郡山市ふれあい科学館で先月、「週末、宇宙行く?が実現する世界を目指して」と題した講演会が開催された。ゲストは郡山市出身の岩谷圭介(いわや・けいすけ)氏。彼は、日本で初めて小型風船カメラを使って成層圏内の上空30キロから地球の写真を撮影し、現在も気球による宇宙遊覧を目指しているエキスパートだ。岩谷氏は、代表を務める岩谷技研の取り組みや、夢を追い続けるモチベーションについて語った。
岩谷氏は1986年、郡山市に生まれた。幼少期から宇宙に強い興味を抱き、物作りにも熱中していた。宇宙に対する情熱を抱いたきっかけは、小学生の頃に読んだ絵本「宇宙ステーション」で、宇宙の世界を科学技術で切り開く可能性に感動したという。「自分で宇宙の何かを作りたい」という夢を持ち、大学では宇宙環境システムを学んだ。しかし、ロケットの研究開発の難しさに直面し、安全でロケットよりも安価な気球を使って宇宙を目指す研究を始めた。
講演の中で岩谷氏は、「宇宙」とはロケットだけでなく、気球を使っても宇宙に近い環境を体験できることを伝えた。多くの人が宇宙と言えばロケットを想像するが、気球を使えば成層圏の高さまで上昇し、宇宙に近い景色を見ることができるという。実際、岩谷氏は約10年前に行った実験で、気球を使って30㌔の高さまで上昇し、宇宙に近い景色を目の当たりにした。
実験を始めた当初、風船を使って宇宙の写真を撮ろうとしたが、多くの失敗があった。それでも失敗から学び、試行錯誤を繰り返す中で、気球による宇宙旅行の可能性を広げていった。彼が起業した岩谷技研の目標は、「宇宙を開かれた世界に変えること」。気球を使うことで、従来の宇宙旅行の限られた枠組みを超えて、多くの人々に宇宙を体験させる未来を描くことだと語った。
岩谷氏の情熱は単なる技術的な挑戦にとどまらず、地域社会にも新たな魅力を生み出すことを目指している。彼は講演の中で、「科学と地域文化の融合が地域の発展につながり、地域に根差した技術や文化の発展が新たな発見と可能性をもたらす」と信じていると語った。また、宇宙旅行を通じて、地域の魅力を発信し、科学を駆使して次世代への道を切り開くことの大切さにも触れた。
「昨日の夢」を「今日の現実に」というメッセージを送りながら、岩谷氏はこう続けた。「今日参加してくれている子どもたちが大人になった頃には、今よりもっと早く夢を実現できる時代になっている。良い未来を作っていこう」と、参加者に向けて未来への期待を語った。彼が掲げるビジョンは、科学と好奇心を持ち続けることで、誰もが宇宙の魅力を感じられる未来を創り出すことだ。
岩谷氏は、「失敗を恐れず、チャレンジを続けることが重要だ」と語り、失敗を通じて得られる発見や成長の楽しさについても触れた。また、気球開発のモチベーションに関しては、「チャレンジの結果から学び、方向性や糸口を見つける楽しさがある」と語り、挑戦し続けることの重要性を強調した。
最後の質問コーナーでは、「気球にスマホは持ち込めるのか」「もしトイレに行きたくなったらどうする?」など、子どもたちを中心に多くの質問が寄せられた。
講演後には聴講者が個別に質問したり、岩谷氏が実験や開発に使用している実物品を間近で見たりする時間も設けられた。参加者は、実際に使用される制御機器や実験用素材を見て、宇宙へ行く未来が現実味を帯びていることを実感した。
岩谷氏の講演は、科学と地域文化を融合させた新たな可能性に対する驚きと感動を与え、聴衆にこれからの未来への期待を抱かせるものであった。科学と技術の力で、私たちは無限の可能性を開くことができると感じさせる講演だった。