝ドン引き〟してしまいました。しかしこわいもの見たさというのでしょうか、取材がてら食べてみたくなり、友人ご夫妻と待ち合わせのうえ、提供しているお店を案内していただきました。

大阪梅田駅と京都河原町駅を結んでいる阪急電鉄京都本線が京都市内で地下区間に入って最初の駅、西院駅がお店の最寄り駅です。
その周囲はちょっとした繁華街になっていて、その一角にある西院会館の中でも一番奥にあるお店が、目的の「西院のどんつき」という立ち飲み屋さんです。関西弁では「行き止まり」のことを「どんつき」というので、そこからの命名だそうです。
オーナーは一人でお店を切り盛りされています。
私が一見の客であるにもかかわらず、オーナーの軽妙な語り口で、こちらも構えることなくリラックスして滞在することができました。
オーナーのユニークなセンスが体現されているバラエティーに富んだ日替わりの酒肴を次々に注文しました。
案内者ご夫婦も私もだいぶ酔いが回ってきたタイミングで、あのチェレンコフゼリーの話に移りました。基本的に通常メニューには載せていない、いわゆる裏メニューということでした。
その日もたまたま作って冷蔵庫にあるということだったのでラッキーでした。
こちらの店主お酒を使った涼しげなものを作ろうとしていたら、たまたまそのゼリーができてしまったそうです。
使われているお酒は、ブルーキュラソーとスピリタス。
キュラソーは17世紀ごろに誕生したリキュールで、旧オランダ領キュラソー島に由来します。当時オランダ領だったキュラソー島で収穫したオレンジの果皮を使い、本国オランダで造られたお酒がキュラソーで、ブルーに着色されたもの以外にも何色かの種類があります。
スピリタスはポーランド原産の、穀物とジャガイモを主原料に蒸留を繰り返して作るお酒で、アルコール度数が96度と世界でも最高クラスのお酒とされています。
というわけでゼリーといっても相当に高いアルコール度数なので、ゼリーを炭酸水で割るという、ちょっと変わったスタイルで提供されます。
このゼリーの、“青白く発光するような見た目”から着想を得たネーミングなのだとか。お客さんの間で自然発生的に生まれ、そのまま裏メニューの名として定着したというのも、なんともこのお店らしいエピソードです。

ちなみにチェレンコフという言葉は、高速で飛ぶ電子などが水中で青白く発光する「チェレンコフ光」という現象に由来します
この現象は1934年にロシアの物理学者、パーヴェル・チェレンコフによって初めて発見され、その後、イリヤ・フランクとイゴール・タムが発生メカニズムを解明しました。
この成果により、3人とも1958年にノーベル物理学賞を受賞しています。
写真は2025年の6月14日のものですが、メールで確認したところ今も変わらず提供されているとのこと。
しかし、あくまでも裏メニューで、在庫がない時もあるそうです。電話などで確認してから訪れたほうがよさそうです。
(写真は、全て筆者撮影)
西院のどんつきインスタグラム:https://www.instagram.com/saiin_nodontuki





