長野県伊那市の常福寺では、地元の隠れた英雄・宗良親王(むねよししんのう)を供養・顕彰する法要を行っている。春、秋と年2回実施している。今年は地元の人のみで行う見込みだが、例年は地元住民や宗良が生きた南北朝時代のファンが20人以上参列する。宗良は「南北朝時代の正岡子規」というような人で、優れた歌人だった。
常福寺の松田泰俊住職は常々、宗良は「平和の希求者だったのではないか」と話す。日本が真っ二つに割れた南北朝時代は戦国時代以上に戦争が多く、身分の上下も入り乱れたカオスな時代。そんな世の中で宗良は将軍にも任じられて戦ったが、自然の穏やかな情景を詠んだ作品が多い。好戦的な親兄弟と比べてもある意味気弱で優しい皇子だった。
例年5月頃に行われる春の法要では、寺のお堂で宗良を称えるオリジナルの歌を唱和し、参列者同士の懇談の場も設けられる。本記事の筆者も、2回ほど宗良の講座をさせてもらったことがある。9月頃行われる秋の法要では、宗良の墓とも伝わる「御山」と呼ばれる小山で経をあげる。冬は氷点下5度前後が当たり前の山間部に常福寺はある。周辺地域では少子高齢化が加速しているが、地元に根付く歴史が絶えないことを信じている。