目次
■リベンジ
枝豆に取り付いたカメムシを手で潰しまわったら、カメムシの逆襲にあい、指先からカメムシ臭を発するカメムシ人間となった私なのですが、無事3日ほどでカメムシの呪いは解け、アラフィフのただの初老男性に戻りました。
しかし、私がこのまま引き下がると思ったら大間違いです。
カメムシに敗北したまま、この後の30年ほどの人生を送る訳にはいかないのです。
仮に人生80年として、そのかけがえのない29,200日のうち3日間もカメムシ人間として生きたのです。
こんな屈辱があるでしょうか。
せっかく愛媛県今治市の大島まで移住してきたというのに、この先
「あそこにはカメムシおじさんが住んでるから、近寄っちゃダメよ。
あぁクサいクサい!」
と言われ続けるのです。
私は己の人生と尊厳を賭けて、カメムシへのリベンジを果たさないといけないのです。
■ゴム手袋vsカメムシ
ということで、カメムシとのリマッチです。
とはいえ、素手や軍手ではカメムシ汁が指先に浸透し、おぞましい悪臭を放つこととなります。
ということで、手のひら部分がゴムになったアイテムを購入。
▼これです。
いくらカメムシの毒汁が強力でも、この分厚めのゴム手袋ならば、弾き返すことができるでしょう。
「待ってろよカメムシ!」
私は心の中で雄叫びを上げ、小走りでカメムシどもが蠢(うごめ)く枝豆達のところへ向かいます。
前回、私の指をカメムシ汁まみれにして勝利し、すっかり気を良くしたカメムシどもは、調子にのって枝豆にバカみたいに密集して張り付いています。
「バカが!」
とまた心の中で絶叫し、分厚いゴムに守られた指先でカメムシを潰してやると、奴は土の上に落ちていきました。
「イケる!」
その後はもう私の圧勝でした。
心の中で快哉(かいさい)を叫び、勝利の涙が込み上げてきます。
もちろんすべて心の中で叫んでいるのは、畑でカメムシと会話をしていることがご近所の方々にバレないためです。
気をつけないと
「あの人はカメムシ人間になってから、カメムシと楽し気に会話ができるように
なったのよ」
と噂になってしまいます。
それは良くない。
スパイダーマンだって、蜘蛛とは会話はできない筈です。
それにしても。
よもや大都会東京で暮らしていた私が、地方に移住して、プチプチと小気味良いポップな音を弾かせながらカメムシを潰すようになるとは誰が予想できたでしょう。
未来は何が起こるか分かりませんね。
貴女も明日、カメムシを潰しているかもしれませんよ。
ところで、手でカメムシを潰していると聞いて、私のことを凶悪な野生中年だと思っている方がいらっしゃるかもしれません。
我が枝豆ちゃんに数十匹もたかっていたカメムシは、「マルカメムシ」といいカメムシの中ではかなり小型のやつです。
大きさはテントウムシくらいでしょうか。
▼小さいとはいえ、気持ち悪いので遠めから撮影。
このサイズだったのでこんな私でもカメムシと戦えたのです。
ちなみにカメムシは、何十種類もいるそうですよ。
ということで、私は無事にカメムシどもに勝利しました。
ムンムンと辺りにカメムシ臭が漂う中、心の中で雄叫び上げ、私を無言で見守ってくれていた他の野菜達にゴム手袋を外しながら笑顔で応え、ジョウロで水をあげにまわります。
■後日談
カメムシとのデスマッチを制して、後は枝豆が育つのを待つだけとなったのですが、困ったことに肝心の枝豆がぜんぜん膨らんできません。
何故?何故なのか?
何のために。
いったい私は何のためにこの暑い夏に汗だくになって、カメムシと戦ってきたのか。
枝豆が膨らまない原因は、やはりカメムシどものせいか。
それとも水やりの量が少なかったのか。
野菜初心者の私には皆目見当もつきません。
が!
ということは、
なんと、ゴム手袋を武器にいい気になっていた私は裸の王様であったのです。
リベンジに成功し勝利したと思い、ノリノリで記事まで書いたというのに、枝豆はペッタンコのまま膨らまず、結局食すことは出来なかったのです。
なんということでしょうか。
結局、勝者はカメムシ様であったのです。
私は、51年ものうのうと生きてきて、カメムシにさえ勝てない男だったのです。
人生はそんなに甘くはないようです。
ちなみに今年はカメムシが各地で大量発生しているそうですよ。
皆さまも充分お気を付けください・・・。
完。