「国内最北の織物産地」ヒト・モノ・歴史を紡いできた織物文化を地域に【山形県米沢市】
明治以後120年以上に渡って地域の伝統工芸「米沢織」を支えてきた繊維問屋が山形県米沢市にある。その問屋が母体となったセレクトショップ「JUYOUKAN」(樹養館)がオープンしたと聞き、さっそく足を運んでみた。
山形県の最南端に位置する米沢市は、上杉氏(米沢藩)の城下町としても知られている街。ここに息づく「米沢織(よねざわおり)」は九代藩主の上杉鷹山(ようざん)が織物の先進地だった小千谷(新潟)から技術者を招いたことに始まり、その伝統は現在も受け継がれている。
米沢は国内最北の織物の産地で、米沢織は特定の文様パターンを持たないのがデザインの特徴だ。麻から始まった米沢織は、養蚕産業の進展に伴って絹がメインとなったものの、近代では明治~昭和にかけて開発された化学繊維とも融合し発展してきた。
「JUYOUKAN」(樹養館)という名称は藩主鷹山公を支えた重臣が提言した著書に由来し、ここはかつて繊維問屋の出荷場として、多くの人やモノが行きかう場だった。ここの母体である繊維問屋は地元メーカーさんの営業役を担い、120年以上もの長きに渡って日本各地に赴き、米沢織や置賜紬(おいたまつむぎ)などを全国に発信し続けることで、全国各地での新しい物作りの機会を模索してきたという。その日々の生業(なりわい)で培った経験と人脈を活かし、日本の伝統や技に触れられる場所を作りたいという想いが形になったのがこの「JUYOUKAN」(樹養館)だ。
ここをオープンにするにあたっては、北海道から沖縄まで、普段なかなか手にとる機会がない商品を紹介することで地元に還元したいという気持ちを込めたという。伝統的な米沢織だけでなく、ヘアアクセサリーやイヤリングをはじめ、既成概念にとらわれない県内外からの若いアーティストの作品も販売しているのも特徴的だ。年齢も性別も関係なく気軽に日本の伝統や職人技に触れられる場所を作るために、アートギャラリーを併設するなど作品の魅力を発信するための工夫もされている。
築120年余の古民家に併設された蔵にあるセレクトショップは伝統と現代が融合したオリジナルの空間を提供し、米沢織の凛とした美しさと若いアーティストの洗練された感性が静かに共存している。
歴史の街、そして、北限の織物の産地でもある米沢で特別なアイテムを探すのも贅沢な時間の使い方かもしれない。
情報
【「JUYOUKAN」(樹養館)】
山形県米沢市中央1丁目7−32
Webサイト:https://juyoukan.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/juyoukan/