自然の恵みをあなたならどう使う?町が丸ごとアクティビティ。遊びも暮らしもあなた次第!【秋田県藤里町 】

4 min 339 views

あきたの物語」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

秋田県の北部にある藤里町は、青森県との県境に位置し、県境一帯には標高1000mを超える山並みが連なる白神山地があり、山にひっそりと包まれたような自然にあふれる町です。

いわば県境の行き止まりのようなところに位置する藤里町は、現在深刻な高齢化と人口減少に直面しています。

そんな町に、東京との二拠点生活の一拠点として移り住み、藤里町を楽しみながら東京での事業も続けることをライフワークとする男性がいます。

古くから町の人々に親しまれた「淡路商店」という店舗兼住宅を活用し「ゲストハウスあわじ商店」をオープンした、佐々木規之(ささき・のりゆき)さんのストーリーを紹介します。

直感でイイ!と感じた藤里町

もともと秋田県大館市出身の佐々木さん。進学や就職で秋田を離れ東京で10年ほど暮らしていましたが、何か新しいことを始めたいと思い、友人と共に秋田に移住を考え始めました。

どうせ住むなら思い切り田舎の方がいいと秋田県内を探します。いくつかの候補のうち、山と川が身近にあり、そして海へ行くにも遠くない、佐々木さんの直感で「一番の田舎」でイイ!と思ったのが藤里町だったそうです。

「淡路商店」との出会い

※左側の建物がオープン前のゲストハウスあわじ商店。昭和の賑わいを思い起こさせる店構え。

佐々木さんは藤里町で物件を探すうち、2階建てで延べ床面積約380平方メートルという広さの元店舗兼住宅の物件に出会います。

2階には30畳もの広さの和室があり、「こんなところを買ったら何に使うんだろ」と最初は思った佐々木さんでしたが、最終的にその広さに魅了され契約することにしました。

※2階廊下。右側に和室が3室並ぶ。左側には洋室が数室ある。

※もともと地元の名家だったという名残が家の随所にうかがい知れる

今後の展開をよく決めずに行動を始めたものの、この地域に人がまだたくさん住んでいた数十年前までは、お年寄りから子供までが集まるシンボル的な存在だった「淡路商店」に暮らすうちに、この場所に友人を呼んだり、田舎暮らしを体験してもらおうと思うようになりました。

そこから、みんなに愛された「淡路商店」という名前はそのままに、新しい形で人を呼び込む「ゲストハウスあわじ商店」としてこの家を蘇らせることを決めたと言います。

「ここは何もない」地元の人の言葉に気づいた。「ここには全部ある」

※あわじ商店近くの「水神様の大ケヤキ」

佐々木さんに藤里町の魅力を語らせると話が止まりません。

「春は山菜採り、夏は鮎釣り、岩魚のつかみ取り、温泉の源泉を汲んできてみんなで足湯をすることもできる。秋は紅葉、きのこの栽培や収穫の体験。田植え、稲刈りなどお米の収穫を楽しむイベント、冬には雪の上を快適に歩けるスノーシューを使った散策イベント、空気が澄んだ時期には星がとてもきれいで、星空を見るツアーもできるんです」

季節ごとに違ったアクティビティの企画がどんどん湧いてきます。

ここに住む地域の人たちは口を揃えて「ここには何もない」と言います。その言葉を受けて改めてこの地域について考えた佐々木さんは、「何にもない」じゃない、自分の欲しいものは「ここに全部ある」と気づいたそうです。

世界でもトップクラスの深刻な高齢化率の藤里町

藤里町の人口構成は明らかに高齢者に偏っています。

秋田県が発表した令和5年度老人月間関係資料によると、秋田県で高齢化がいちばん進んでいる上小阿仁村(かみこあにむら)に次いで2番目の藤里町。高齢化率が54%にも達している地域なのです。

世界一の高齢社会といわれる日本。藤里町は必然的に、世界的にトップクラスの高齢化が進む地域ということになります。

いい意味でも悪い意味でももったいない場所。だからこそ、「ゲストハウスあわじ商店」に来てほしい。

※2階にある洋室の一室

そんな高齢化が進む町に住む人たちはやはり、地元を良い場所と気づいていないことが多いそうです。

「地元の人たちが、当たり前すぎてその魅力に気づいていないところがもったいない。そして県外の人はもとより、県内の人にまでも『藤里ってどこにあるの?』といわれるくらい、知名度が低すぎるのがもったいないんです」

佐々木さんは、地域でシンボル的存在だった「淡路商店」を「ゲストハウスあわじ商店」として再び人の集まる場所にすることで、多くの人に藤里町の魅力に気づいてもらいたいと話します。

藤里町が持つ魅力をどんなふうに活用できるか、一緒に考えてくれる人とつながりたい

東京の友人を藤里町へ招待した際、町に近づくにつれ自然がどんどん深まる車中からの景色に、友人が「俺どこに連れて行かれるの?大丈夫なの?」と不安げに言ったそうです。

そんな自然がモリモリの魅力が満載の藤里町で、「ここで何ができるのかを一緒に考えてくれる人とつながりたい」と佐々木さん。

そして、「若い人が藤里町で事業を起こし、好きなことをして暮らす人を増やしたい!」と、ITの技術が進化し、住む場所を選ばず働く選択肢が増えてきている昨今だからこそ、自然を大いに楽しみながらこの町に関わる人がどんどん増えてほしいと話します。

※佐々木さんが自作した囲炉裏。囲炉裏を囲んで地域の人達とゲストハウスに来てくれる人とのふれあいも密にできる場にしていきたいと話します

※囲炉裏の説明をする佐々木さん

また、町の活性化について日々思案をめぐらす佐々木さんたちに「あなたたちが来てくれてよかった」と言ってくれる地域の人も増え、山菜や野菜をもらうなどの交流も生まれているそうです。

「この土地をよく知る地域の人達と、ゲストハウスに来てくれる人とのふれあいもできる場にし、藤里町の新しい楽しみ方をつくっていきたい」と佐々木さんは話します。

まずはオンラインで。そして藤里町を実際に見に来てほしい

藤里町は白神山地のふもとであることから、登山などの目的があって訪れる以外は外から訪れる人があまりいない地域です。そんな場所にどうやったら人が集まるのか、それが大きな課題です。

佐々木さんは個人事業でITのシステム開発の仕事をしており、月のうち一週間ほどを東京で過ごしています。佐々木さん自らが藤里町を楽しみながら事業も続けることをライフワークとしています。

そんな生活に興味のある人に、まずはオンラインで繋がって、「自然の恵みをフル活用してどんなアクティビティができるのかをイメージしてもらいたい。そして、企画に携わってほしい。さらには企画したイベントに実際に足を運んでもらいたい」と佐々木さん。

そんな佐々木さんの柔らかい発想と、暮らしぶり、そして人懐っこい笑顔に会いにまずはオンラインへ、そして実際に藤里町へも訪れてみてください。

季節ごとに変化する自然の恵みをフル活用し、町が丸ごと「アクティビティ」になる藤里町。町を遊びに活かすも暮らしに活かすもあなた次第です。

可能性に満ちた未開の地はあなたに生きるエネルギーを与えてくれるに違いありません。

※写真は全て筆者撮影 2023年7月10日 

現在、佐々木さんと共に、藤里のアクティビティを楽しみたいという方を募集しています

2024年1月20日開催 ”あきたの物語”プロジェクト 〜ゲストハウスあわじ商店・冬のモニターツアー

https://monogatari-fujisato.peatix.com/

オンライン交流

本イベントの前に、あわじ商店代表の佐々木規之さんとのオンライン交流会を実施いたします。

日程 2023年11月29日 20:00 〜 21:30頃まで
内容 あわじ商店館内ツアー・冬季アクティビティのアイデア会議 など
場所 オンライン(Zoomを使用いたします)

▼お気軽にご参加ください!▼

https://fb.me/e/2W1Bfholk

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

FOLLOW

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です