「どうせ変わらない」は、1,157名の熱狂で打ち砕かれた。東北からローカルの未来を切り拓く「ATERUI 2026」の軌跡【宮城県仙台市】

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「どうせ変わらない」――日本の地方、とりわけ「課題先進地」と呼ばれる東北に漂いがちなそんな諦めの空気は、この2日間で完全に吹き飛んだ。

2026年9月3日〜4日、仙台で開催された東北最大級のビジネスカンファレンス「ATERUI 2026」。初開催だった昨年の約500名を大きく超え、会場には延べ総動員数1,157名という圧倒的な数の人々が結集した。

今年のテーマに掲げられたのは、起業家や地元企業、行政や学生たちが立場を超えて手を取り合う「共同戦線」だ。傍観者であることをやめ、当事者としてローカルの未来を切り拓こうとする挑戦者たちの熱源は、どこから生まれ、何を変えたのか。圧倒的な熱気に包まれた2日間の軌跡と、現場で起きた数々のドラマをレポートする。

「傍観者」を終わらせる。1,157名が共鳴した熱源とピッチのドラマ

「地方は変わらない」「若者は地域に関心がない」——そんな東北を覆う諦めの空気が、どれほど的外れなものであったかを、このイベントは数字で証明してみせた。

2日間にわたって開催された「ATERUI 2026」には、前回の500名以上の規模を大きく上回る、延べ1,157名もの人々が集結した。さらに驚くべきは、その参加者の構成である。参加者全体の実に53%が30代以下の若者層であり、自ら事業を仕掛けようとする「挑戦者※」の割合は25%に達したのだ。「何かを傍観しに来た」のではない。参加者の4人に1人が、自らの手で未来を変えようと覚悟を決めた当事者たちだったのである。

各ステージで展開された13のトークセッションでは、登壇者たちが次々と熱を帯びた言葉を放ち、会場の空気を震わせた。「危機感で怯えさせるのではなく、ワクワクで焚きつける」「湿った薪を乾かしてキャンプファイヤーを起こす」「地方経済=自己犠牲という思い込みを捨て、地方の間尺を超える」。地域の人口減少という圧倒的な課題すらもチャンスと捉え、「人口減少率にむしろ熱狂する」とまで言い切る力強い議論が交わされた。単なる情報収集の場ではなく、参加者全員の「当事者意識」を覚醒させる熱狂的なキャンプファイヤーが、そこには確かに燃え上がっていた。

その熱気が最高潮に達したのは、ステージAで開催された「東北跡継ぎ・起業家ピッチ」だ。地域の撤退や廃業、消失といった痛みを原体験に持つ7名の挑戦者がステージに上がり、満席で立ち見が出るほどの会場へ向けて、自らの事業と覚悟をぶつけた。

起業家部門の「矢賞」に輝いたのは、株式会社エムスクエアの三井純一氏である。彼は、医療機関の撤退が相次ぐ現状に対し、メディカルコンシェルジュが同乗する可動式のオンライン診療拠点を展開するという構想を発表した。「撤退して困っている地域から攻める」という逆転の戦略と、地域から失われつつある医療アクセスを絶対に取り戻すという執念にも似たビジョンは、会場に深い感動と共感を巻き起こした。

一方、跡継ぎ部門の「弓賞」を受賞したミッドホールディングス株式会社の水野剛氏は、IT・DXを軸にしたM&A戦略で、東北から本気で100億円企業を目指すという壮大な計画を披露した。「岩手・東北はつまらないと諦めている人を変えたい」。その飾らない、しかし真っ直ぐな情熱は、審査員や観客の心をわしづかみにした。

このピッチの場では、単に事業計画の優劣をつけるような冷ややかな審査は一切行われなかった。審査員からはその場で具体的な協業や支援の提案が次々と飛び交い、「どうすればこの事業を成立させられるか」を共に考える、まさに「共同戦線」と呼ぶにふさわしい光景が繰り広げられたのである。

学生PMが感じた熱狂の正体と、次の一歩への「始まり」

この1,157名が渦巻く熱狂の中心で、運営のプロジェクトマネージャー(PM)として現場を駆け抜けた若者がいる。大学3年生であり、スパークル株式会社のインターン生でもある土屋礼生氏だ。

彼はもともと、スタートアップやビジネスカンファレンスとは無縁の学生生活を送っていた。しかし、スパークルのインターンに飛び込み、東北を本気で変えようとする大人たちと出会ったことで、自身の内面にある変化を感じていたという。大役を終えた土屋氏に、PMとして会場で感じた「熱気」を一言で表すと何かと尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「『始まり』だと思います。イベントで大きな学びや出会いがあったと思いますが、それらがネクストアクションにつながらなければ意味がありません。何かしら得られたものがあったという方々にはぜひそれを持ち帰り、必ず次のステージにつなげてほしいです。それでこそ、イベントを開催した意味がありますし、そういった意味で始まりと言えると思います」

当日は運営として会場を走り回っていたため、ステージをゆっくり見る余裕はなかったという土屋氏。しかし、参加者たちの姿から確かに受け取ったものがあった。

「来場者様から『出会いがあった』といった声を聞いた時は、やはり、行動を起こしている大人の方々の勇気や行動は本当にすごいんだなと感じました。ネットワーキングでも積極的に名刺を交換し、つながりを作ろうとする姿勢は、僕自身が学んでいくべき『当事者意識』だと思いました」

参加者の半数以上を若者が占めた今回のATERUI。土屋氏の奮闘は、同世代の学生たちにも確かな波及効果をもたらしている。

「同世代の友人からは多くの賞賛の声をいただきました。同時に、『どういうイベントなの?』『長期インターンって面白い?』など、自分の活動に興味を持っていただけたことが何よりもうれしかったです。自分の行動が、誰かの次の一歩につながった『かもしれない』そんな瞬間だったからです」

地元静岡から東北の大学へ進学し、当初は「田舎だろうなぁ」と思っていたという土屋氏。しかし、この大舞台を経て、地域への見方は大きく変わった。

「確かに人は流出していますし、東京みたいな華やかさはないかもしれません。でもそれがどうしたのか。地元の良さを発信しようと奮闘する方がいて、東北ならではの良さを生かして盛り上げようとする人がいる。まだまだ可能性を秘めた東北の良さが改めて分かりました。僕自身はまだまだ未熟で、周りのメンバーがいなければ逃げていたかもしれません。でも、誰かを応援したいという気持ちだけは人一倍強いです。これからも『誰かの一番のサポーターになる』という自分の挑戦を続けていきたいです」

五感で「関わりしろ」を見つける。現場で起きた共創の実態

ATERUI 2026が並のカンファレンスと一線を画していたのは、「聞く」だけでなく「交わる」「体感する」ための仕掛けが圧倒的な密度で組み込まれていた点にある。

今年新設された「壁打ち道場」では、自らの事業アイデアや悩みを抱えた挑戦者たちが、VCや先輩起業家といった第一線のメンター陣に直接ぶつかっていった。そこでは予定調和の質疑応答ではなく、事業の根本を問い直すような白熱した議論とメンタリングが展開されていた。また、昨年から大幅に増加して32件となったブース出展エリアでは、地域企業や学生団体が独自の取り組みを熱っぽく発信していた。通路の至る所で立ち話から新たな協業のアイデアが生まれ、予期せぬ化学反応が連鎖する見事な「交差点」として機能した。

そして、カンファレンスの熱狂をさらに深く、実体のあるものにしたのが、Day2の体験型プログラムである。

議論を現場での体験へと昇華させるため、参加者たちは会議室を飛び出し、仙台市東部エリアを舞台にしたフィールドワークへと赴いた。震災の傷跡と復興の歩みが刻まれた現場を自らの足で歩き、五感で空気を感じ取る。そこで共有された「住む人がいなくても、関わる人がいれば新たなコミュニティは生まれる」という言葉は、参加者たちに地域に散らばる無数の「関わりしろ」を発見させた。ただ数字上の課題を見るのではなく、現場の手触りを知ること。それこそが、本気の共同戦線を張るための必須条件なのだ。

また、共創の拠点である「MEDIUM」においては、研究開発型スタートアップ等によるプレゼンテーションに加え、実際のウェットラボ(実験・研究空間)を巡るツアーが実施された。参加者は最先端の設備が稼働する現場の空気を体感しながら、研究者や起業家と直接対話。「この技術をうちの地元産業と掛け合わせられないか」「オープンイノベーションでこんな事業が創れるはずだ」と、企業連携や協業に向けた次の一手を引き出す、極めて実践的な議論が交わされていたのである。

次なる舞台は「山形」。未来への共同戦線は続く

「支援する・される」という従来の一方的な関係性を打ち破り、東北の未来を共につくるための強固な連帯が生み出された2日間。閉幕にあたり、ATERUI実行委員会を牽引するスパークル株式会社の福留秀基代表は、参加者たちへ向けて次のような力強いメッセージを残した。

「今年のテーマは『共同戦線』でした。これは、単なる連携や交流を意味する言葉ではありません。東北が抱える課題に対して、企業、行政、金融機関、大学、起業家、学生が、同じ当事者として前線に立つという意思表明です。ATERUIは仲間を増やすためだけではなく、覚悟を持って、ともに背負う相手を見つけるための場です。ここで結ばれた共同戦線が、東北各地で具体的な挑戦となり、次の景色をつくっていく。その起点を、今年も皆さまと生み出せたことに、心から感謝しています」

熱狂は仙台だけにとどまらない。ATERUIは今後、「東北6県を持ち回るキャラバン形式」へと進化を遂げる。その記念すべき第一歩として、次回「ATERUI 2027」は開催地を「山形市」へと移すことが電撃的に発表されたのだ。さらに、地方創生を強力に推進する株式会社チェンジホールディングスが冠協賛につくことも決定しており、このムーブメントが全国的なうねりへと成長していることを証明している。

「次回は、山形市で開催します。この1年の東北での成果を持ち寄る会にしましょう」

福留代表の言葉は、1,157名の参加者に対する「1年後の再会と成果の約束」である。傍観者意識は、もうこの地には似合わない。「どうせ変わらない」という冷笑を情熱で打ち砕き、東北からローカルの未来を切り拓く戦いは、まだ始まったばかりだ。

現在、ATERUI 2027に向けて、企画段階から共にイベントを創り上げていただける仲間(運営メンバー)の募集も開始されている。この熱狂の記事を読んで、少しでも心が動いたなら。次はあなたが、当事者として未来の景色を創る番だ。山形の地で、新たな共同戦線の幕が上がるその瞬間を、決して見逃さないでほしい。

※「挑戦者」:STUDENTSおよびATOTSUGI/ENTREPRENEURチケット購入者

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猪股 豪

猪股 豪

宮城県加美町生まれ・在住。地方創生に興味を持ち政治の世界へ。国会議員秘書を経てまちづくりに取り組む。

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