福島県中通り地方の南部に位置する須賀川(すかがわ)市は、「ウルトラマン」をはじめとする数々の特撮ヒーローの生みの親として知られる監督、円谷英二(つぶらや・えいじ)氏(1901−1970)の生まれ育った地です。街を歩けば、至るところでおなじみのキャラクターに出会うことができます。今回訪ねるのは、そのヒーローの「目線」で街を眺められるというスポットです。
▲ピグモン。口の中には硬貨が…って、カネゴンと間違われている?
目次
300万光年を超えて日常に溶け込むヒーローたち
駅や交差点はもちろん、図書館やスクールバス、お薬手帳まで。須賀川では日常のあらゆる場面に特撮ヒーローたちが溶け込んでいます。市は2013年に、地球から遥か300万光年の彼方に存在するというウルトラマンの故郷、「M78星雲・光の国」と姉妹都市提携を結びました。中心商店街の「松明(たいまつ)通り」では、ウルトラマン一族や宇宙怪獣たちと頻繁に出会うことができ、両都市(?)の活発な交流をうかがわせます。
▲商店街でくつろぐカネゴン。
実物は巨大なはずなので…
須賀川の街にすっかり溶け込んでいる彼らですが、これは恐らく世を忍ぶ仮の姿でしょう。なぜなら、本来の彼らはもっと巨大なのです。都市を破壊しながら暴れまわる大柄の怪獣たちに挑むヒーローたちは、かなりの高身長。初代ウルトラマンの場合は約40メートルだそうです。彼らが実物大のまま日常に現れたら足元の人間はたまったものではありません。きっと、人間のサイズ感に合わせてくれているのだと思います。
▲おしゃれな文化施設に馴染んでいるレッドキング
ウルトラの父目線で街を見渡す!
では、実物大の彼らの視点で、人間の都市はどう見えているのか、気になりませんか?
その答えは何と、須賀川市役所に足を運べば分かります。
市庁舎の最上階には「ウルトラフロア」と名付けられた展望台があり、高さは「ウルトラの父」の身長と同じ、45メートルなのです。
正面に「ウルトラの父」が鎮座しています。
展望台から眺める須賀川市中心部です。取材当日は雪だったので見晴らしは利きませんでしたが、これが「ウルトラの父目線」だと思って眺めると感慨深いものがあります。晴れていれば、かなり遠くまで見渡せそうです。
▲写真中央左寄りを走る電車も、ウルトラの父目線だとかなり小さく見えます。
円谷少年が見たかったかもしれない、故郷の景色。
須賀川は古くから奥州街道でも随一の宿場町として栄え、現在も東西南北を結ぶ幹線道路が交差する交通の要衝です。ウルトラの父目線で見渡すと、四方から人や物資が集まり、大いに賑わった往時を想像することができます。
円谷氏は少年時代、「自分で作った飛行機で空を飛びたい」と憧れを抱き、飛行機の操縦を学ぶために上京しました。その志は道半ばで絶たれますが、その後の出会いから特撮技術のプロフェッショナルとしての道を極めていくことになります。
巨大ヒーローの視点で見渡す須賀川の街並みは、円谷少年が操縦士として見たかった、愛する故郷の景色なのかもしれません。
今回は隣の郡山市在住で、須賀川市の企業で働かれているハツレポーター、昆愛さんのご案内で街を歩きました。ありがとうございました!