網走のスーパーで必ず見かける長天は、タラのすり身の揚げ蒲鉾だ。煮たり焼いたりカレーに入れたり、市民の使い方は実に多様。長天が広く市民に愛される理由に迫った。
網走川の川沿いにある大谷かまぼこ店には熱気が立ち込めている。工場は40 ℃ を越え、まるでサウナだ。汗を拭い、水分補給をしながら、4代目社長の大谷朝彦(ともひこ)さんは、揚げ温度208℃にこだわって今日も長天を製造中だ。原料はスケトウダラのすり身。塩、デンプン、砂糖などの調味料は昔ながらの配合を変えず「祖父や父の味を守れているのかな」と伝統にこだわる。子供の頃はおやつも長天だったと言う社長の好きな食べ方は、フライパンで炙って砂糖醤油で味付けするというもので、長天の味付けの幅広さに驚かされる。
水産加工業の盛んな網走市内には、かつて24軒もの蒲鉾店があったというのだから、相当身近な食材だったのだろう。「どんな料理にも入れているうちにソウルフードとして定着した」ということらしい。
現在は網走からすり身工場がなくなり、蒲鉾店も他に2社を残すのみとなっている。大谷かまぼこ店も攻めの姿勢に転じ、催事に出向くことも多いそうだ。後継者の候補も現在修行中とのことで、伝統の継承が期待される。
そんなソウルフードをバーベキューに持ち込んでみた。ふっくら膨らんだアツアツの長天は、あっさりながら甘みがしっかりしていて味付けしなくても美味しい。焦げやすいので注意が必要だが、子供から高齢者まで食べやすい万能な料理だと感じた。
揚げたての長天は、大谷蒲鉾店の直売所で購入できる。販売は9時半から。水曜定休。シンプルな長天の他にもカボチャ天、チーズ天、蒸し蒲鉾などがある。
武内 純子さんの投稿
【店舗情報】
- 有限会社大谷かまぼこ店
- 住所:北海道網走市南1条東1番地