子どもの頃の遊び場だった故郷の山へ。登山ガイドになった今、至山を歩く【兵庫県丹波市】

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2026年7月13日同行者撮影

兵庫県丹波市山南町にある標高約274メートルの至山(いたりやま)は、筆者が子どもの頃から毎日のように見上げてきた故郷の山です。友人に誘われ、久しぶりに登山道を歩くと、急な斜面や足元に積もった落ち葉の感触が、かつてこの山で夢中になって遊んだ記憶を呼び起こしました。一方、登山ガイドとなった今の自分は、同じ山を以前とは違う目で見ていました。

子どもの頃から見上げてきた至山

2026年7月13日筆者撮影

現在は兵庫県丹波篠山市に暮らしていますが、筆者が生まれ育ったのは、隣接する丹波市山南町井原です。

至山は、子どもの頃から身近にあった山でした。標高は約274メートルと決して高くはなく、登山口から山頂までは30〜40分ほどです。しかし、登山道には急な斜面があり、落ち葉が積もる時期には足元が滑りやすくなります。

久しぶりに登山道へ入ると、足元には落ち葉が厚く積もっていました。踏み込むたびに、柔らかな感触と乾いた音が伝わってきます。急斜面を見上げたとき、子どもの頃にこの山を駆け回っていた感覚が、少しずつよみがえってきました。

手作りの「きんま」で滑った急斜面

至山での記憶の一つに、「きんま」と呼んでいた手作りのそりがあります。

きんまは「木馬」と書き、丸太や板を組み合わせて作る乗り物です。筆者が子どもの頃、この地域では斜面を滑る遊びに使われていました。

至山の急斜面を、きんまで一気に滑り降りたことがあります。勢いが止まらず、山の麓を流れる川へそのまま突っ込み、全身びしょ濡れになって帰りました。

当然、家ではひどく叱られました。それでも、しばらくするとまた山に入り、同じように友だちと遊んでいました。

今振り返れば、けがや事故につながりかねない危険な遊びです。当時は危険を深く考えることもなく、山そのものを遊び場にしていました。

激しい雨の中、山で待ち続けた記憶

もう一つ忘れられないのが、山頂付近にあった横穴で遊んでいたときのことです。

当時、筆者たちはその場所を「防空壕」と呼び、友だちと中を探検したり、戦争ごっこをしたりしていました(実際に防空壕として造られたものだったのかは確認できていません)。ある夏の日、遊んでいる途中で突然、激しい雨が降り始めました。短時間のうちに山道には水が流れ、すぐに下山できる状態ではなくなりました。

筆者たちは雨が弱まるまで山の中で待ち続けました。服は濡れ、体は冷え、次第に辺りも暗くなっていきました。

一方、麓では親や近所の人たちが捜しに出てくれていたそうです。

雨が弱まったのは夕方7時頃でした。薄暗い山道を慎重に下り、ようやく家へ戻りました。無事だったからこそ今では話せる出来事ですが、一歩間違えば大きな事故になっていたかもしれません。

現在、その周辺には電波塔が立っています。

同じ急斜面を、今は慎重に下る

今回、かつて遊んだ斜面を歩きながら、変わったのは山よりも自分のほうなのだと感じました。

子どもの頃は、転んだり、けがをしたりすることをほとんど恐れていませんでした。しかし、今は自分がけがをすれば、同行者や救助に関わる人たちにも負担をかけることを考えます。

特に下山時は、落ち葉の下に石や木の根が隠れています。足を置く場所を確かめ、一歩ずつ慎重に下りました。

急斜面の形や、落ち葉を踏んだときの感触には、子どもの頃と重なるものがありました。一方で、その場所を見る自分の視点は大きく変わっていました。

山の怖さを知らずに遊んでいた子どもから、安全に山を歩く責任を考える登山ガイドになったのだと、故郷の山で改めて気づきました。

登山ガイドとなった今につながる原点

筆者は現在、登山ガイドとして山を歩いています。

その原点には、至山で過ごした子ども時代があります。探検をし、斜面を滑り、雨に降られ、怖い思いをし、それでもまた山へ向かいました。

                           2026年7月13日同行者撮影

当時は、なぜ山へ行きたいのかを考えたことはありませんでした。ただ、自然の中を歩き、自分で遊びを見つけることが楽しかったのだと思います。

久しぶりに至山へ登り、子どもの頃の記憶と、現在の自分が山を見る視点の両方を確かめることができました。

故郷の山を再び歩いたことで、筆者にとって至山が、今も山を歩き続ける原点の一つであることを実感しました。

※至山は標高約274メートルの小さな山ですが、急な斜面があり、落ち葉の多い時期には滑りやすくなります。登る際は滑りにくい靴を履き、天候や登山道の状態を確認することが必要です。

加藤 晴之

加藤 晴之

兵庫県丹波篠山市在住。「丹波の山猿 はっくん」として登山ガイドをしています。また前職(臨床検査技師)時代、健康講座も行っていましたので初心者や中級クラスの方に健康情報をお伝えしながら安全に楽しい登山を行っています。他のスポーツとは違う登山の魅力を体験くださると嬉しいです

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