〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
「檑亭(らいてい)」は神奈川県鎌倉市の北西に広がる鎌倉山地区で、54年の歴史を誇るそばと会席料理の老舗です。約5万平米という敷地の中は古き良き日本の里山といった趣があり、心落ち着く空間と季節を感じることができる料理が自慢です。
空間と料理へのこだわり、今後の展望を代表取締役の岩村もと子(いわむら・もとこ)さんに伺いました。
目次
山門をくぐれば江戸時代の豪農の家や廻遊式庭園、そして絶景!
昔は竹藪しかなかった鎌倉山を、昭和初期に菅原通済(すがわら・つうさい)さんという方が別荘地として開発。その時に通済さんの父で、鉄道王として知られる菅原恒覧(すがわら・つねみ)さんのために建てた別荘が現在の檑亭の本館です。江戸時代の豪農の家を移転改築したその建物は登録有形文化財になっています。
「この建物は完全和風建築ですが、中には洋風な空間もあり、日本遺産の構成文化財になっています。会席料理をお召し上がりいただける個室は、江戸時代当時のまま使っていますので、釘隠しがスズメだったり、そういう意匠(工夫をこらした装飾やデザイン)や空間も楽しんでいただけると思います」と語る岩村さん。
筆者も見学させていただきましたが、岩倉具視(いわくら・ともみ)邸から譲られたステンドグラスや、シャンデリア、また月とすっぽんを模した意匠など、とても興味深く、またそれ以上に江戸時代のままの雰囲気を味わえるこの空間が何より素敵だと思いました。
また、庭は起伏のある廻遊式庭園になっていて、竹林や梅林の間に各地から蒐集(しゅうしゅう)した石仏や石塔、法隆寺(ほうりゅうじ)の夢殿(ゆめどの)を模した八角堂(はっかくどう)などがあり、季節の花とともに楽しめます。
岩村さんによると、「菅原通済さんは古代瓦のコレクターでもあり、庭の階段や竹林の門、八角堂の足元にも古代瓦がはめ込まれているので、お散歩がてら見ていただけると楽しいと思います」とのこと。
本館からは箱根富士連山と相模湾を望むことができます。昔の浮世絵のイメージそのままの、雄大で素晴らしい景色を眺めながら、美味しいものを頂ける。ここ檑亭は、五感を使って楽しめる、テーマパークのような魅力にあふれています。
自然とともにある「檑亭」ならではの四季の味わい
「今の時期だったらフキノトウが取れ始めているので、庭で取れたものをそのままお出ししています」と語る岩村さん。フキノトウは3000個も採れるそうです。
タケノコは、甘く美味しくなるように蕎麦湯で茹で、梅の実は甘露煮や梅酒、梅ジュースに。また山菜の時期は、採れたての山菜を天ぷらに。日本料理を提供しているのは、そういった日本の四季の美味しいものをふんだんに味わってほしいからだそうです。そのために、山をできるだけ自然に近い形で残せるように日々努力をされています。
古きよきものを残しながら、新しいことに挑戦し続ける
岩村さんは2014年からこの仕事を始めて、先代社長のあとを継がれました。
社長になる前から毎年一つは新規事業を立ち上げるという岩村さん。一昨年はコロナ禍ということもあり、お弁当の利用が増えたので、お店で抱えている在庫のお酒も一緒に売れたら、と酒類販売業免許を取って、お酒の販売を始めました。昨年は新たに二ホンミツバチの養蜂を始め、秋にはチーズフォンデュを蜂蜜で食べるプランを企画したそうです。
今年は、敷地内にある、裏千家数寄屋師の三代目木村清兵衛(きむらせいべい)の作った茶室や、やはり数寄屋師金子寿慶(かねこじゅけい)の作った寄付(よりつき。客が茶室に入る前に待機する場所)を整備して活用したいとのこと。
「来年は蜂蜜のお酒を作ってみたい。でもそうすると今度は醸造の免許も必要ですね」と将来に向けて夢は広がります。
鎌倉山の自然を愛し、歴史ある家業を大事にしながら、新しいことに次々とチャレンジされる岩村さんの熱い語りに、筆者はとても感動しました。古都鎌倉の、楽しく、癒される美味しいお食事処。みなさんもぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。