転勤、就職、進学の時期を迎えた3月末から4月頭にかけて、長崎県壱岐(いき)市の印通寺港(いんどうじこう)には連日、島を離れる人との別れを惜しむ人たちが集まります。船の上の見送られる人と港で見送る人をつなぐ紙テープが揺れる様子は春の風物詩となっています。出航までのしばしの時間、「いつでも帰って来いよー」「また会おうね」の言葉が飛び交い、人々の思いがあふれだし、感動のお別れの時間となります。
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駐車場が満車になるほどのにぎわい
長崎県の離島・壱岐島。3月末は転勤、就職、進学のシーズンのため、島民にとって「お見送り」は一大イベントで、春の風物詩です。駐車場が満車になるほどたくさんの人が港に集まります。
中でも印通寺港発、佐賀県唐津東港行きのカーフェリー「エメラルドからつ」、「ダイアモンドいき」の見送りがとても多いです。というのも、壱岐島は長崎県なのですが、長崎へは高速船もフェリーも通っていません。そのため、長崎方面への引っ越しを伴う移動の場合、フェリーに車を積んで、唐津東港まで移動するのが一般的となっています。
ヒラヒラと舞う紙テープがフェリーと岸壁にいる人たちをつなぐ
船のお別れと言えば、ヒラヒラと舞う紙テープ。いつまでもつながっているという気持ちを紙テープで表し、涙を誘います。実は、その紙テープの演出には、準備が必要ということをご存じでしょうか。
1、30~50本の紙テープを一つの棒に通します。
2、通したそれぞれの紙テープの端を一つにまとめて結びます。
3、それを船から垂らされたひもにくくり付け、船上へ届け、見送られる人が持ちます。
4、棒に通していた紙テープを岸壁にいる見送る人に配ります。
船に向かって紙テープを投げるというイメージを持つ方も多いですが、あたると危険、しかも失敗したら海に落ちてしまうので、投げることはしません。
またお見送りの後は、紙テープがごみとならないようにビニール袋に入れて持ち帰ります。
先生の見送りでは校歌を熱唱
特に、県内の他地域から3年間の期間限定で来ていた学校の先生方やその家族のお見送りは盛大です。先生が赴任していた学校関係者や生徒たち、先生の家族の子どもが通う学校関係者と友達など1家族に100人程度集まることも少なくありません。
学校から持ってきたスピーカーやマイクを使って、校歌、生徒からの感謝の言葉、同僚の先生からエールが飛び交い、感動的なお別れとなります。
「またすぐに帰ってくるよ」という言葉と、「もう二度と会えないかもしれない」という思いが巡り、人々は涙を流しながら再会を誓います。この様子を目の当たりにすると、何も関係のない人でも泣けてくる、心に響く風景です。
写真はすべて筆者撮影