卒業しても、学生による地域活動が続くように。福島大学生が挑む「まちづくりの継承」【福島県福島市】 

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大学生が地域を盛り上げるために、イベントを開催する。

こうした取り組みは、全国各地で行われているが、学生はいつか大学を卒業する。

そのとき、学生による地域活動はどうなってしまうのだろうか。

福島大学のまちおこしサークル「金谷川(かなやがわ)プロジェクト」は、学生の卒業によって活動が途絶えないよう、次の世代への継承に取り組んでいる。

今回は、第3代代表を務める佐藤朝日(さとう・あさひ)さん(福島大学経済経営学類2年)に、地域づくりへの思いと、活動を引き継いでいく難しさについて話を聞いた。

■学生が卒業しても、地域活動を終わらせないために

活動の様子(写真は本人提供)

金谷川は、福島大学のキャンパスのある地名だ。この金谷川を盛り上げ、地域と大学の架け橋となるために活動しているのが「金谷川プロジェクト」である。団体は「心のワクワクを原動力に金谷川からまちづくりを広げる」をミッションに掲げている。

実はこのサークル以前にも、金谷川地域を盛り上げようと活動していた学生はいたという。しかし、その学生が卒業してしまうと、活動が途絶えてしまうという課題があった。そこで団体創設者である初代代表が、「個人の取り組みで終わらせず、活動を継承させる」ことを目的として団体化した。

「団体のビジョンに『学生が地域を創る主役になる』というものを掲げています。このビジョンに基づき、メンバーがそれぞれ企画立案から実行まで取り組んでいます」(佐藤さん)

■小さな一歩でも、地域を変えるきっかけになる

ランタンイベントの様子(写真は本人提供)

金谷川プロジェクトは、この3年弱のあいだに様々な活動を行ってきた。たとえば金谷川には徒歩圏内にスーパーがない。そのため、大学近くで生鮮食品や惣菜、調味料などが買えるよう、「移動販売」を実施した。また「かなプロ新聞」と題して、金谷川地域と大学の情報をまとめた月刊新聞も発行している。

2026年10月4日には、前年に引き続きランタンイベント「空灯(そらあかり)」を開催した。佐藤さんが代表として関わったイベントだ。会場内には射的やホットドッグ、おにぎり、大判焼きなどの出店が並び、ダンスサークルによるパフォーマンスも行われた。最後のランタン打ち上げでは、昨年より2倍の60個以上(公式発表)ものランタンが夜空を舞い、幻想的な光景が楽しめた。

「地域の方々から、『大学って入りにくい』という声を聞くことがありました。イベントを開催することで、少しでも大学と地域の距離が縮まったのではないかなと思います」

イベントの開催で劇的に地域が活性化するわけではないが、開催した意義はあったという。

「その一歩は小さかったかもしれません。けれど、何もやらないよりは良かったのかなと思っています。あとはイベントの継続が大切だと思います」

■36名の学生は、みな同じ熱量というわけではない

祭りに参加した際の様子(写真は本人提供)

もちろん、サークル運営には難しい面もある。

サークルに加入する際、当たり前だがメンバーの熱量はそれぞれだ。「地域課題に取り組みたい」という人もいれば「友達を探したい」という人もいるだろう。その点に関して、佐藤さんも悩ましい部分があると語る。

「人それぞれ事情があると思いますが、LINEなどで連絡をしても、連絡が遅れる人もたまにいます。また、企画への主体性でも差が生まれることもあります。私が代表になり、はじめてチーム運営の難しさを実感しています」

それでもサークルの活動は続く。だからこそ、メンバー一人ひとりへの声かけを大切にしていると話す。

「自分の当たり前の基準が、ほかのメンバーの当たり前ではないと思うんです」

地域を盛り上げたいという思いだけでは、36人の学生をまとめることはできない。佐藤さんの言葉からは、地域活動に取り組む一人の学生が、組織を運営する責任とも向き合っている様子がうかがえた。

■イベント開催時には盛り上がるけれど…

地域の方々との交流の様子(写真は本人提供)

地域を盛り上げるためにイベントを開催する。しかし、イベントが終わった後も、そのにぎわいは続くのだろうか。

佐藤さんは、ある日曜日に福島駅東口の駅前通りを歩き、あまりの人の少なさに驚いたという。

「日曜なのに、数えるほどしか人が歩いていなかったんです。イベントがあれば、確かに人出が増えるのですが、何もない日は本当に閑散としていますね」

イベントが開催されれば、多くの人が集まる。しかし、それが日常的なにぎわいにつながるとは限らない。イベントで多くの人を集めることと、日常的なにぎわいを生み出すことは、必ずしも同じではない。

金谷川プロジェクトの活動を考えるうえでも、一度きりのイベントで終わらせず、学生と地域住民のつながりをどう育んでいくかが重要になるだろう。

その対策として取り組んだことの一つが、「福島大学生と学食を囲んで語る会」だ。

「平日のお昼時に、地域住民の皆さんや学生、市役所職員の方々などを集め、金谷川の課題に対する解決策についてアイデア出しを行いました。34名の方が集まり、様々な意見交換ができました」

金谷川地区は、令和5(2023)年に「過疎地域」に指定されたという。地域が抱える課題は、一度のイベントで解決できるものではない。

だからこそ、学生と地域住民が顔を合わせ、ともに地域の将来を考える機会を重ねていくことに意味があるのではないだろうか。

■佐藤さんが後輩に引き継ぎたいものとは

金谷川プロジェクトメンバー集合写真(写真は本人提供)

代表の佐藤さんも、いずれは大学を卒業する。熱意を持って取り組んだランタンイベントについて、続いてほしいとは思っているが、必ずしも継続が大切なのではないという。

「もちろん、思いのこもったイベントは続いてほしいですね。でも、同じ活動を続けることだけが目的ではありません。後輩たちに望むことは、『自分たちで新しいことに挑戦してほしい』ということ。そして、『学生が地域に関心を持ち、行動する文化』を継承していきたいと思っています」

「やってみよう」という熱い思いが、脈々とサークルに続いていったら良いですね、と笑顔で語っていたのが印象的だった。

■挑戦する場こそ、地域の財産

地域での活動の様子(写真は本人提供)

学生は、いつか大学を卒業する。しかし、そのたびに地域活動を終わらせる必要はない。

佐藤さんが後輩たちに残したいのは、同じイベントを繰り返すことではなく、地域に関心を持ち、自分たちで考え、行動する姿勢だ。

地域づくりの成果は、イベントの来場者数や開催回数だけで測れるものではない。

学生が入れ替わっても、新たな挑戦が生まれ続ける。そのような文化が地域に根付くこともまた、地域づくりの大切な成果なのではないだろうか。

■情報

福島大学 金谷川プロジェクト公式Instagram

https://www.instagram.com/kanayagawa_100

安齋慎平

安齋慎平

福島県在住のライター。企業や自治体、政府広報など幅広い領域でインタビュー記事を担当。主な執筆記事に「東急ハンズの中の人に聞く『つぶやきの作法10ヶ条』」や「全職員を巻き込み、自ら改革する市役所を作る!–福島市役所のDXを進めるキーパーソンたちに聞く」など。「デイリーポータルZ」月間新人賞受賞経験あり。

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