読まれないまま本棚に、あるいは床などに積まれて放置されている本……「積読(つんどく)」。あなたの自宅にも数冊、あるいは数百冊と、そんな「哀しき」書物が眠っているのではないだろうか?
「いつか読もうと思っているのだけれど……」と、読書家諸氏にとっては罪深き存在として受けとられがちな積読。SNSなどでは「罪読(つみどく)」と呼ばれることもあり、なかには本を買い込み自宅などに貯めこむという罪(積み)を重ねることに快楽を覚えてしまって「買っては積む、積んでは買う」という読了(おわり)なきスパイラルから抜け出せないという人もいるようだ。
そんな「積読人」達にとって救いの道となるかもしれないオンライン読書会が、宮崎県にある日本三大秘境の椎葉村(しいばそん)に設立されたばかりという図書館を拠点として開かれている。
「開かれている」というのもしらじらしいので白状すると、積読読書会はこの記事の筆者である小宮山剛が主催している。筆者の本職は、椎葉村図書館「ぶん文Bun」の「クリエイティブ司書」というアヤシイ肩書をもつ職業である。2020年7月18日にオープンした椎葉村図書館「ぶん文Bun」の立ち上げ事業企画・運営を椎葉村の地域おこし協力隊としてこなす傍ら、こうして物書きのような仕事も継続している。
九州のほとんど真ん中にある椎葉村は非公式に「日本三大秘境」と呼ばれるほど奥地に在り、椎葉神楽やひえつき節といった独自の文化が残されるなど、「日本の原風景」とも言える魅力が脈々と受け継がれている土地だ。そんな超ド級の田舎村に「九州初、全国5例目のシステムを採用した最先端の図書館」を企画しプロデュースしたのが筆者であり、この秘境の地に新たな文化の息吹がもうもうと渦巻いているところである。
※椎葉村図書館「ぶん文Bun」の立ち上げに関する詳細はここでは割愛し、小宮山剛個人のnoteにその紹介を譲りたい(「『図書館の夜を乗り越える』:日本三大秘境椎葉村、クリエイティブ司書爆誕秘話」 https://note.com/tsuyoshikomiyama/n/n0553ae0dc71b )
しかし時代はコロナ禍。全国にアピールできる素材を持ちながら、なかなか「来てください」とは言いづらい時勢が続いている。とくに椎葉村のような人ごみのない穏やかな村は「村に出入りがなければ安全」と言っても過言ではない。観光客の方に来てほしくても、呼べない……。そんな非常に心苦しい日々のなかではあるが、宮崎県内を中心に多くの視察者や観光客にお越しいただき、「ぶん文Bun」は徐々に、細々とではあるが評判を集めていた。
「この場所を、もっと多くの方に見てほしい」。そう考えた筆者は、椎葉村へお越しいただかなくても「ぶん文Bun」の魅力を感じていただけるコンテンツを検討した。そこで着目したのが、コロナ禍初期の頃に椎葉村内の有志読書会にて一度オンライン開催していた「積読読書会」だ。読書会なのに課題本を事前に読んでくる必要がなく、読んだこともない本の内容を「予想」して紹介しあうのがおもしろかった。
どこからでも参加できるオンライン開催で、課題本を読まなくても誰でも参加できる気軽な読書会を催す。そしてその発信拠点として椎葉村図書館「ぶん文Bun」を活用すれば、全国の皆さんにこの図書館を知ってもらうことができる。そんな思惑で第1回積読読書会を開催したのが、2021年3月27日のことだった。
※積読読書会各回の様子はこちらから(小宮山剛個人note「積読読書会マガジン」https://note.com/tsuyoshikomiyama/m/mb18ced23431d )
それから2021年7月末までの期間で、積読読書会は5回にわたり開催された。参加者の方々からは「積読こそ本当の読書術」「やっぱり積んだままにして、読まなきゃよかった」「積読に罪を感じていたけれど、この会に参加することで救われた」など、積読をめぐる様々なお声が寄せられている。
他にも「コロナ禍で大学の授業はすべてオンラインで、パソコンの前に座り一方的な講義を聴いているだけ。人と話すことといえば、アルバイト先くらいのことだった。積読読書会で久々に仕事以外のことを人と話せて嬉しかった」といった「コロナ禍での大切な息抜き」のような意見もみられた。
積読読書会は好評で、すでに5回を終えた。次回の「第6回積読読書会」は2021年8月31日(火)に開催される。夜7時30分から開始ということで、仕事終わりの方も気楽に参加できるよう設定している。積読がたくさんある方も、あるいはただ「誰かと話したい」だけという方も、秘境・椎葉村を拠点とした繋がりに多くの方が加わっていただけると幸いである。
<参考ウェブページ>
・椎葉村図書館「ぶん文Bun」公式ウェブページ
・椎葉村図書館公式キャラクター「コハチロー」のツイッター
https://mobile.twitter.com/ShiibaVillLib
・クリエイティブ司書小宮山剛個人のnote