助産師が絵本作家に!こどもたちへ伝える性教育「だいじなはなし」【和歌山県那智勝浦町】

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和歌山県の港町、那智勝浦町(なちかつうらちょう)で開業助産師として活動している、もとだてかづこさん。1998年に、自身が生まれ育ったまち、那智勝浦町で助産院を開業して今年で26年目を迎えます。

地域の助産師として多くの命をとりあげてきたもとだてさんは、産前産後のママや家族が安心して過ごせるために、周辺地域の自治体と連携した産後ケア事業に力を入れて活動しています。

2024年6月11日、そんなもとだてさんが、未就学児に向けた性教育の絵本を出版しました。

長い間タブーとされていた子どもたちへの性教育

もとだてさんは、助産師として「命(いのち)」や「生き方」を考える教育活動もしています。また「命」を考えるうえでもっとも重要である包括的性教育を、未就園児、小中高校、大学、保護者、教育関係者に広める活動を行なって22年にもなります。

「日本では、長い間子どもたちへの性教育はタブーとされてきました。おとな達の間で『性』は隠さないといけないもの、恥ずかしいものという価値観が浸透していたからでしょう。しかし、本来の性教育は人権や生き方、人とのコミュニケーションのあり方など幅広く深い内容なんです」

そんなもとだてさんのもとには、性を学びに来てくれる高校生や中学生がいるといいます。恋愛についてお互いの同意が必要なこと、男女の身体のしくみや、妊娠・避妊・性感染症のことなどをわかりやすく話します。実際にコンドームのつけかたを模型を使って行うほか、お土産に練習用コンドームを一つプレゼント(保護者の方にも報告済み)するなど、これまで地域で培ってきた信頼関係と、専門家としての知識を余すことなく伝えています。

活動を通して、「『性』の話は子どもの成長や発達に合わせないといけない、そして、くり返し話すことが大切」と感じていたもとだてさんですが、未就学児に向けた本にピンとくるものがないと感じ、自身が性のお話会で常に話している「大切にしていること」をより伝わりやすくするために、このたび絵本を出版しその思いを込めました。

伝えたい「だいじなはなし」

もとだてさんが絵本を通して伝えたいことのひとつは、人には「プライベートパーツ」という部分があるということ。それは、口・胸・性器・お尻といった、他人が勝手に見たり触ったりしてはいけないところを指します。

「水着でかくすところ」はプライベートパーツと表現し、ルールとして自分以外のプライベートパーツはさわってはだめ、じーっと見てもだめと表現しています。

親子で絵本を読みながら「こんな時はどうかな?」と、いろいろな場面を想定して欲しいともとだてさんは話します。

残念なことに、幼い子どもへの性被害は増えているといいます。絵本では、子ども自身がそのようなことに直面したときに、逃げる、そして信頼のおける大人に相談するよう伝えています。

「大切な存在で、愛されていること」

伝えたいことのもう一つに、難しい言葉や知識を伝える前に、特に未就学のお子さんには「愛情をたっぷり注いで欲しい」ということがあります。

もとだてさんは性教育について「何歳から話せば良いのか、どう話せば良いのか」と質問された時、まずは「自分は大切な存在なんだ。愛されているんだ」ということを伝えて欲しいと話しています。

「始めようと思った時が始めどき、いつ始めても遅いってことはないです。私たちがどのように生まれてきたかというところを知ってほしいから、この絵本をお子さんと何度も読んで、楽しい時間を過ごして欲しいです」

「子どもたちが幸せに育って欲しい」

間違った性の知識から「望まない妊娠」 が起きることがあります。
「性教育の基本は『対話』から。性の学びの『せい』は『生』でもあります。この世に生を受けた子どもたちが幸せに育ってほしいから、学びの場をどんどんつくることを頑張りたいと思っています。みんなが幸せに生きられる世の中になってほしい」

今回、絵本の出版にあたって、「絵本なんて作ったことないしそもそも絵なんて描けない。だから毎日、毎日何時間もiPadに向かってひたすら描く!」という挑戦をしたもとだてさん。

もとだてさんが執筆した記事

ローカリティ!のレポーターとして、自身が助産師として関わったお産をレポートした記事を書いた経験もあります。

また、2022年11月24日に和歌山県商工会連合会が主催した、「グーペホームページ作成コンテスト」において、もとだてさんが作ったかづこ助産院のホームページが最優秀賞を受賞するなど、もとだてさんは様々な媒体を使い、いろいろな世代に向けて、どうやったら伝わりやすいのか、その方法を自分で考えるなど、挑戦をひたすらに続けています。

そんなもとだてさんの思いが詰まった「だいじなはなし」を、ぜひお手元に一冊いかがでしょうか。

 かづこ助産院
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町北浜1-13
E-mail:sanba-kazuko@zd.ztv.ne.jp
Tel/Fax:0735(52)6798
HP:http://sanba-kazuko.com/
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天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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