ブラジル発、「ミナスチーズ」を日本から世界へ【群馬県大泉町】

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〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜

「世界で活躍し、多くの人に日本のチーズを広めたい」。

来日して約30年、ブラジル出身のチーズ職人ビルマル・ファリアスさんは、「合同会社 ビルミルクチーズ工房」を立ち上げ、選び抜いた良質な生乳で作る母国生まれの「ミナスチーズ」を日本全国で発信中。

苦労と努力、「いいものをつくりたい」という情熱で確立してきたビルミルクブランドは、世界に向けて、新たな挑戦へと進んでいます。

懐かしのブラジルの味を日本で

幼少の頃、料理上手なおばあちゃんと一緒に生活をしたビルマルさん。おばあちゃんの手作りミナスチーズを食べて育ち、ブラジルの専門学校で3年間、チーズ・乳製品製造の技術を学び、29歳で来日。義父の出身地、富山県の木材会社や弁当屋で働く傍ら、懐かしい故郷の味ミナスチーズを再現し、家族や友人に振る舞っていたビルマルさん。この時「ミナスチーズを自分の仕事に生かそう」と決心したのでした。

群馬県邑楽(おうら)郡大泉町にある「合同会社ビルミルクチーズ工房」

工房の設立は2004年。チーズ製造の設備導入には数年を要し、「資金面などで苦労が多かった」と当時を語るビルマルさん。現地から調達した専用機器により、事業が軌道に乗り始めます。独特な食感と優しいミルクの味わいは、イベント出店や移動販売で大評判になり「富山チーズ」と命名され、人気のお土産品になりました。

「よいもの」へのこだわりが人気商品を生み出す

低温殺菌後、生乳を固体と乳清(ホエー)に分ける。完成まで19時間

2012年、より大きな規模で事業を続けたいというビルマルさんの強い意志に、転機が訪れます。それは群馬県太田市の「松井牧場」との運命的な出会いでした。

囲いの中で自由に歩く牛の飼育環境から「よりよい品質の牛乳をたくさん生み出せる」との思いに至り、チーズ・乳製品の共同開発研究・試験製造に乗り出します。当時50歳のビルマルさんの、新しい味「ぐんままついチーズ」を生み出す大きな原動力になったのです。

そして、2020年からは吾妻郡長野原町(あがつまぐんながのはらまち)にある「有限会社豊田乳業」の生乳を週3回調達し、生乳にこだわった商品開発をしています。良質な生乳は、食べさせるエサが違うと話すビルマルさん。複数業者の生乳でチーズを試作し食べ比べ、納得のいく味にたどり着きました。

通訳のアベさんは「彼は、とても頑張り屋。忙しくてもお客様にいつもよいものを提供しています。よい商品に自信を持っているのです」と話します。

母国の味を守りつつ、続ける新しい挑戦

スタートは朝6時 毎日食べるミナスチーズが元気の源でもある

ミナスチーズは様々な料理で活躍するそうで、そのままのチーズはもちろんのこと、フライパンで素焼きにしたり、お豆腐代わりに味噌汁の具としての使い方や、しゃぶしゃぶなどもビルマルさんのおすすめの食べ方

チーズ以外にも2020年発売の「ホエー50%配合飲むヨーグルト」やパンにたっぷりのせて美味しい「クリーム・キャラメル」などは人気商品。生乳らしさがしっかり感じられ、朝の食卓にピッタリです。素材を活かした商品を次々と創るビルマルさんは、「ホエーにお酒や大豆を使ったドリンクを作ってみたい」とアイデアは尽きません。
2016年開催の「ジャパンチーズアワード」では初エントリーで銀賞を受賞。そしてその後も数回の受賞経験をし、2021年開催の第13回「ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテスト」では優秀賞を受賞。自身のチーズブランドが着実に評価されつつある今日。新しい熟成チーズ作りと世界大会への出品へも意欲が高く、つねに挑戦し続けるビルマルさんは「この仕事がとても好きだから」と明るい口調で、信念を語ります。

「美味しくて安心、健康に良く、食べて嬉しくなる商品をいっぱい出したい。そのためにも、従業員を増やし、会社を大きくする。今のところ故郷に戻るつもりはないから、日本で成功したい」。

海を渡った母国ブラジルの味。ビルマルさんのチーズ大航海は、日本各地から始まり、世界を巡り、多くの人たちに驚きと新たな発見を呼び起こすことでしょう。

田畑詞子

田畑詞子

秋田県秋田市

第1期ハツレポーター

1978年秋田県生まれ。清泉女子大学文学部英語英文学科卒。東京で就職後、いったん帰秋。2017年、横浜在住時にライター養成講座に通い、その後地元秋田でWeb記事の取材・執筆活動に携わるようになる。
日々の暮らしをブログに綴ったり、親しい仲間や縁遠くなった友人へ手書きのZINEを書いて送ったりと、書くことが好き。エッセイや小説へも関心がある。