
福島県郡山市が主催する「ホールコンサート」が8月8日、S-PAL郡山で開催された。今回出演したのは、郡山市出身のピアニスト青木瞭弥(あおき りょうや)さんと、箏(こと)・三絃教室を運営する箏・三絃 佳寿美会(かすみかい)。青木さんはドビュッシーの「月の光」や久石譲の「Summer」などを情感豊かに、また、箏・三絃佳寿美会は会主・渡部佳奈子さんと門下生の小学生らが「椰子の実」や「さくら」など演奏し、足を止めた多くのファンや買い物客が熱心に耳を傾けた。
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郡山と音楽の歩み
郡山は戦後、音楽都市への機運が高まり、1954年のNHK交響楽団公演を契機に、1958年には当時東北一の市民会館が誕生。10万人コーラス運動や「ワンステップフェスティバル」など、音楽は市民文化として根付いた。2008年には「音楽都市」を宣言し、多様な催しを通じて地域の絆を育んできた。

市民の身近な場所で音楽を
ホールコンサートは、2007年4月に始まり、今年で19年目を迎えた。これまでに市役所本庁舎や行政センター、JR郡山駅構内、商業施設、地域のふれあいセンターなど、市内各所で147回もの公演が無料で開催されている。

今回のホールコンサートは、郡山市の夏の風物詩のひとつ「郡山うねめまつり」に合わせ、音楽でにぎわいを創出したいとの想いをきっかけに実現した。「できるだけ身近な場所で、気軽に音楽に触れられる機会をつくりたい」と語るのは、郡山市役所文化スポーツ観光部文化振興課でこの企画を担当する齋藤さん。行政ならではのネットワークと企画力を生かし、民間コンサートとは異なる形で音楽をまち全体に届けている。
市民の声を形にする柔軟なプログラム
出演交渉はピアノや合唱など幅広いジャンルの演奏者に直接オファーをかけるところから始まる。演奏曲は基本的に出演者が決めるが、これまでの来場者の生の声から寄せられたリクエストを反映することも。 「ジャズを聴きたいという声が多かったので、今日はピアノでジャズの曲も入れてもらいました」と齋藤さん。新しいジャンルを積極的に取り入れる姿勢が、このコンサートの魅力だ。

“笑顔”を原動力に
会場や機材の手配など準備には労力がかかるが、「またやってほしい」という観客の笑顔や「出演出来て良かった」という出演者の声がスタッフの原動力となるという。「大変なことも多いですが、お客さんや出演者の方の笑顔や感想を見聞きすると、終わった後はやっぱりやって良かったと感じます」と齋藤さんは語る。
19年の歩みを重ね、音楽をまちの隅々へと届けてきたホールコンサート。次はどの街角で、どのホールで、市民と音楽が出会うのだろうか。郡山の音楽の物語は、これからも続いていく。
取材協力:郡山市役所