左・高橋泰弘さん 右・高橋睦人さん
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「環境への取り組み」の縁を取り持ったペレットストーブ
山形県の小国町で毎年開かれる「再エネフェス」を主催する高橋泰弘(たかはし・やすひろ)さんと高橋睦人(たかはし・むつひと)さん。「再エネフェス」とは「再生可能エネルギーを体感する祭り」ということだが、なぜそのような活動をされているのかお二人にお話を伺った。
お二人は共に小国町出身。泰弘さんは米留学を経て20年前に実家のメガネ屋さんを継ぐために帰郷。睦人さんは仙台で飲食店経営などを経て、その後帰郷し18年前に石油店で働き始めた。
もともと薪ストーブに興味のあったお二人。泰弘さんがテレビでペレットストーブの存在を知り、石油店で暖房機を設置する仕事もしていた睦人さんに、「うちの店にペレットストーブを設置してくれないか?」と依頼した。
ペレットストーブを扱うのは初めてだった睦人さんだったが、泰弘さんの店に設置したペレットストーブの素晴らしさに気づき、それがきっかけで石油店を辞め、ペレットストーブを設置・販売するお店を立ち上げた。
ペレットストーブとは
「ペレットストーブ」というものを皆さん、ご存じだろうか?筆者ももちろん知らなかったが、木質ペレットという、木材を加工する時にできるおが屑や廃材などを小さく取り扱いやすい燃料にしたものを燃やして暖をとるストーブのこと。
似たものに薪ストーブがあるが、木質ペレットを燃料に使用することで、高齢の方が薪を割ったり運んだりする力仕事が必要ないというメリットがある。
2011年の東日本大震災で、電気・石油などのライフラインが絶たれたことで、身近なもので暖をとれるペレットストーブに注目が集まったようだ。
W高橋さんによる新しい地球環境の再生化活動
一般的な燃料として使われる灯油は、山深いこの町では海側の町に比べ、輸送費などが上乗せされた価格となり、それはかなり高額で住民の経済を逼迫する。電気で言えば、オール電化の家では昨今の値上げに伴い1ヶ月6万円もの電気料金になる可能性が出てきたそうだ。そんな状況でペレット燃料だと一冬6万円ほどで済むとのこと。
日本は3分の2が森林であり、小国町も例外ではなく、町の90パーセント以上を森林が占めている。
小国町に石油はないが、木はあると睦人さんは言う。
そもそも日本では昔から木をつかい火をおこして生活をしてきた。日本のもったいない精神で、捨てるゴミが燃料になる再生化エネルギーの始まりだ。
「木が燃料になるなら小国はお宝だらけ、油田に住んでるようなものだ」と睦人さん。
「田舎はあたらしいことをするのが嫌」
「皆がやっている、同じことをしたがるのが日本人」
そんな閉鎖的な田舎に暮らしながら、誰もやっていない新しい試みを始めた睦人さんだが、震災前にはほとんど売れていなかったペレットストーブが、今は着実に売れ出してきていることを鑑みると、予言的でさえある。
睦人さんのペレットストーブなどを扱う会社は今や従業員は15人に増え、地域の雇用にもつながっている。
睦人さんと泰弘さんは「人口減少や地域経済の悪化など悪循環が続くなか、地球にやさしく好循環を生み出せる仕組みを作りたい」と仲間たちとともに「おぐにエネルギーの地産地消を考える会」を発足させた。
泰弘さんはその会の代表を務めている。泰弘さんと睦人さんは小国町の、いや、日本の再生可能エネルギーを考える最先端を走る。
今年は ストーブやボイラーの他にサウナも仲間入りして、持続可能な形態の飲食や物販を組み合わせたお祭りになった。参加者みなさんが楽しんで大盛況だったそうだ。
最先端の再生可能エネルギーは、町の人々をも宝に変える力があるようだ。