仙台っ子が仙台城址よりも推したい展望スポット【宮城県仙台市】

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眺めなら、仙台城址も良いけれど…


「初めての都市を訪れたら、まず展望台に上りなさい」

学生時代、地理学の教授はこうおっしゃった。

高い場所から見渡すことで、海や山との距離感や家並みの広がりなど、都市のおおまかな姿をつかんでから街を歩くと、街への理解がより深まるのだそうだ。

私の暮らす宮城県仙台市には、教授の真意を知ってか知らずか、観光に来られる方が必ずと言っていいほど足を運ぶ展望台がある。

仙台城跡(別名、青葉城)という。

仙台藩祖、伊達政宗の築き上げた由緒ある城で、仙台を代表する観光スポットである。ただ残念なことに、往時を偲ぶ建物はほとんどが失われてしまった。そのため、政宗公の騎馬像の次に目を引くものと言えば(歴史愛好家の視点を別にすれば)天守台からの仙台市街からの眺めだろう。歴史に興味のない市民は、この歴史ロマンの舞台を単に「展望台」と認識している、かもしれない(あくまでも個人的な見解。仙台城址の魅力については別稿に譲りたい)。

確かに、天守台からは180度の展望が開け、奥羽山脈も望めるので「これはこれで良い」と思う。手持ちに良い写真が無かったので、ぜひ検索して確かめていただきたい。だが、近年は城址の目の前のエリアに高層のマンションが相次いで建設されるなど、見晴らしは少しずつ狭く、圧迫感のあるものになりつつある。

また、仙台城址に向かう観光循環バス「るーぷる仙台」は週末を中心に慢性的に混雑する。歴史にあまり興味がなく、眺めだけを期待して苦労して足を運ぶのだとすれば、別の良い場所をおすすめしたいのが市民としての親心だ。

屋内なのに圧倒的開放感 SS30展望フロアの魅力


ようやく本題に入る。仙台市民としてぜひともおすすめしたいのは、仙台市青葉区中央4丁目にある高層ビル「SS30(エスエス・サーティー)」最上階の展望フロアである。

まずは、屋内にして圧倒的な開放感を味わっていただきたい。地上30階、高さ128メートルは大都市圏のタワーに比べれば控えめだが、十分見ごたえのある景色を堪能できるはず。ガラス窓のほかに遮るもの無く、空と海と街並みが目に飛び込んでくる。
 


展望フロア正面から、太白区、若林区方向を望む。


あらかじめお断りしておくと、展望できるのは街の中心部とは逆方向なので、これと言って観光名所が見えたりはしない。それでも、広い空と太平洋の水平線を見ると心が洗われる。街並みの中央を流れゆくのは広瀬川。こんもりとした緑は大年寺山で、頂上のテレビ塔は東北新幹線下りの車窓で地元の人たちが「ああ、仙台に帰ってきたな」と実感するシンボルとしてお馴染みだ。家並みの向こうに広がる田園風景も四季折々で表情を変える。
 


東方向は少し視界が狭い。それでも、遠くには牡鹿半島、手前にはプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスのホームスタジアムや、JR仙台駅を発着する新幹線を眺めることができる。
 


そして西方向。右手の遠くに見えるのは蔵王連峰で、冬から春にかけての眺めはなかなかのものだ。

 


「なーんだ、大したものは見えないじゃないか!」と思われた方には申し訳ないとしか言いようがない。ただ、冒頭の地理学の教授のように「都市の姿をつかみたい」という方には大いにオススメである。

あらためて魅力を強調させていただきたい。

この展望フロアは、JR仙台駅から徒歩10分ほどの近さにあり、入場無料である。ならば、混んでいるかと言うと、花火大会やクリスマスイブなど一部の日や時間帯を除けば、基本的にとても空いている。デートスポットとしてもそこまでメジャーでは無い!と思う。そして何より、夏涼しく冬暖かい屋内であり、トイレも完備しているので、心ゆくまで景色を堪能できる。

仙台城址とは違った視点で、ゆっくりのんびり仙台のパノラマを楽しみたい方に、断然おすすめのスポットである。

「ノリに乗っていた」仙台を象徴するヒーロー


SS30は、仙台市内のビルの中でも、かなり近未来的なデザインをしている。外観もさることながら、展望フロアをはじめとして、内装はかなりゴージャスだ。地方都市のオフィスビルとしては似つかわしくないように思える。実際、近年に完成した高層ビルは箱型でシンプルなデザインのものが多い、と思う。

それもそのはず、SS30が完成したのは1989(平成元)年のことだ。日本がバブル景気に沸いていただけでなく、この年、仙台市は周辺市町と合併するなどして政令指定都市に移行。人口も右肩上がりの急増を続けていた。そう、仙台の街が一番「ノリに乗っていた」時代の建築なのだ。


私はSS30完成の翌年、このビルが見える丘の街に生まれた。物心ついた頃の仙台は、平成不況の影はありながらも、人口がもうすぐ100万を超えようかというところ。発展の勢いは続いていた。幼かった私は、このバブリーなシンボルタワーをまるで特撮ヒーローかのように崇め、伸びゆく故郷と重ね合わせて誇りに思ってきた。

完成から30年を過ぎ、ともすれば前時代の遺産のようにも見えてしまうSS30。だが私にとっては今でも、明るい未来の夢を見せてくれた存在として、とても思い入れ深いヒーローである。



SS30 宮城県仙台市青葉区中央4丁目6番1号

SS30公式サイト http://www.ss30.jp/

佐々木佳

佐々木佳

宮城県仙台市

第4期ハツレポーター

宮城県仙台市

好きな科目は「地理」の元新聞記者です。各地を旅するのが生きがいで、「もし、ここで暮らすとしたら…」を想像しながら歩いています。ローカルの魅力と出会い、実際に体感する旅のお手伝いができれば嬉しいです!
関心のあるローカリティ: 方言、商店街、交通、お酒と肴、昔話、工芸など