秋田県北秋田市に「森のテラス」というオープンガーデンがある。
「森のテラス」は山田茂雄代表が故郷を離れ、造園家として都会で活躍したのち、「生きる力を育む庭。みんなのこころのふるさと」として2005年、故郷である北秋田市森吉に作った場所だ。
約 26ヘクタールの広大な敷地にテラスや小道、畑や田んぼ、ため池があり、夏には蛍、秋にはダリアを鑑賞することができる。
自然そのままの多種多様ないきものが住まう「山の自然」と「人工的なガーデン」が融合するこの素敵な空間は、誰でも自由に無料で散策することができる。
そんな森のテラスに最近「肉を食べる」ステーキハウスがオープンしたということで、代表に話を聞きに行った。
自然環境を重んじる森のテラスの理念とステーキハウスは、筆者からすれば少し齟齬があるように感じたからである。
2019年に小泉進次郎環境大臣が気候変動サミットでニューヨークを訪問した際、ステーキを食べたことが話題になった。なぜなら牛肉の大量生産は気候変動や食糧危機、水不足の原因だと考えられており、環境問題に敏感な人々は肉食を避ける傾向にあるからである。
日本ではベジタリアンやヴィーガンの数が少ないが、欧米では一般的な存在で、飲食店でも彼らに対応したメニューが多い。
筆者がロシアに滞在していた時も、ヨーロッパからの留学生はベジタリアンが非常に多かった。彼らの多くは、環境保護や動物愛護の観点から政治的な運動として肉食ではなく菜食を選択しているようであった。
そんな環境問題や動物愛護に敏感な先進国のトレンドを考慮すると、自然保護と生物の多様性を重んじる森のテラスに、牛肉を食べるレストランがあるのは不思議な感じがする…。
そこで、森のテラスの山田茂雄代表にその疑問をぶつけてみた。
筆者の違和感を伝えてみたところ、山田代表は
「私はただの造園家ですからね(笑)。政治的な意味は特にありません。森のテラスを眺めながら、ゆっくり語らえる場所を作りたかっただけです。」
と答えてくれた。
地産地消の観点から肉は地元の森吉牛も検討したけれど、最終的には脂身の少ない北米の牛肉にしたとのこと。ただし、食肉文化の環境への負荷については知っているので、環境問題を考えるきっかけにはして欲しいそうだ。
店内にある大きな石には井戸水が流れており、外と内の水の音が重なるように設計されている。
また、窓は全開できるように作られていて、外の美しい景色を眺めながら食事を楽しむことができる。
肉をもりもり食べる元気が最近あまりない筆者であるが、カウンター席から見える風景の美しさに魅せられたので、また訪問しようと思う。そして、ベジタリアン・メニューの追加をしつこく提案してみようと思う(笑)。
森のテラス