日本の経済成長率が低くとどまっているなか、食品や家電、衣料品、化粧品など、小売業者や卸業者が独自で開発して販売するPB(プライベートブランド)が近年注目されています。価格や利益率を自社でコントロールできるため同品質のメーカー品よりもリーズナブルに供給でき、現在の消費者心理にマッチしていることが理由のひとつとされています。
その変化する消費者ニーズを先取りし、現在、生活家電・美容品などのブランドを取り扱うメーカーが、創業27年目を迎え宮城県大河原町に本社を構えるイー・エム・エー株式会社(以下、イー・エム・エー)です。
PBといえば大手メーカーを思い浮かべることも多いと思いますが、イー・エム・エーの会社規模は現在、社員14人(パート含む)。あえて東北地方での創業に至った経緯や事業に対する思いなどを、創業当初から代表取締役社長とともに会社を切り盛りしてきた専務取締役の村上さんからお話しを伺いしました。
目次
生活家電から化粧品まで、幅広いブランドを展開
イー・エム・エーは、現在PBの輸入、企画、販売までを行うメーカー兼商社として、生活家電ブランド「SunRuck」、美容品ブランド「FASCINATEBEAUTY」を中心に事業を展開し、リーズナブルながらもクオリティーの高い商品を販売しています。
Yahoo!ショッピング、Amazon、楽天市場などのオンラインショップ上に出店し、楽天市場では充実したアフターサービスが支持され「月間優良ショップ」を複数回受賞しています。
さまざまな商品のなかでもペルチェ式 48リットル 1ドア電子冷蔵庫「冷庫さん」は、コンパクトさと優れた静穏性により販売が好調で、一般消費者以外にもホテルや病院、施設などに購入されています。
「東北の人材を活用し、地域に貢献したい」宮城県で創業
イー・エム・エーは、「地元で成長する会社を増やして、宮城県や東北の人材をたくさん活用して地域に貢献したい」という思いで、1997年に宮城県白石市で創業しました。創業当初より、同社はほぼ東北のメンバーで運営をしています。
当初は携帯電話などの移動体通信機器(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)の代理店販売業を行っていましたが、2000年に現在の社名に変更登記し、宮城県内企業に先駆けてECショッピング事業を開始しました。多数の在庫品を保管するため、本店を現在の場所に移したのもこの頃でした。
2000年といえば楽天市場の誕生初期で、まだまだネット販売の社会的認知は低かったのですが、さまざまな商品を仕入れてオークションサイトを中心に展開し、徐々にECショッピングサイトにも販路を拡大した結果、09年には宮城県 通信販売業売上高 第1位 になりました。
「お客様に独自の商品を」プライベートブランドの展開を開始
そんな中、仕入販売だけでは価格競争に巻き込まれてしまうため、「お客様に独自の商品を展開したい」という思いから、07年頃にPBの企画・開発などを開始しました。
そしてPB商品として地上デジタル放送への移行期である09年に発売したコンパクトなテレビ「digi MOTION DT-2201K」が、Yahoo!ショッピングにて液晶テレビ部門販売台数第1位を獲得。同時にサポートセンターも開設するなど、事業拡大を行ってきました。
PBの展開について「当初は、まずは知り合いから知り合いのツテをたどって仕入れ先を探して、そこでいい商品に出会えて、商品開発をしてきました。当然サポートもお客様に必要になりますので、サポートセンターを作り修理できるような業務体制に変えていきました」と、村上さん。
さらに「現在、さまざまな商品展開の中でも小型家電や軽家電が中心で、小型家電メーカーでありたいという強い意思があります。そのため、しっかりとしたアフターサポートができるようにして携わってきました」と、商品のリーズナブルさだけではなく、お客さまに対し真摯に責任を持って事業に取り組んでいます。
事業展開について、「最初は売り上げが少ない状況から最大10億くらいはあったかと思いますが、11年の東日本大震災やコロナの影響などもあり、本当に紆余曲折がありました」と村上さんは振り返ります。その被災した経験から防災への意識が高まり、プライベートテントやポータブル水洗トイレなどの防災用品も力を入れて展開しているとのことでした。
ベンチャー企業とのジョインで、更なるシナジー効果を
それらを乗り越えた23年に、販売支援とM&Aの2事業を展開している株式会社ACROVEとジョイン。「スピード感ある企業さまと一緒にシナジー効果を持たせていただいたら、より発展するんじゃないかということで期待しています」と、村上さん。以前は仕入れ、販売など部署のみで共有していたことが、ジョイン後は全体の状況がわかるようになったと、その効果を感じています。
「イー・エム・エーで一緒に創業するチャンスをいただいたことから、なんとかして会社を大きくしたいという夢がありまして、『10年で上場したいね』と話していました。そこから色々な業務転換を経て厳しい時代もありましたが、それでもなんとかしたいという思いで続けてきました。昨年から上場を目指している親会社にジョインし、貴重な体験をさせていただいて、これからすごく期待することが大きいですね」。
「誰と何をやりたいのか」を軸に、将来を展望
村上さんは、起業して長きに渡り事業を続けている理由として、「何の仕事でもお金だけだったらなんでもいいと思うんですけど、 そうではなくて、誰と一緒にそれをやりたいのかが大事だと思います。何を叶えたいのかっていうところを強く思っていただける人たちと一緒にやれると、プラスに転じて行きます」と、語ります。
さらに今後の目標として、「PB商品ということで、よりお客様に時短や便利さなどを感じていただき、長くご愛用いただけるような商品を目指しています。データに基づいて、もっとこういった形にすれば、さらにお客様により良く使っていただけるのではないかと、日々商品開発に取り組んでおりますので、たくさんの方に知っていただいて、ご満足いただけるような商品を世に出していきたいなと思っております」と、語ってくれました。
聞き手:中野宏一、執筆:森川淳元