孫がバトンを受け取り、昭和レトロな駄菓子工場が令和の映える菓子屋にアップデート!【愛知県名古屋市】

3 min 577 views

昭和13年(1938年)創業の駄菓子工場、フジタセイカ株式会社が今、大きく生まれ変わろうとしている。きっかけは、80代の社長を20代の孫がサポートして、バトンを受け取ろうとしたことに始まる。事業のバトンを次世代につなぐなかで、主力商品の原料高も背景に、事業を駄菓子製造から「ここにしかないお菓子」を提供する菓子屋さんにアップデートしようとしている。

独自の工夫で生み出した「動物ヨーチ」と「栗せん」を長年製造

元々、フジタセイカでは、動物の形のビスケットに砂糖蜜をかけた「動物ヨーチ」という商品と、白あんを主原料に栗の形をした「栗せん」の2商品を製造していた。

「ヨーチ」はいろいろなメーカーが製造しているが、フジタセイカでは、藤田吉彦社長(82)は長年改良を加え、他社にはない味わいの「動物ヨーチ」を製造してきた。

「栗せん」も製造自体はここ40年ほどだが、他社に先んじて栗ペーストを入れるなど、他社にはない「栗せん」を作り出していた。

駄菓子市場は価格の値上げが難しく、利益率も低く、そのため、設備投資も難しい。工場は、戦前の建物そのままで、工場内には陶器製の配電設備があるような昭和レトロな設備のまま操業していた。

80代の藤田社長は、自分の代で廃業するつもりで、人の採用も行わず、ただロウソクのともしびが消えるのを待っているような状態だった。

「祖父の味を無くしたくない」洋菓子職人の孫が継承を決意

藤田社長の孫の毛利陸人さん(22)は、フランス菓子店に就職。洋菓子職人として歩んでいた。

自分が子供の頃から慣れ親しんだフジタセイカのお菓子だったが、いろいろなお菓子を知るたびに、比較するとおいしいことに気がついていった。

祖父が廃業しようとしていることが残念に思え、お菓子を学校の先生や職場の同僚に食べてもらうたびに「なくなるのは、もったいない」と言われて続けていたという。

2021年1月、藤田社長が一時体調を崩したときに、陸人さんは勤めていたフランス菓子店の休みを利用して手伝いに来た。その時、「この味を引き継いで行こう」と決心したという。

「いつか直接お客様からおいしいという声を聞きたい」という社長の夢が現実に

そもそも、藤田社長は発想が豊かで、小麦を使っていないのに、「栗せん」を焼く過程で、ふっくら膨らむことに着眼し、「栗せんでケーキを作る」ことに挑戦したこともある。

試行錯誤を繰り返し、ようやく白あんが主原料のケーキらしいお菓子を作り、名古屋商工会議所の「あたらしい名古屋の和菓子土産コンテスト」にも応募した。

藤田社長には、「おいしいものを作れば、必ずお客様は認めてくださる」という信念があった。

卸売専業ながら、いつか直接お客様に販売して、「おいしい」という声を聞きたいという長年の夢もあり、直売所や通信販売で直接お客様に販売することを考えていた。

その頃、「動物ヨーチ」の主原料の小麦の価格高騰もあり、駄菓子としての価格帯としては、今の品質を維持しての提供が難しくなった。

藤田社長が長年こだわって製造してきた「ヨーチ」がなくなる寂しさを感じていた周りの人たちは、「80を過ぎてまで頑張ってきた社長に、何かご褒美をあげたい!」と、「直接お客様に販売したい」という社長の夢をまとめて、国の補助金に応募したところ、採択され、社長の夢が現実になることに!

以前から、ゆくゆくは「フジタセイカを盛り上げたい」と思っていた孫の陸人さんも合流することとなり、社長の夢にも拍車がかかった。

「栗せん」の生地を使った「栗せんケーキ」も、陸人さんの洋菓子店仕込みの技術を活かして、味わい深い和洋菓子「栗せんケーク」として完成した。

味も「マロン」「大納言」「チョコ」「抹茶」のラインアップと季節限定商品をそれぞれ出していくという。

さらに、洋菓子店直伝のクリームを使った「栗せんサンド」も「チョコ」「いちご」「抹茶」の3種類を販売。こちらも更なるアレンジを加える予定だ。

栗せんケーキの製造ラインと孫の陸人さんのこだわりの詰まった映える直売所「菓子屋 藤ノ宮」が2022年9月23日にオープンし、これからは陸人さんが、バトンを引き継ぎ、創業100年に向けて挑戦を続けていく。

消えかかったロウソクの灯火は、今大きな松明に点火され、これからも長く走り続けて行こうとしている。

(毛利和子さんの投稿)

情報

フジタセイカ株式会社

・住所:名古屋市中村区千原町4−45

・TEL:052−452−5633

・FAX:052−452−5634

・公式HP:https://fujitaseika.com/

直売所「菓子屋 藤ノ宮」

・不定期開店 9:00〜16:00

・電話:052-451-7534

・メールアドレス Kashiya.fujinomiya@gmail.com

・店舗オープンや新商品情報はInstagramをご覧ください。

https://instagram.com/fjino___miya?igshid=YmMyMTA2M2Y=

商品

・栗せん 20枚入り 400円

・けいく 各種300円

・栗せんサンド 各種200円

・白あんテリーヌ 300円

※詰め合わせギフトも販売予定

ローカリティ!名古屋

ローカリティ!名古屋

愛知県名古屋市

ローカリティ地域版

「ローカリティ!名古屋」は、株式会社JTB様と弊社合同会社イーストタイムズが運営する「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」の一環として行われた「名古屋市ローカル魅力発掘発信ワークショップ」から生まれたハツレポを紹介しています。参加者はワークショップを通じて情報発信スキルを学び、地域レポーターとして住民しか知らないの魅力の可視化と発信を行うことで、県内外の名古屋市ファンを創出し、関係人口増や移住定住につなげる取り組みです。