昭和レトロ好き必訪!ケロリン桶に番台…消えゆく銭湯の記憶が名古屋にまるごと残っていた「あいち銭湯資料館」【愛知県名古屋市】

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あいち銭湯資料館(以下、写真はすべて筆者が2026年5月18日に撮影)

名古屋市中区の鶴舞駅近くに、全国的にも大変珍しい銭湯の備品を展示する資料館「あいち銭湯資料館」があります。昔懐かしい銭湯の記憶がギュッと詰まった、昭和レトロの殿堂を取材してきました。

昭和の銭湯を追体験! 珍しい備品がたくさん

愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合 事務所ビル

あいち銭湯資料館」は、JR中央本線・地下鉄鶴舞線の「鶴舞」駅から徒歩3分ほどの、「愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合事務所」の2階にあります。入場無料です。

1階右側のこのドアから入り、靴を脱いで階段を上がります。開館は平日10:00~16:00で、土日祝はお休みですのでご注意を!

2階には畳敷きの展示室が二つあります。まずは手前の部屋を見てみましょう。昭和の香りに満ちた備品がたくさん展示されています。

番台です。私は銭湯はスーパー銭湯にしか行ったことがなく、このような本物の番台は初めて見ました。昭和のドラマ風景のよう! あいち銭湯資料館の展示物は廃業した銭湯から提供された備品で、この番台は「喜乃湯」という銭湯のものだったようです。

番台で販売していたアメニティ類です。後ろの壁にも当時の商品が展示されています。

花王フェザーシャンプー」の販売用缶には、ひときわ目を引く美女の写真が! 画像検索をしてみると、これは日本人で初めてボンドガールを務めた女優の浜美枝さんのようです。デザインは昭和っぽいですが、浜さんのルックスは現代的な印象を受けます。さすがボンドガール。
花王フェザーシャンプーは1955年に販売開始された粉末シャンプーで、かけそば1杯25円の時代、 3グラム入り2袋10円で発売されたそうです。1袋1回分のアルミパック入りだそうです。これ以前のシャンプーは石けんを基材としたアルカリ性の固形だったそうですが、髪を優しく洗える中性の粉末シャンプーは大ヒットしたそうです。

展示されている資料によれば1979(昭和54)年の入浴料は大人160円でした。2026年現在は550円です。当時洗髪は別料金だったそうですが、1987年に廃止されました。

昭和50年代の入浴券です。

懐かしいアナログ体重計や脱衣かごも。

銭湯といえばケロリン桶!「ケロリン」は1925年に内外薬品株式会社から販売開始された鎮痛薬(アスピリン)です。今年で101周年! また、ケロリン桶は斬新な広告媒体として1963年からスタートしたそうです。2018年からケロリンは富山めぐみ製薬株式会社が製造販売しています。

愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合(以下、愛知県公衆浴場組合)のオリジナルグッズは、1階事務所で購入できます。かわいいデザインですね。

もう一つの展示室です。こちらではパンフレット類も置いており、自由に持ち帰ることができます。

なんともレトロな頭部を覆うタイプの「オカマドライヤー」とマッサージ機は、実際にコインを入れて使用できます。

江戸時代の銭湯の模型がありました。

昭和30年代の組合の議事録です。

昔の女性雑誌やスポーツ新聞もありました。当時のお客さんが風呂上がりに読んだのでしょうか。

廊下では廃業した銭湯の写真が展示されていました。古い銭湯は建築的にも美しく、失われてしまうのは惜しいと感じました。江南市の旧広見湯を検索してみると、2年前のブログ記事に建物の写真が掲載されていました。

資料館にはテレビなどで見たことはあっても実物は初めて見るものがギュッと詰まっていて、当時の銭湯文化を追体験することができます。昭和レトロを存分に味わえる、非常に楽しいところです。

苦境に立たされている銭湯経営を、イラン戦争による原油高が直撃

愛知県公衆浴場組合は、1957(昭和32)年に設立されました。あいち銭湯資料館は組合設立60周年を記念して、2017年に開館しました。

愛知県の銭湯 大人入浴料と銭湯件数の推移【1945~2026年】(愛知県公衆浴場組合より提供のデータから筆者作成)

第2次世界大戦終了後の日本の復興期から高度経済成長期にかけて、銭湯の件数は一気に増えていきましたが、1968年の816軒をピークに減っていきます。これは日本がだんだん豊かになり、各家庭に内風呂が備えられた影響が一つの要因とされています。

「石油事情最悪 省エネにご協力下さい」という昭和54年(1979年)の表示

また入浴料金は1945年の大人(中学生以上)は17銭でしたが、物価上昇に伴って年々上がっていきます。グラフの青線(入浴料)の値が1973年頃から急激に上がっているのは、第1次オイルショックや第2次オイルショックの影響があったとみられます。

日本の住環境の改善と生活様式の変化による銭湯の入浴客数減少に加え、設備の老朽化や後継者問題もあり、廃業する銭湯が後を絶ちません。ピーク時には816軒あった愛知県の銭湯は、2026年はたった50軒にまで激減しています。

お話しを聞かせていただいた愛知県公衆浴場組合・名古屋浴場商業協同組合事務長の山田耕平さんによると、近年ではスポーツジムやデイサービスにもお風呂があり、必ずしも銭湯を使わなくても済んでしまうということもあるそうです。

1991(平成3)年に廃業した菊水湯

このような厳しい状況により銭湯は毎年廃業しており、2024(令和6)年の愛知県の廃業数は2軒、2025(令和7)年は5軒だったそうです。山田さんも名古屋市中村区で銭湯を経営されていたそうですが、3年前に廃業、縁あって今のお仕事をされているそうです。

さらに追い打ちをかけて、2022(令和4)年のロシアによるウクライナ侵攻、そして今年2026(令和8)年2月からのアメリカとイランを巡る軍事的緊張で原油価格が高騰しました。山田さんによると、銭湯でお湯を沸かすのに使う燃料の8割は重油だそうです。ガソリンだけではなく重油にも政府からの補助金は出ているそうですが、重油自体が品薄のため、価格は上がる一方だそうです。通常時の重油価格はガソリンの半分くらいだったそうですが、今はほぼ同額になっているとのことです。

ただでさえ厳しい銭湯経営を、重油価格の高騰が直撃しています。体力のない銭湯は廃業せざるを得なくなる可能性も予想されます。

災害時の地域インフラとしての銭湯

利用者減とコスト高によって、銭湯が消えていくのを見過ごしていてもよいのでしょうか?

実は愛知県名古屋市は災害時の被災者支援において、愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合と協定を結んでいます。市内の避難所などで生活している方、断水又は自宅の入浴設備が被災しているなどの理由により入浴できない方に対して、入浴機会を無料で提供するというものです。

銭湯は井戸水を使用しているところが多いため、たとえ断水していても電気さえ復旧すればお風呂を沸かすことができます。また井戸水を被災者に提供することもできます。

銭湯は災害時に役立つ地域インフラなのです。

山田さんによると、神戸市の銭湯業界は阪神淡路大震災を経験しているため支援金は手厚いそうです。しかしそれに比べると愛知県や名古屋市はなかなか厳しいそうです。災害時の地域インフラとしての役割を考えると、銭湯をどう維持していくかが課題になりそうです。

実は若者客は増えている!

銭湯を取り巻く環境について暗い話ばかりしていましたが、実は明るい兆候もあります。山田さんによれば近年、銭湯では若い世代の利用者が増えているそうです。

昨今のZ世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)の間の昭和レトロブームに加え、サウナブームも拍車をかけています。サウナ専門店に行くとそれなりの利用料がかかりますが、サウナを備えている銭湯ではほんの100~200円をプラスするだけで利用することができるので、若い方が増えているそうです。名古屋市瑞穂区と南区の銭湯はサウナ利用料金が無料だそうです。これは狙い目! 愛知県内の銭湯は「あいち銭湯」の一覧でご覧ください。各銭湯の設備についても記載されています。

名古屋は「サウナの聖地」というイメージもあるので、サウナ人気が銭湯利用の裾野を広げる一因になっているかもしれません。

またスーパー銭湯は庶民の娯楽として根付いていますが、銭湯は比較的低料金で利用できる施設が多く、日常的に利用しやすい魅力があります。

銭湯側もいろいろと集客の工夫をしています。2025(令和7)年7月1日より、「あいち銭湯コレクションカード」が発売されています。各銭湯にて1入浴につき1枚100円(税込)で購入することができます。第2弾も発売され、現在愛知県内の23軒の銭湯にて購入できるそうです。愛知県浴場組合事務所では、レアカードの「あいち銭湯資料館」と「あいち銭湯大使 汐川ほたて」を販売しています。

愛知県公衆浴場組合のオリジナルグッズは事務所で販売されていますが、各銭湯もオリジナルグッズを出しているところがあるそうです。名古屋市中川区の「新元湯」も、大正時代の建物の外観をデザインしたオリジナルグッズを出しています。名古屋市北区の銭湯「長喜温泉」はオリジナルグッズを販売できる通販サービスSUZURIで、おしゃれなオリジナルグッズを販売しています。

また2026(令和8)年1月から3月までは「湯朱印めぐり」という御朱印集めのようなキャンペーンも開催されたそうです。

そのほか、名古屋市西区の「八千代湯」では、小学4~6年生を対象とした「こども銭湯」を毎週火曜日と長期休みに開催しています。子どもたちが放課後に集まって過ごすことができる家庭や学校以外の居場所となるサードプレイスで、無料で利用できます。入浴も無料です。銭湯を子どもが安心して過ごせる地域の拠点にするのは、とても良い試みだと思います。こういう場所がもっと増えるといいですね。

各家庭にお風呂があるのが当たり前の現代では、高度経済成長期までのビジネスモデルが立ち行かなくなるのは仕方のないことだと思います。時代の変化に合わせて、「あえて遊びに行くところ」「リフレッシュしに行くところ」として新たな価値を打ち出す取り組みや、地域の居場所づくりが、銭湯の新たな可能性につながるのかもしれません。

広くて変わり湯も楽しめる銭湯は、気軽に行ける近場のオアシス。あなたも銭湯めぐりを趣味にしてみては?

情報

あいち銭湯資料館

住所:愛知県名古屋市中区千代田3丁目9-14 (愛知県公衆浴場業組合事務所2階)アクセス:JR中央本線・地下鉄鶴舞線「鶴舞」駅6番出口より徒歩3分
電話番号:052-322-5735 
開館時間:10:00~16:00
休館日:土日祝・年末年始・お盆 
入館料:無料
公式ページ https://aichi1010.jp/public_bathhouse_exhibit/
あいち銭湯(愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合) https://aichi1010.jp/

うえだ あさこ

うえだ あさこ

東京で生まれ育ち、名古屋に住んで20年以上になるフリーライターです。電動自転車に乗り、趣味の写真撮影を活かして取材先を回っています。音楽とアートと建築とお笑いが好きです。

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