「大曲昭和五十五年会」には梵天行事の他にも役割がある。地域の神社が執り行う「大曲の綱引き」の実行役も、その年の学年会の役割である。
今回は梵天行事同様に中止も懸念されたが、形を変えて執り行われることになった。
本来「大曲の綱引き」には、太い綱を担いで街中を行脚する「綱御幸(つなみゆき)」、道中で財を振りまくとされる「財振り棒攻防戦」、神様に歌を納める「荷方節(にかたぶし)」、米の作況を占う「綱引き勝負」が行われる。
しかし、今回はコロナ禍の影響で「綱引き勝負」は中止、「財振り棒攻防戦」も攻防戦は財振りのみ行われた。
大きな制限がある中、「大曲昭和五十五年会」は胸を張って街中を行脚し、声高らかに荷方節を歌い上げた。瞬時に緊張が解けて安心感と達成感に満ちたのだろう、歌い上げたあと友に抱擁され、泣き崩れるものもいた。どんなに泣き崩れても抱擁は止まない。
肩や背中をたたき、「おめでとう」と声をかける。過去に同じく「大曲の綱引き」行事に参加した先輩の年代会の方からも「おめでとう」、「やったな」と声がかけられていた。彼らの涙は雨でわからなくなることはなかった。
(最終章に続く)