
2025年7月6日、年に一度(毎年7月第一日曜日)に開催される杜の都・仙台市宮城野区の沿岸部の一角、蒲生干潟にある「日本一低い山」と称される日和山にて山開き登山が開催された。
実は仙台市に住みながらも日和山を知らないという人は多い。地元に住みながらそれを知らないのはもったいないことだと思う。
今年は特別ゲストが招かれ、いつもとはひと味違うかたちで参加者とともに日和山の山頂を目指して登頂した。
特別ゲストも参戦!参加者とともに山頂を目指す!



毎年、旧中野小学校(現・なかの伝承の丘)に伝わる中野小太鼓の演奏の披露が行われていたが、今年は練習できる機会がほとんどなかったため中止となった。その代わりに、主催の中野ふるさとYAMA学校とのつながりがある岩沼市吹奏楽団を招待し、日頃の練習の成果を披露していただいた。
岩沼市吹奏楽団は、10代から60代までの職業や立場問わず幅広い世代のメンバーが集い、活動をされている。1988年に名取高校の卒業生の呼びかけによって始まり、岩沼、そして、仙南地域から県内外と交流圏を拡大して多くの催し物に参加して現在に至る。今回は、金管6重奏として6人の楽団員が招かれてオープニングの演奏の音色を奏でた。
さらに、特別ゲストとして、仙台・宮城の魅力を全国全世界へ伝えることを目指している「奥州・仙台おもてなし集団・伊達武将隊」の松尾芭蕉さんも招待され、松尾さんが関心をもつ自然観察や野鳥の話についてもお話をされた。日頃から自然観察について案内をする活動もされている。
奥州・仙台おもてなし集団・伊達武将隊は2010年の夏に結成され、その年度内での活動予定であったが、カフェやバスツアーなどのイベント展開をおこなうなかで人気が高まり、継続を視野に入れ動いていたところで東日本大震災が発生した。
被災地支援も展開し、その後2020年頃からは新型コロナウイルス感染症が流行、それを乗り越えて現在に至る。なお、松尾さんは第5期として2014年から活動されているメンバーの一員である。
また、サプライズゲストとして東日本大震災を機に活動を始め、ボランティア活動にも力を入れているアイドルグループ「みちのく仙台ORI☆姫隊」も山開き登山に挑戦した。

いざ、日和山登頂!
岩沼市吹奏楽団のファンファーレ演奏とともに日和山の山頂を目指して歩き始めた。途中、安全祈願をするために高砂神社を参拝した。登山には必ず危険が伴うからだ。元々あった高砂神社は東日本大震災の津波で被災して現在の場所にあるが、多くの参拝客が立ち寄る。

そして、日和山に続々と登頂!
ついに日和山に到着し、参加者たちが日和山の登頂に挑んだ。
3メートルの山なので、5分もかからず参加した全員が無事登頂した。

今回も怪我、クマ出没や遭難することもなく無事日和山に辿り着けたのにはとても感謝したい。

日和山は標高3メートルの人工の山。1990年代に「日本一低い山」と認定されたが、その後大阪市の天保山にその座を譲った。しかし東日本大震災による津波や地盤沈下の影響で2014年に「日本一低い山」と再び称されるようになった。
かつて、蒲生地区には住居がたくさんあり4町内会ごとに交流があったものの、東日本大震災を機に居住できなくなり、集団移転を余儀なくされた。
日和山の登頂後に、「蒲生なかの郷愁館」にて蒲生地区の住民をもとにした朗読劇のDVD「みんな一緒に行きたかった」が上映された。被災者、つまり、当事者じゃないとわからない複雑な感情や深刻さが痛切に伝わるストーリー性を筆者は感じた。
さて、日和山の山開きは、来年どのような展開が繰り広げられるのか?
来年は、今年以上に新たな広がりや変化が見られる山開き登山となることを、心から願っている。
※画像はすべて筆者撮影
情報
①高砂市民センター(仙台市宮城野区)は2026年3月(予定)まで大規模修繕工事のため、日和山登頂証明書はせんだい3.11メモリアル交流館(仙台市地下鉄荒井駅(仙台市若林区)直結)にて配布。
②「みんな一緒に行きたかった」の朗読劇はYouTubeでも視聴可。