起業か我慢か。働くことの「二元論」を破壊する革命の書 【東京都港区】

4 min 143 views

「昨日は、何時間生きていましたか。」

この強烈な問いを突きつけられた時、あなたは胸を張って答えられるだろうか。1985年のパルコのCMで投げかけられたこの言葉は、働き方改革やコンプライアンスが叫ばれる現代において、むしろ深刻さを増している。起きている時間の大部分を占めるはずの「仕事」の時間が、単なる生活費を得るための苦行になってはいないだろうか。

苦しい現実社会から別の世界へ転生し、特別な能力を持つ主人公として活躍する。そんな日本発の「異世界転生(なろう系)」という物語のジャンルが、今、世界中で爆発的な人気を集めているという。

現実の会社で心が死んでしまうくらいなら、いっそトラックにひかれてでも「自分が主人公になれる別の世界」へ逃げ出したい。そんな物語がこれほど現代でもてはやされるのは、ぼくたちがこの現実世界において、生きる実感を完全に奪われているからに他ならない。

なぜ、ぼくたちはこれほどまでに現実の仕事に絶望し、息苦しさを感じているのか。その理由は大きく二つあると、ぼくは考えている。

素晴らしい理念と、心を殺す現場の乖離

一つ目の理由は、企業がどんなに素晴らしい理念を掲げていても、現場のリアルがまったくその通りに動いていないという残酷な現実だ。

かつてぼくが身を置いたアパレルメーカーや外資系ホテルの現場は、立派に掲げられた企業理念とは裏腹に、理不尽な圧力で疲弊しきっていた。

「それぞれの働き方を尊重し、応援する」という理念を掲げていながら、店舗では店長が「独身者なら土日も働けるだろう」と当たり前のごとく出勤を求める。「男なら上を目指せ!」と、独りよがりな激励を押し付ける。

「お客様もスタッフも紳士淑女として大切に扱います」というクレド(信条)を掲げながらも、クレームを恐れるリーダーが常にピリピリして、少しのミスでスタッフを責め立てる。

そんなことが日常茶飯事だった。現場のリーダーたちも決して悪人ではない。「お客様を幸せにしたい」という本来の目的はかすみ、「自分が怒られたくない、責められたくない」という孤独と不安に支配される。そして、いつしか「ルールを守ること」自体が目的化してしまっているのだ。

「起業」か「我慢」か。ぼくたちを縛る呪いの二元論

そして二つ目の理由。これこそが、現代人を最も深く絶望させている根本的な原因だ。それは、企業の理念と「自分の本当にやりたいこと(自分の幸せ=フラッグ)」が、まったくつながっていないという事実である。

多くの人は、会社という巨大な組織の中で自己実現を果たすことなど、とうの昔に諦めているのかもしれない。だからこそ、ぼくたちは無意識のうちに、ある極端で残酷な「二元論」に縛り付けられているのだ。

「会社を辞めて起業し、リスクを背負って自分のやりたいことをやるか」それとも、「企業に勤め続けるなら、やりたいことは我慢し、定年後の楽しみに取っておくか」

独立して夢を追うか、組織のコマとして耐え忍ぶか。このステレオタイプな二元論が社会の常識としてまかり通っているからこそ、ぼくたちは「会社員である以上、自分の人生の主人公にはなれない」と思い込まされている。それはまるで、映画『マトリックス』の中で、都合よくエネルギーを吸い取られるために、カプセルの中で眠らされているような状態だ。

相手のエネルギーに便乗し、共に動かす喜び

だが、本当に組織の中では自己実現は不可能なのだろうか。ぼくには忘れられない原体験がある。地元・香川県高松市にある、かつて経営破綻して動かなくなった屋島ケーブル。それを「どうしても復活させたい」という、ふもとの旅館の女将さんの情熱に出会った時のことだ。

最初は彼女の熱量に呼応しただけだった。だが、気づけばそれは「地元を盛り上げたい」というぼく自身の猛烈な情熱へと変わり、行政や住民など多様な組織を巻き込んだ大きなフェス(屋島テーブルフェスティバル)へと発展していった。そこに戦略や個人的な損得勘定など一切ない。ぼくはただ、相手のエネルギーのわくわくに深く共鳴し、その熱量を一緒に動かしていくことそのものに、無上の幸せを感じていたのだ。

ここで強調しておきたいのは、このフェスを主催した時、ぼくは起業家でもなければ、地元の名士でもない。地元企業で働く一介の「派遣社員」に過ぎなかったという事実だ。

自分のやりたいこと(フラッグ)とは、必ずしも「起業してゼロから一人で成し遂げること」ではない。誰かの熱量や、組織の目指す方向と自分の喜びが重なり合った時。たとえ一人の派遣社員であっても、人は爆発的なエネルギーを発揮し、現実世界を動かす主人公になれる可能性があるのだ。

二元論を破壊し、現実世界に革命を起こすプロジェクト

今、ぼくの手元にとてつもない熱量を放つ一冊の本の原稿がある。あなたが読んでいるこの独立系報道機関「ローカリティ」を運営する中野宏一氏と丸山夏名美氏が、200社以上の現場を歩き、泥臭い生きざまに触れて涙しながら書き上げた『FLAG IGNITION(フラッグ・イグニッション)』だ。

この泥臭い原稿を読んだ時、ぼくはあの屋島の女将さんに出会った時とまったく同じ、「思わず一緒に動かしたくなるような狂気と熱」を感じて震えた。一介の派遣社員だったぼくが、女将さんの熱に便乗して主人公になれたように、この本には、誰もが自分の現場で主人公に生まれ変わるための「着火剤」が詰め込まれている。

「起業するか、我慢するか」という現代のステレオタイプな二元論に真っ向から疑問を投げかけ、それを破壊するための「革命の書」なのだ。

組織のルールや同調圧力に苦しんでいるのなら、一人で戦う必要はない。未完成な自分の弱さを認め、「ぼくにはこれができません。助けてほしいんです」と開示することで、相手の懐に飛び込めばいい。本を手にする前に、まずは明日、身近な誰かにこの「小さな弱さ」を見せることから始めてみてほしい。それこそが、息苦しいカプセルを内側から壊し、会社というフィールドを「自分の人生の舞台」へと書き換える第一歩になるのだから。

だからこそ、同じように現場で息苦しさを感じているあなたと、一緒に考えてみたい問いがある。会社員である以上、自己実現は諦めなければならないというその常識は、本当に「正しい」のだろうか?

我慢を美徳とし、定年後に夢を先送りする人生は、もう終わりにしないか。異世界に行かなくても、起業という極端なリスクを背負わなくても、ぼくたちはこの現実の組織の中で、自分の人生の主人公になれるはずだ。

現在、この本の出版に向けたクラウドファンディングが立ち上がっている。最初から「自分のやりたいこと(フラッグ)」なんて、立派に掲げていなくてもいい。かつてのぼくが女将さんの熱量に飛び込んだように、まずはこのクラウドファンディングという「誰かの熱量」に便乗し、一緒にこの大きな渦を巻き起こすプロセスを楽しんでみないか。

ぼくは完成されたプロジェクトへの「支援者」を求めているのではない。共にこの息苦しい現実をハックし、最高に面白い場所へと書き換えていく「共犯者」を探しているのだ。

現場からの小さな火種が、共感の連鎖を生み、やがて社会全体を巻き込む大きな熱に変わっていく。さあ、今度はぼくたちが一緒に、この現実世界を最高に面白い場所に書き換える番だ。誰か一緒に、この熱量に乗っかってみないか。

情報

▼日本中の働く人の心に火を灯す。共に現実をハックする「共犯者」への入り口
「IGNITION JAPAN」 人が自ら考え、動き、挑戦したくなる社会をつくる

 – CAMPFIRE] (https://camp-fire.jp/projects/962218/view?srsltid=AU7gw4VhYIGfxFx0rvxyXk6c3hvQjZzg8zbzwSW_fN_9l_BVRHVCcoFF)

松井創

松井創

コミュニティ設計とムーブメントの専門家。著書『人はなぜコミュニティをつくるのか』。主宰者なしでも育つ自走コミュニティを多数創出。「世界観で仲間を集める」世界観ムーブメント提唱。角打ちマイブランド展開中。ADHD特性を持ち“苦手をゲーム化”ボドゲで脳の回路を書き換える力を見出す。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です