知る人ぞ知る映画館「御成座」でプロレス興行、「待ってくれているファンのため」けじめの開催【秋田県大館市】

3 min 580 views

先月27日、秋田県大館市の駅近くの映画館「御成座」で、「北国からのプロレスシアター『捲土重来』in御成座」というプロレス興行が開催された。文化的な「映画館」と体育会系な「プロレス」という似つかわしくない組み合わせだが、今回で3回目を迎えるほどの人気を博している。

「御成座」と言えば、賃貸物件がたまたま閉館した映画館で、ついにはその映画館を再開させてしまったという逸話が、すでにさまざまなメディアを通して知られている有名スポット。一粒で2度おいしいとは、まさにこのことだ。

主催は、大館市を中心にプロレス興行を行なっている団体「UWFプロモート」の村上勇(55)さん。以前は大館市民体育館を主会場にプロレス興行を行っていた。しかし、2018年に体育館が閉館したことを受けて、「御成座」にプロレス会場の使用を打診したという。

「御成座が復活して大館市を盛り上げてくれている中、自分も何かできないかと御成座さんに声をかけました」(村上さん)

(写真)「御成座」外観。手書きの看板も魅力のひとつ
(写真)館内のレトロな雰囲気も味わい深い

「映画館でプロレスをする」というのは村上さん自身も耳にしたことがなかったらしく、「おそらく史上初では」とのこと。

第1回大会を2019年3月に、第2回大会を同年9月1日に開催。本来、昨年3月22日に行われるはずだった第3回目となる今大会は、コロナ禍で2度の延期を余儀なくされた結果、先月、ようやく開催にこぎつけた。

「まだコロナ禍の影響もあり厳しい状況ですが、延期を決定してから1年半、チケットをキャンセルせずにずっと待ってくれているファンのため、けじめとして開催しました」と村上さん。「普通のプロレスとは違い、リングのロープがなく距離が近いので臨場感が違います」と、その魅力を語る。


会場は1席ずつ離れて座るソーシャルディスタンス形式で、観客は秘蔵の試合映像2試合を鑑賞。その後、本番のプロレス3試合が行われた。

▼第1試合 SAKI vs  真琴

(写真)真琴選手がコブラツイストでSAKI 選手を締め上げる

華やかな女子プロレスラー同士の戦いとなった。激しい技の応酬はもとより舞台から落とそうとするなど、映画館ならではの要素で盛り上げる。途中、真琴選手のマネージャーが乱入するハプニングがあったが、その後も打撃攻撃、返し技をかけ合う。結局、試合時間の10分に達し、時間切れ引き分けとなった。

▼第2試合 杏ちゃむ vs 木髙イサミ

(写真)木髙選手がパワーリフトで杏ちゃむ選手を持ち上げる

関節技の天使という異名を持つ“戦うグラビアアイドル”杏ちゃむが、デスマッチ経験も豊富な男子レスラー・木髙イサミと対決した。杏ちゃむはさまざまな体勢 から関節技を繰り出し、マットの下に木髙選手を押し込め、「マットの外だから場外」と主張。リングアウトを狙ったものの、木髙選手は重量感あふれる打撃攻撃で杏ちゃむにダメージを与える。最後は一瞬の隙を突いた意外な返し技で木髙選手が勝利した。

▼第3試合 葛西純・松本都 vs 竹田誠志・春日萌花

(写真)場外乱闘で、葛西選手が自転車で雪だるまに突っ込んだ瞬間

最後は、男女の選手混合のストリートタッグデスマッチだ。

「250万円する御成座のスクリーンにぶん投げるぞー!」と葛西選手が投げつけ(ギリギリセーフ)、その後、映画館の屋外での“場外乱闘”を展開。屋外に不自然にも作られた雪だるまに選手を投げつけて自転車で突っ込んだり、古タイヤや工事用の三角コーンを凶器に使ったりと、やりたい放題。かと思えば「寒くて風邪をひかないように会場に戻るぞー!」と心優しい一面も垣間見えた。

再び舞台に戻っても三角コーンにアトミックドロップ、ひたいに竹串や木材用ホッチキス刺したりと、まさにカオス状態になった。最後は春日選手がダイビングフットスタンプで松本選手からフォールし、竹田・春日組が勝利した。

試合後の勝者インタビューで、「こんな大変な時期に(チケットを)キャンセルせずに、1年半も試合を待っていただいてありがとうございます」と春日選手。最後は葛西選手の「1・2・3・ダー!」のかけ声で締めくくった。

それぞれの選手が、映画館という会場を生かし、プロレスアタマで沸かせてくれた「映画館プロレス」。「プロレスは技ひとつ、パフォーマンスひとつで観客を熱狂させることができます。見る人の悩みやストレスを解消してくれるんです」。25年間プロモーターを続けている村上さんの言葉が、心に響いた。

森川淳元

森川淳元

秋田県秋田市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター
秋田県北秋田市出身です。少しばかり出版や取材などに関わったことがあり参加させていただきました。レポーターになり、改めて秋田ならではの面白いところを深掘りできたらと思います。