映える富士山と茶畑を作る!「電線」も「防霜ファン」も撤去した大渕笹場を支える大渕二丁目ささば景観保存会の熱い思い!【静岡県富士市】

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茶畑と富士山 

静岡県は、江戸時代から茶栽培が盛んであり、県内各地でお茶が栽培されている。近年では霜の被害を防ぐための「防霜(ぼうそう)ファン」が一定間隔で配置され、電線によって囲まれた近代的な姿の茶畑が一般的な風景となっている。静岡県富士市の大淵地区に位置する「大淵笹場」では、「防霜ファン」や「電柱」に遮られることなく、富士山と茶畑が一体となった風景を間近で鑑賞することができる。昔ながらの風景を楽しむことができる茶畑は、現在では非常に希少である。その大淵笹場を保全し、美しい風景を維持するために活動している大淵二丁目ささば景観保存会会長の藤田洋司さんに話を伺った。

高さ3mにもなったお茶の木。耕作放棄地を復活

大淵笹場は半世紀以上、4軒の農家によって保全されていたが、保全者の高齢化や後継者不足によって、長年耕作放棄されている状態だった。お茶の木が荒れ放題で3メートルもの高さに成長し、手をつけられない状態に。「このまま終わらせてはいけない、未来に残していかなければならない」という思いから、7年前に「大淵二丁目ささば景観保存会」という団体が立ち上げられた。

自分たちで荒れた土地を手入れし、美しい茶畑に生まれ変わらせようという意志のもと、丹念に世話する日々が始まった。

風景美化のため「防霜ファン」「電信柱」を撤去へ

ある日、大淵笹場を撮影したある写真家の作品を眺めていたときのことである。防霜ファンや電信柱が修正処理により消えていたのだが、無理に整えられたような印象を与え、不自然さが際立っていた。そこで思いついたのは、それらの人工物を全て除去してしまうという大胆なアイデアであった。

「大淵二丁目ささば景観保存会」は、美しい風景の保全を目指して活動している。防霜ファンや電信柱などの人工物は、美しさを引き立てる上で邪魔となる。そこで、全ての人工物を視界から排除する決断を下したのである。

しかしこの決断には、避けては通れない問題があった。防霜ファンの撤去により、霜害により茶葉の収穫量の減少を防げなくなるのだ。これは実際に農業を行う人々にとっては、大きな問題である。しかし、その土地の真の価値と魅力を引き立てることが最優先ということで、撤去は実行された。

売店の売り子の藤田さん(左)と久保田さん(右)

お茶摘み体験からドローン撮影まで。売り上げは保全活動に

大淵笹場で栽培された無農薬栽培のお茶は、茶畑の目の前にある売店で購入可能だ。無料で試飲もできる。大淵笹場の茶葉をふんだんに活用した煎茶をはじめ、紅茶やほうじ茶、ほうじ茶とコーヒーを組み合わせた「Hoffee」や、グッズとしてポストカードやてぬぐいなどを販売している。

ドローン撮影も可能で、30分2万円。ちょうど取材時に、ファッションデザイナーの会社が訪問しており、プロモーションビデオを撮影していた。

お茶を摘み、ほうじ茶を作るという体験プログラムも人気だ。体験を踏まえてお土産を買ってもらう、という組み合わせで、外国人のお客様の申し込みも多い。茶娘の格好をして写真を撮ることができる茶娘体験は一回1500円(男性も可能)でお土産に手ぬぐいとお茶付き。

「338茶の間」というティーテラスを貸切にして茶園で採れたお茶とお菓子が入ったピクニックセットを楽しむプログラムもある。一人3500円で90分貸切。「338」とは標高が338mだからとのこと。

「少しでもお金を落としてもらうような工夫やアイディアを考えていますね。その売り上げは笹場の保全活動に使っています。人件費や経費がかかりますから」

茶娘体験からドローン撮影まで可能
大淵笹場は標高338m 

富士市大淵地域に広がる可能性

2018年頃、メディアに大淵笹場を宣伝していこう、という取り組みが始まり、テレビ、新聞、ラジオといったメディアで積極的にPRするようになった。2022年に東京チャンネルの全国版に出演した際、「富士山が茶畑とセットで見える絶景ポイントがここにある」という宣伝が功を奏し、一気に来場者が増えた。大淵笹場の美しい茶畑は多くの人々に楽しまれ、その価値が広く認知されるようになったのである。

大淵笹場は現在、青地という農地登録されているため、農業以外の利用が厳しく制限されている。

「朝起きたら、窓から富士山と茶畑が見える。そのお茶を見に行こう。 そういう場所にしたいんです。法的に問題はあるかもしれないが、最低でも5階建ての宿泊施設を作りたい」

大淵笹場の周囲には宿泊施設もない。宿泊施設ができれば宿泊型のプログラムや、滞在型のプログラムなど、遠方からの観光客やインバウンド訪日観光客に対して満足度の高いサービスが提供できる。

ここから3キロ離れてる場所に、大淵笹場の3倍ぐらいの面積がある大淵公園がある。そこに桜を5万本くらい植えて、そこでお花見をして、富士山が見えて、花も桜以外に色々な種類を植えて、伊豆半島まで望める海が見えるような場所作りをしたい。富士市の3分の1の面積を大淵地域が占めているので、笹場以外にも大淵をもっと魅力的な場所にしていき、いずれ市民の集いの場所にしていきたい。

耕作放棄地を再生するところから始まった活動は、その地に新たな生命を吹き込み、再び人々を引き寄せる場所となった。藤田さんの夢は広がる。

笹場をバックに地主の小山さん(左)と会長の藤田さん(右)

(写真は全て2023年7月31日筆者撮影 )

情報

大淵二丁目ささば景観保存会 会長
藤田洋司さん

大淵二丁目ささば景観保存会
住所:〒417-0801 静岡県富士市大淵1445
HP:http://sasaba.fuji-tea.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/ohbuchi_sasaba/

坂本友実

坂本友実

静岡県富士宮市

編集部記者

「生き物の精密模型」という非常に限定的な市場で、ニッチな商品を届け方を追求した経験から、いいものなのにマイナーすぎて売れない、伝えるべき人に伝えられなくて歯痒い、という問題を解決したく、媒体にぴったりなアプローチによって「伝えたい想い」を「届けるべき人」に届け、機会損失をなくしていきたいです。

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