東北から“真の挑戦者”を見つける。「共同戦線」で世界に挑む仲間を増やす【宮城県仙台市】

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宮城県大崎市古川で育ち、公認会計士として東京で経験を積み、株式会社Macbee Planetの上場準備責任者として約1年半で東証マザーズ上場を実現。2021年には代表取締役社長に就任し、2026年7月まで約5年間、同社の経営を率いた千葉知裕さん。

東京でキャリアを重ねた後も、千葉さんは「地元に貢献したい」という長年の想いから、「宮城に戻る糸口」を探し続けてきた。現在は東北大学の客員教授など、宮城・東北との関わりも広げている。

そんな千葉さんが、2026年9月3日、4日に仙台市で開催されるビジネスカンファレンス「ATERUI 2026」で、ピッチ審査員を務める。東北で新しい事業に挑む起業家や企業の後継者、地域の未来を担う人たちが集う場で、今年のテーマは「共同戦線」だ。 

東北から本当に世界へ挑める人を、どう見極めるのか。そして、千葉さんが東北に増やしたい「同じ高さを目指す仲間」とはどんな人たちなのか。審査員としての視点と、その根底にある故郷への思いを聞いた。

「自分が投資家だったら、投資したいか」

ATERUIで千葉さんが担うのは、東北で新しい事業に挑む起業家や、企業の後継者たちによるピッチの審査だ。審査で何を見るのか。その答えは明快だった。 

「結構シンプルで、自分が投資家になって投資したいかどうか、という観点です。事業の可能性ですよね。対象にしている市場が合っているのか、独自性がちゃんとあるのか。結局、自分がお金を出してでもその事業を伸ばしたいと思うかどうかだと思っています」

東北の挑戦者だから応援する、ではなく市場も見る。独自性も見る。本当に伸びる事業なのかも見る。むしろ東北への思いが強いからこそ、「本当に外で戦えるのか」という目線は甘くない。その目線がどこから生まれたのかをたどると、千葉さん自身の学生時代まで遡る。

思い描いた道とは違うところから始まった

千葉さんは宮城県大崎市古川で育った。中学生のころは仙台の高校への進学も考えていたが、地元・大崎市古川の高校へ進学。そこで出会った教師の助言で、会計士の存在を知り、「公認会計士を目指そう」という決意とともに、東京の大学へと歩みを進めることとなる。その選択が、現在につながる大きな分岐点になった。

元々千葉さんは地元宮城の大学を出て、宮城でビジネスをすることを考えていたが、高校の恩師の導きを経て公認会計士という道に進み、その結果東京で大きな経験を積んでいくことになる。

「会社名や肩書はいらなかった」上場経験の先にあった東北

大学卒業後は監査法人へ入り、公認会計士として約8年半働いた。30歳を過ぎてベンチャーの世界へ出ようとしたとき、周囲からはすでに名前の知られた企業をいくつも紹介されたという。

しかし、千葉さんが欲しかったものは少し違った。

「有名企業に入りたいわけではなかったんです。僕が欲しかったのは、経営陣の一角に入って、CFOとして上場に携わる経験でした。その先のステップとして東北に戻ることが重要だったので、会社名とか肩書はそんなにいらなかった。だから過去のキャリアの延長線上ではなく、違う角度から探そうと思って、転職エージェント経由でMacbee Planetに入りました」

入社した当時、同社のコーポレート部門は立て直しが必要な状態だった。しかも上場まで残された時間は約1年半。

「会社としてもコーポレート部門としてもかなり厳しい状態で入って、それを立て直しながら上場準備を進めました。上場まで1年半しかなかったので、本当に死ぬぐらい働いたなと明確に言えるくらい働きました。当時、『僕がこの会社を1年半で上場させられなければ、僕の存在価値ってあんまりないですよね。だったら辞めます』という話もしていました。それくらいの覚悟で臨んでいました」

必要だったのは、仕事を処理する能力だけではなかった。

「仕事の水準を高めながら、人からの信頼もつくらなきゃいけない。IQとEQみたいな、その両方を共存させながら仕事をするのって、めちゃくちゃ難易度が高いんです。そこはかなり難儀した記憶があります」

約1年半後、Macbee Planetは上場を果たした。東京で大きな経験を手にした。それでも千葉さんの中には、最初から「その先」があったのだという。

東京で得たものを持って、東北の「伏線回収」へ

千葉さんはその後も、宮城や東北と関わる糸口を探し続けてきた。背景にあるのが、自分自身が地方で育つ中で感じてきた「機会の差」だ。

「東京と地方の格差もそうなんですけど、地方の中にも格差ってあると思うんです。仙台と古川でも違う。僕自身、そういう学ぶ機会の差を感じてきました。アントレプレナーシップ推進大使をやったときも、仙台より、普段そういう人に会える機会がない場所に行きたいと思っていました。気仙沼のかなり奥にある小学校で、1年生から6年生まで全部合わせても10人、15人くらいのところに行ったんです。上場会社の社長なんて普通は訪れないような場所ですよね。そういうところの子どもたちに、少しでも『こういう世界もあるんだ』と思ってもらえたらいいなと」

東京で得た経験を地方へ持ち帰る。それは千葉さんにとって、単なる恩返しという言葉だけでは収まらない。

「僕はずっと、東北、宮城に戻る糸口を探してるんです。多分、人から見れば東京に出てからいろいろ成功しているように見えると思う。でも自分の中では、やはり地元東北に貢献していきたい、という感覚が根本にあります。さらに究極は、自分が生まれ育った大崎、宮城を、自分たちが誇れるものにできたらいいじゃんって思うんです。東京との格差とか、ビジネスのしづらさとか、賃金とか、課題はいろいろあります。でも細かい課題はいったん置いて、自分たちが誇れる街にできればいいと思っています」

千葉さんの東北への思いは「地元が好きだから」というところだけには収まらない。自分が感じてきたものを、どうすれば次の世代には違う形で渡せるのか。その問いをずっと考えているように感じた。

東北に足りないのは、同じ高さを目指す人

では、東北から全国や世界へ挑む企業を増やすために、何が必要なのか。

千葉さんは、学校を例に話した。

「周りが東大を目指していたら、東大を目指すことが当たり前になるじゃないですか。東北大を目指すのが当たり前の環境なら、それが普通になる。起業も結構同じだと思っています。東北で地場でやっている人たちを見ていると、一匹狼みたいになっているように感じるんです。『この高校から初めて東大生が出ました』『10年ぶりに出ました』みたいな捉え方になっている。でも起業すること自体は世の中ではまあまあよくある話なので、大事なのはそこからどう戦うかですよね。ある人は人とのつながりから吸収し続けるし、ある人はとにかくチャレンジの数を増やしている。そう考えると、東北に足りないのは、同じような視座を持って、一緒に戦える仲間なのかなと思っています」

一人の突出した人を生み出して終わるのではない。高いところを目指す人が周囲にもいて、刺激を受けながら次へ進む。その環境自体を増やす。

この話を聞くと、千葉さんがATERUIの「共同戦線」というテーマに重ねているものも見えてくる。

東北から“真の挑戦者”を見つける。「共同戦線」で世界に挑む仲間を増やす

千葉さんは、ATERUIを運営する人たちについて「東北という土地を耕している」と表現した。

「東北って、スタートアップ不毛の地とか、IPO不毛の地ってずっと言われてきたと思うんです。僕自身も東北に戻ろうと思ったときに、挑戦する場があまりなかった。そういう中で、まず土地をしっかり耕してくれた。そのおかげで芽が出てきていると思うんです。最初に耕した人が最終的にうまくいくかどうかは分からない。でも、耕した人への称賛を忘れずに、その人たちを次のフェーズに持っていかないと東北は変わらないと思っています」

だから、今回の審査員も引き受けた。そして「共同戦線」の相手として出会いたい人について聞くと、再び千葉さんらしい答えが返ってきた。

「東北で戦うと考えると、『東京と比べたら東北は劣っている』っていう話は往々にしてあると思うんです。でも、逆手に取ることが結構重要だと思っていて。地方は地方の戦い方がある。その戦い方で、日本で、グローバルで戦える企業をどれだけつくれるか。それを本気で考えている人たちと、共同戦線の相手として出会いたいですね」

東北を特別扱いしてほしいわけではない。東北だからこそできる戦い方を考え、本気で外へ出ようとする人を見たい。それが審査員としての厳しい目と、故郷を思う気持ちの両方につながっている。

「次々思いつく」のではなく、考え続けている

次から次へと新しいアイデアが出てくる千葉さん。その発想や行動力は、どこから来るのか。

「日々ひたすら考えてるんですよ。僕、朝早く起きるんですけど、朝起きてから2時間くらいずっと考え続けています。一朝一夕じゃ無理なんですよね。Macbee Planetの社長を5年ぐらいやって、いろんな起業家とか大企業の経営者に会ってきましたけど、皆さんものすごく努力している。その人たちと戦うんだったら、それ以上に努力しないといけない。数を打たないといけないし、躊躇(ちゅうちょ)していたら遅れを取ってしまう。ひたすらやり続けないと勝てないというのが、この5年間で一番学んだことかもしれません」

特別な発想法があるわけではない。考える。試す。人から学ぶ。そしてまた考える。

「習慣はめちゃくちゃ大事です。間違いなく」

さらっと語っていたが、むしろそこに千葉さんという人が一番表れているように思った。東京で経験を積むことも、その経験を東北でどう生かすか考えることも、東北から世界で戦える会社をどう増やすか考えることも、千葉さんにとっては一本につながっている。

ATERUIで得てほしい「気づき」と「仲間」

ATERUIの開催は2日間。千葉さんは、2日間そのものより、終わった後に何が残るのかを大切にしている。

「このイベントって2日間という短期間で終わってしまうじゃないですか。だから、それぞれの人にここでの気づきを持って帰ってほしいし、『共同戦線』というテーマがあるので、一緒にやれる仲間をしっかり見つけてもらいたい。

それが明日からの自分たちのビジネスにつながるかもしれないし、学生だったら自分のキャリアを考えるきっかけになるかもしれない。そうやって『気づき』と『仲間』をつくってもらえれば、このATERUIというイベントをやる意味があると思っています」

東北で思い通りにならなかった経験を持ち、東京で経験を積み、それでもずっと故郷へ戻る糸口を探してきた千葉さん。

今度は審査員として、東北から次の挑戦へ向かう人を見る。そして、一人だけが抜け出す東北ではなく、高いところを目指す人が隣にもいる東北へ。

千葉さんが続けてきた「伏線回収」は、その先へつながっている

情報

ATERUI 2026 開催概要

日時:2026年9月3日(木)9:30〜19:30、9月4日(金)10:00〜20:00
会場:
9月3日 SENDAI GIGS(宮城県仙台市若林区荒井東1-4-1)
9月4日 Communication Design Laboratory MEDIUM(宮城県仙台市若林区六丁の目西町6-5)
主催:ATERUI 2026 実行委員会
一般チケット:9,980円
学生:無料
アトツギ・起業家:無料(要件審査あり)
公式サイト・チケット申し込み:https://aterui.world/

株式会社Macbee Planet 会社概要

取材対象者:取締役 千葉 知裕さん
設立年月:2015年8月
事業内容:LTVマーケティング事業
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-11-11 IVYイーストビル(総合受付:5階)
URL:https://macbee-planet.com/

天野崇子

天野崇子

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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