赤レンガ庁舎の足元に刻まれた北海道中の地名と再興への道のり【北海道札幌市】

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北海道旅行で札幌を訪れた朝、街を散歩するついでに、北海道を代表する建物「北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)」に足を踏み入れた。そこで最初に目を引いたのが、入口の床に敷かれたレンガだった。よく見ると、レンガで舗装された道に北海道各地の地名が刻まれている。北海道の中心地に位置する赤れんが庁舎で、足元に広がっていたのは、北海道各地の市町村名だった。初めは建物だけ見て帰ろうと思っていたが、レンガの道を追っていくと、気づけば庁舎の入口まで来てしまっていた。そこで、せっかくだからと開館直後の赤れんが庁舎に入ってみることにした。観光客でにぎわう前の館内は静かで、ゆっくりと展示に見入ることができた。

足元にひろがる「北海道」

記念に写真を撮ろうと思い、門をくぐって立ち止まると、少し進んだあたりで何人かの観光客がかがんで地面を見つめていることに気が付いた。私もつられて近づくと、何やらレンガ舗装された道の1割くらいのレンガに、文字やイラストが刻まれていた。「赤井川村」、「ゆうばり」、「長沼町」、「深川」…。彫られていた文字はおそらくどこかの地名ではないかと思い、レンガの文字を追っていくと「HAKODATE」と彫られたレンガを発見し、道内の地名が彫られているのだと感動した。ついさっきまでカメラに映る景色の一つでしかなかった床のレンガが「この名前はどんな場所なんだろう」と自然と気になってくる。

館内のスタッフに聞いてみたところ、このレンガアートは「レンガに刻む私のまち」の一環で一般社団法人北海道建設業協会と一般社団法人札幌建設業協会の創立100周年記念事業として寄贈されたものだそう。レンガの文字やイラストは道内の小学生によって書かれたもので、エネルギッシュで可愛らしい雰囲気をまとっている。

北海道は日本最大の都道府県で、広大な土地に179の市町村があり、現在の赤れんが庁舎では、道内の地域情報を紹介する展示が設けられている。赤れんが庁舎は、北海道の歴史を伝えるだけでなく、今の北海道各地の魅力を発信する場所にもなっているのだ。

北海道の歩みが見て、聞いて、わかる。

赤れんが庁舎が完成したのは1888(明治21)年。北海道庁の庁舎として建設され、札幌近郊の土を使って焼かれたレンガなど、北海道の素材も使われているそうだ。館内では、赤れんが庁舎そのものの歴史だけでなく、北海道の歩みや文化についても紹介されていた。

その中でも特に目を引いたのが、アイヌ民族の文化と歴史についての展示だった。北海道には古くからアイヌ民族が暮らし、独自の文化や言葉、自然と共生する知恵を受け継いできた歴史がある。私は、展示を通して、アイヌ民族の文化が過去のものではなく、今も受け継がれている文化であることを知った。展示の中で特に印象に残ったのが、映像に映し出された、アイヌの伝統的な舞踊だった。画面越しではあるものの、踊りや音楽から伝わってくる独特の空気に、思わず見入ってしまった。文字や映像だけではなく、実際に受け継いできた人たちの動きや音に触れることで、アイヌの文化により近づけた気がした。

一度は焼けた赤れんが庁舎

館内を歩いていると、赤れんが庁舎そのものにも長い歴史があることを知った。1909(明治42)年に起こった火災で、レンガ造りの外壁は大きな損傷を免れたものの、赤れんが庁舎は内部と屋根の焼失に見舞われたそうだ。そこで、残った外壁を利用して復旧工事が進められ、1911年(明治44)年、再び庁舎としてよみがえった。

また令和の大改修では、当時の火災の跡と考えられる、すすで黒ずんだレンガ壁も発見されたという。一度は大きな火災に遭いながらも、残ったものを生かして再び立ち上がった赤れんが庁舎の姿からは、建物そのものの強さだけではなく、この場所を残そうとしてきた人々の思いも感じられる。

赤れんが庁舎は2025年7月、令和の大改修を終えてリニューアルオープンした。改修を終えた現在の赤れんが庁舎は、明治から続く建物を保存するだけではなく、北海道の歴史や文化、道内各地の魅力を発信する場所として、新たな役割を担っている。実際に訪れてみると、そこには北海道の過去だけではなく、現在の北海道もあった。

アイヌ文化や、火災から復旧し、何度も姿を変えながら現在まで残ってきた赤れんが庁舎などが展示されている。それぞれは別の展示に見えて、北海道がどのように今の姿になったのかを建物と展示を通して少しずつ知ることができるという点で、一つの物語につながっているように感じた。

赤れんが庁舎が完成した明治から、札幌の街や北海道も、時代とともに大きく変化してきた。復興から発展へと変化を遂げていく中で、赤れんが庁舎もまた、その時代ごとの役割を担ってきた。それでも、赤れんが庁舎に込められた「北海道の歴史を残し、次の時代へつなぐ」という役割は、今も変わっていないように思う。

足元の小さな地名に気づき、館内に入って歴史や文化を知ったことで、見慣れた赤れんがの建物が少し違って見えるようになった。観光地として建物を見るだけではなく、その場所が歩んできた歴史を知って北海道のこれからを考える。赤れんが庁舎は、北海道の過去と現在、そして未来をつなぐ場所なのかもしれない。札幌を訪れた際には、建物を見上げるだけでなく、足元のレンガにも目を向けてみてほしい。

※写真は2026年8月2日筆者撮影

田口怜奈

田口怜奈

第8期ハツレポーター/長崎県在住のしまの高校生、6年前に大阪から壱岐島に移住。

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