
リゾートトラスト株式会社は、会員権事業を中核に、ゴルフ、メディカル、シニアライフ事業を展開し、人々の豊かな人生を支えている総合企業グループです。同社が掲げるグループアイデンティティは「ご一緒します、いい人生」。その言葉の背景には、お客様一人ひとりの人生に寄り添い続ける経営姿勢があります。
執行役員 ホテル&ゴルフ本部 西日本事業部長を務める小林典道さんは、26年間にわたりホテルの現場でお客様と向き合い続けてきました。「お客様はなぜ、会員になられたのか」。その問いを追求する中で小林さんがたどり着いたのは、宿泊やサービスを提供するだけではなく、“お客様の人生そのものに寄り添う”という考え方でした。
お客様の声から事業を広げ、ホスピタリティを育み、時には震災復興の現場で地域と向き合う――。小林さんの歩みを通して、リゾートトラストが大切にしてきた経営哲学と、その先に目指す未来を伺いました。
目次
料理人からホテル業界へ。「なぜ会員になられたのか」を知りたかった
小林さんはもともと料理人でした。実家の商売を継ぐことを考え、調理だけではなく営業やサービスも学びたいと考えたことがホテル業界へ進んだきっかけだったといいます。その中で出会ったのがリゾートトラストでした。
「商売をするなら、お客様のニーズを知ることが一番大事だと思っていました。だから会員制ホテルに興味を持ったんです」
日々お客様と向き合う中で、小林さんはある関心がふくらんでいきました。
「お客様はなぜ会員になられたのか。それが知りたかったんです」
ホテルに何を求めているのか。なぜ会員権を購入したのか。どんな人生を送りたいと思っているのか。その背景を知りたいという思いが、小林さんをお客様との対話へと向かわせました。
「毎日手紙を書くこと、積極的に声をかけること、お客様に向き合い何度も足を運んでいただける関係を築くよう、ずっと続けていました」
そうした積み重ねの中で、小林さんは会員制ホテルならではの価値に気づいていきます。
「一般のホテルとは違う。ただ泊まるだけじゃない。会員制だからこそ、その人の人生に関わっていくことができるんです」
「私の人生、あなたたちに会いに行くことしか楽しみがないの」
小林さんがその価値を強く実感した出来事がありました。
90歳になる会員様がホテルの滞在中に体調を崩し、小林さんが東京の自宅まで送り届けたことがありました。その方は幼い頃に両親を亡くし、結婚後まもなく戦争で配偶者を亡くした、身寄りのない天涯孤独の方でした。
「せっかくだからお茶でも飲んでいきなさいよ」そう言われて部屋に入ると、「お帰りなさい」という声が聞こえました。驚いて振り返ると、そこにはいわゆる「おしゃべり人形」と呼ばれる、話し相手を求める人のための人形が置いてありました。
その方は静かに話します。
「私ね、この子しか話し相手がいないの。あなたたちに会いに行くことだけが、私の人生の楽しみなの」
小林さんは今でもその言葉を忘れられないといいます。
「お客様はホテルで楽しく過ごされているように見えても、それぞれの人生を背負っています。そのことを知ったとき、一人ひとりのお客様の人生に向き合わなければいけないと思ったんです」
会員制ホテルの価値とは何か。その答えは、豪華な施設や上質なサービスだけではありませんでした。お客様の人生に向き合い寄り添うこと。それが小林さんのたどり着いた答えでした。
「ご一緒します、いい人生」の原点
リゾートトラストは現在、ホテルだけでなくゴルフ、メディカル、シニアライフへと事業を広げています。その理由を小林さんはこう語ります。
「全部、お客様の声から生まれたものなんです」
「ゴルフを楽しみたい」「健康で長く人生を楽しみたい」「人生の後半も安心して暮らしたい」ーー。そうした声に向き合った結果として、事業は広がっていったのです。
「人生を点ではなく線で支えていく。それがリゾートトラストだと思っています」
グループアイデンティティである「ご一緒します、いい人生」
その言葉は単なるスローガンではありません。お客様の人生を理解し、その変化に寄り添い続けるという経営姿勢そのものなのです。
「お前の判断でやれ」。震災で知った会社の懐の深さ

東日本大震災当時、小林さんは福島県にあるグランドエクシブ那須白河の総支配人を務めていました。ホテルやゴルフ場も大きな被害を受け、地域には避難してきた多くの方々が身を寄せ不安な日々を過ごしていました。
「何かできることはないか」
そう考えた小林さんは、まず、避難されてきた方々に水が必要であると会社へ打診し、すぐにペットボトル2万本をトレーラーで届けてもらいました。そして、利用可能だったゴルフ場の大浴場を地域の方々へ無料開放したいと本部へ相談します。その時に返ってきた言葉が、今でも忘れられないといいます。
「地域の人の役に立つことなら、お前の判断でやれ。お金がいくらかかってもいい。任せる」
会社としても先の見えない状況の中でした。しかし、小林さんはその言葉に背中を押され、地域支援へ踏み出しました。大浴場の開放が始まると、毎日1000人を超える方々が訪れました。避難生活が続く中、久しぶりに湯船につかる人も少なくありませんでした。
中には、手を合わせながら涙を流す方もいたそうです。
「その姿を見た時に、ホテルって泊まるだけの場所じゃないんだと思ったんです」
そして同時に、小林さんはリゾートトラストという会社の懐の深さを知ります。
「利益だけじゃなくて、人のため、地域のために動くことを認めてくれる会社なんだと思いました」
東日本大震災の孤児遺児の支援は今もなお、企業として継続して行っています。お客様の人生に寄り添うという理念は、平時のサービスだけではありません。困難な状況の中で地域に向き合う姿勢にも表れていました。これらの経験は、小林さんにとって、人の役に立つことの意味と、リゾートトラストという会社の在り方を改めて実感する出来事となったのです。
ホスピタリティを文化として育てる
現在、小林さんが力を注いでいるのが「人財」を育てる「プレジャープログラム」です。その原点にあるのは、ホテル&ゴルフ事業部の基本精神である「Your Pleasure is Our Pleasure(お客様の喜びは、私たちの歓びです)」という言葉でした。
「お客様に喜んでいただくことが、自分たちの『歓び』になる。それがリゾートトラストのホスピタリティの原点なんです」
長年ホテルの現場に立ち続けてきた小林さんは、お客様の人生に寄り添うためには、サービスの品質だけでなく、その思いを組織全体で共有する文化が必要だと感じていました。そこで目指したのが、現場の若いスタッフが主体的にアイデアを出し、お客様の喜びを追求できるボトムアップの組織づくりでした。
本プログラムでは、各ホテルから選ばれた若手リーダー「ブランドアンバサダー」が中心となり、どうすればお客様にさらに喜んでいただけるのかを現場から発信しています。ブランドアンバサダーは、お客様へ感動体験を届けるだけでなく、その思いを仲間へ広げていく存在です。

ブランドアンバサダーを中心に、少しずつ意識改革は進んでいると感じてはいるものの、一方で、小林さんはまだ道半ばだとも語ります。だからこそ、小林さんが大切にしている言葉があります。

「人を大切に」
それは、お客様だけを指す言葉ではありません。
「お客様を大切にする。仲間を大切にする。そして自分自身も大切にする。その積み重ねがあってこそ、本当のホスピタリティにつながると思うんです」
制度や仕組みをつくることが目的ではありません。お客様の喜びを自分たちの「歓び」として感じられる人を増やし、その思いが自然と受け継がれていく組織をつくること。プレジャープログラムは、リゾートトラストらしいホスピタリティを未来へつないでいくための挑戦なのです。
「ご一緒します、いい人生」を未来へ
小林さんは、これからのリゾートトラストが担う役割について、「余暇」と「健康」の両方を支える存在でありたいと語ります。
「人生100年時代と言われる中で、私たちが提供できる価値はまだまだあると思っています」
これまでリゾートトラストは、ホテルやゴルフを通じて豊かな余暇時間を提供してきました。しかし今後は、それだけではありません。メディカル事業との連携をさらに強化し、滞在そのものが健康につながるサービスの実現を目指しています。
「ホテルで過ごす時間そのものが、より健康でしあわせな時間になってほしいんです」
健康でいるからこそ、人生を楽しめる。人生を楽しめるからこそ、家族や仲間との時間が豊かになる。小林さんが目指しているのは、ホテルという場所を提供することではありません。一人ひとりがより長く、より豊かに人生を楽しめる社会をつくることです。
「なぜ会員になられたのか」
26年間追い続けた問いの先で、小林さんがたどり着いた答えがあります。
お客様の人生に向き合い寄り添うこと。そして、ご一緒すること。
その思いはこれからも、リゾートトラストが描く未来の中心にあり続けます。
最も印象に残った言葉:
「お客様はホテルで楽しく過ごされているように見えても、それぞれの人生を背負っています。そのことを知ったとき、一人ひとりのお客様の人生に向き合わなければいけないと思ったんです」
聞き手:丸山夏名美 構成・書き手:天野崇子
※写真は提供写真を除き2026年5月27日丸山夏名美撮影
企業情報
企業名:リゾートトラスト株式会社
取材対象:執行役員 ホテル&ゴルフ本部 西日本事業部長 小林典道さん
経営理念:ご一緒します、いい人生 より豊かで、しあわせな時間を創造します
所在地:名古屋本社〒460-8490 名古屋市中区東桜2-18-31
ホームページ:https://www.resorttrust.co.jp/






