あの秋田名物が缶詰に! きりたんぽと缶詰のプロが作った「きりたんぽの缶詰」【秋田県大仙市】

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缶詰にする必要あるの?

秋田県民である筆者は、失礼ながら最初はそう思った。

しかし、食べてみて印象が変わった。

『きりたんぽに使用しているお米は自家栽培のあきたこまち。きりたんぽと比内地鶏は丁寧に炭火で焼いている。マイタケ、ゴボウ、ネギ、コンニャクなど大ぶりの定番具材が満載。きりたんぽはスープに浸っているにもかかわらず崩れていない。表面はとろり中身はもちもちで、具材にはスープがよく染み込んでいる――』

秋田県民ならおなじみの、“ちょっと煮込んだきりたんぽ鍋”のイメージそのものだ。

香り付けに刻みネギやセリなどをトッピングすると、よりおいしくいただける。

 

 

金額は1,100円(税込)と、普通の缶詰に比べると少しお高いけれど、それほどの手間とおいしさが詰まっている。温めるだけで、どんぶり1杯分の秋田が味わえる逸品だ。

きりたんぽを食べたことがある人も、ない人も、一度は試してみてほしい。

「きりたんぽの缶詰」が生まれるまでの経緯は長い。

秋田県大仙市協和にある「(有)合貝食品(あわせがいしょくひん)」は、昭和63年に缶詰加工所、味噌製造販売所として創業した。もともとこの地域は農家が多く、作物が採れない冬場のために、山菜やきのこ、芋類などを保存食とする缶詰作りが盛んだったため、持ち込みの食材を缶詰に加工できる、地域には欠かせない存在だった。しかし缶詰需要は季節に左右されるため、経営を安定させる必要があり、一年を通して販売できる商品を考えた結果、自家栽培米で作れる、きりたんぽの製造販売に着手する。

当初から、炭火で焼くことをこだわりとし、パック詰めのきりたんぽの販売を始めた。袋を開けた時の、炭火に炙られたきりたんぽの香りが人気となり、あちこちのスーパーなどに置かれるようになった。

その後、野菜や肉などの具材がセットになった「きりたんぽセット」の販売も開始。お歳暮や家族のイベントごとのシーズンなどに、飛ぶように売れた。

しかし、ここ数年、核家族の増加の影響からか、徐々に大人数用セットの販売数が減り、少人数用が求められるようになった。更に、「1人前はないの?」などとも言われるようになったそうだ。

そこで、1人前のきりたんぽを考えた。

考えに考えに考えた結果、「缶詰屋なんだから、開けてすぐ1食分が食べられる商品があったら最高じゃないか?」という結論に達し、そこからスープに浸った状態でも溶けないきりたんぽの研究が始まった。

きりたんぽのプロとして、米の炊き加減や穴の大きさを、缶詰のプロとして、缶詰にする際の加熱の方法(企業秘密!)などを、数年にわたって試行錯誤した。

きりたんぽと缶詰、双方のプロとしての知識を結集し、完成したのがこの商品だ。

缶詰だからこそ、常温保存で賞味期限は1年と長く、日持ちを気にしない贈答品に良し、お土産に良し。そのままいただけるので、緊急時の非常食にもオススメだ。

「いつも手探り、工夫が全て。でも、何かを作るために考えているときがいちばん楽しい」

いつも笑顔、我が地元の商工会の太陽「合貝食品のおかあさん」、渡邊正子(わたなべ・まさこ)さんは笑いながら話してくれた。

 

 

現在体調を崩して入院中の、夫であり前社長である恭悦(きょうえつ)さんと、息子で社長の智恭(ともやす)さんとともに、数々の商品を開発してきた。

商品は、全て『自ら栽培できるもの』や『地元のもの』で作るのがこだわり。スープカレーにだまこもち(白米を潰して丸めたもの)を入れた『スープカレーだまこ』や、地元の唐松神社(からまつじんじゃ)から縁結びのエールがあるかも!と名付けた『あま酒神社エール(ジンジャーエール)』などくすっと笑えるネーミングの商品も、全て渡邊さんの考案だ。

 

 

きりたんぽはもちろん、渡邊さんの楽しいアイデアの魔法をかけられた地元の産物たちを、是非とも味わってみてほしい。

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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