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歴史と文化が息づく福岡藩ゆかりの地
福岡市天神・赤坂エリアは、江戸時代には福岡藩の家臣たちの武家屋敷が立ち並び、歴史と文化が息づく地でした。黒田長政の家臣・飯田覚兵衛の屋敷跡にたたずむ「飯田屋敷の大銀杏」は、約400年の時を超えてこの地を見守っています。加藤清正ゆかりの熊本城から移植されたと伝えられるこの銀杏の木は、現在再生中ですが、福岡市の保存樹に指定され、2018年に竣工された「プレミスト天神赤坂タワー」のシンボルツリーとして受け継がれています。
福岡藩の歴史を伝える「飯田屋敷の大銀杏」

ビジネス・商業の中心地となり、多くの人々が行き交う天神エリアには、かつて福岡藩の重臣であった飯田覚兵衛の屋敷がありました。飯田覚兵衛は、福岡藩初代藩主・黒田長政に仕えた家臣の一人で、その屋敷の庭に植えられた銀杏の木は、400年にわたりこの地を見守っています。この銀杏の苗木は、肥後熊本藩の加藤清正をしのび、熊本城から移植されたと伝えられています。江戸時代の名残を今に伝える貴重な存在として、福岡市からも保存樹に指定され、地域のシンボルとして大切にされています。

再生治療による未来への継承
しかし、長い年月の間にこの大銀杏は衰弱し、特に幹の内部の空洞化や大枝の崩落の危険性が指摘されていました。現在、福岡市によって「飯田屋敷の大銀杏」の再生治療が進められています。その内容は、次のような段階を経て行われています。
- 現在:幹の空洞部分に新たなイチョウを植え、「ひこばえ(若芽)」を育成。崩落の危険性が高い大枝の剪定や土壌改良も実施。
- 10~20年後:育成された「ひこばえ」を大きく成長させ、徐々に古い幹を撤去。
- 50~60年後:完全に「ひこばえ」が成長し、新たな大銀杏として再生。
長い年月をかけて新たな命を育てることで、歴史ある銀杏を未来へと受け継いでいく計画が進められています。
都会の喧騒の中にありながら、400年の時を超えて生き続ける「飯田屋敷の大銀杏」。四季折々にその姿を変え、特に秋には黄金色の葉が美しく輝くことでしょう。過去と現在が交差する地で、銀杏の木は天神の町を見守り続けます。
写真はすべて筆者が2025年1月に撮影したもの