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この奇妙な形をした謎の物体、なんとあの忍者のマキビシの元になったと言われる
『菱(ヒシ)』という水生植物に生る実で、各地の沼や池に自生している。
ヒシの実は高強度な殻とトゲを持ち、当然のことながら踏むと非常に痛い。
筆者もサンダルで踏んでしまったことがあり、何度か痛い思いをした経験を持つ。
福島県にある猪苗代湖という湖では、毎年ヒシが湖畔沿いに大量発生する。秋になると枯れたヒシの水草が腐敗し、湖に留まることから水質悪化の一因として、世間的には厄介者扱いされている。
ヒシは湖面を覆いつくすように葉を広げる。その繁殖力の強さから古来より戦国武将の家紋にも用いられるなど、思い返すとヒシをモチーフにしたロゴや名前に聞き覚えがあるのではないだろうか。
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そんなヒシの実だが、殻を剥くと食べることができるということを皆さんご存知だろうか?
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地元のお年寄りにお話をお伺いすると、昔はよく食べていたという話をよく耳にする。
現在多くの人々は食用という認識はおろか、ヒシの実の存在すら知らないという人も増えてきているように感じる。
ヒシの実の外皮にはポリフェノールが豊富に含まれており、血糖値上昇の抑制等生活習慣病予防の効果も期待できるという論文も発表されている。
猪苗代湖では増殖を続けるヒシを駆除しようと、ヒシ刈りボランティアやヒシ刈り船が導入され、毎年何十トンものヒシが回収され捨てられている。
しかし、近年ではそんなヒシの実を逆に観光資源として利活用し、ヒシの増殖を抑えようという団体や人々がいる。筆者もその1人で、2021年の9月20日には『猪苗代湖産ヒシの実料理勉強会』を開催した。
今回の勉強会では、ペースト状にしたヒシの実を使用し濃厚なカレーを地元の飲食店に調理して頂き、参加者からとても好評だった。一般的な食べ方としては、沸騰したお湯で殻ごと茹でてから、殻を剥きフライパンで炒め物として味付けをして食べると、ほくほくした栗のようなナッツ系のような食感を味わうことができる。
今年度からは、試験的に『ヒシの実収穫体験』として水環境について学びながら、収穫した実を食すという体験を実施し、次年度からは多くの方に体験して頂きたいと考えている。
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現在筆者は、ヒシの実を活用したお茶の商品開発を進めており、『猪苗代湖産ヒシ茶』として今年度中の販売を目指している。売上の一部は、猪苗代湖周辺の水環境保全活動に取り組む団体に対し、寄付をおこなう予定だ。
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猪苗代湖では、ヒシの実の殻が無数に落ちている浜がある。個体によって形が違うので、訪れた際は是非探してみてほしい。
※追記:ひし茶が販売開始されました!