〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
1区画30㌃の⽥んぼに放牧される豚はわずか6頭。1頭当たり500㎡の広さ約300畳。区画ごとにある遮光ビニールの手製小屋は出入り自由。朝から30度超えの真夏には水飲み場周辺の水たまりに入り体温を下げて暑さを凌ぎ、多いときで30cmの雪が積もる冬でも元気に走ります。小屋の中は外気温と変わらないというのに…。
エサは飼料米5割(登米産)に麦と大豆を自社配合し粉砕したものと規格外の青菜を1日2回、午前と午後に与えます。⼩屋の中の餌箱に粉砕した飼料を、小屋から遠く離れた所へ青菜をトラックで運びます。すると豚は、猛ダッシュして旨いエサに辿り着きます。隣の区画でそれを眺める豚は寛大な心で順番を待ちます。
2015年10月設立「株式会社いなほ」代表の鈴木豊(すずき ゆたか)さんは登米市米山町に約400年続く米農家。田んぼ1.5㌶の一部を養豚のための放牧場として利用しています。遊休農地の有効活用を目的とした田んぼの利用は前例がほとんどなく、豊さんは創業当時より養豚において独自のアイデアを活かしています。なんといっても充分過ぎるほど広い放牧場を自由に動き回ることができ、豚の習性である鼻で穴掘りをすることも自由にできるため、豚はストレスがなく毎日を過ごすことができます。
「養豚の餌となる米の割合は通常10%ほどですが、うちの豚はよく動くため米をたくさん食べても脂肪がつきすぎることがないんです」と豊さん。季節によって小松菜や白菜、キャベツなどを近隣の農家から調達します。ちなみに、豚が自ら穴堀りで探し当てたヒエやクローバーの根は、豚の貴重なミネラル供給源になっているのです。
元気に育った豚のおいしさは成分分析値からも明らかで、アミノ酸20種のうち15種が国産豚基準値の2倍以上。旨み成分のグルタミン酸はなんと4倍にも!肉には程よくサシが入り、脂身はとても甘い。最低でも7ヶ月以上、成長を焦らすことなく愛情を込めて育てます。豊さんは、平飼い養鶏卵の出荷されなかったものを茹で卵にして豚の口に運んであげるときもあります。なんとも愛らしい豚の姿が目に浮かんでくるようですね。
米農家による全くの未経験から始まった放牧場育ちの「田んぼ豚」。飼育や販売での苦労を経て、その質の高さは世の中で広く評価されています。フレンチ割烹で著名な料理人のドミニク・コルビ氏が以前、養豚見学でこの地に訪れたことがあり、彼の心を魅了し続けています。最後に、「この“世界でいちばんおいしい豚肉”をぜひみなさんに味わっていただきたい」と力強く豊さんは語ってくださいました。