「ヤッショ、マカショ!」 山形移住3年目が感じた、新たな花笠まつりの熱気【山形県山形市】

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花笠まつりが告げる、山形の夏

今年も、山形の街に「ヤッショ、マカショ!」の掛け声が響いた。

2026年の「山形花笠まつり」は、8月5日から7日までの3日間、山形市中心部の十日町・本町・七日町通りから文翔館前までを舞台に開催された。約1万人の踊り手が、色鮮やかな花笠を手に街を練り歩いた。

筆者にとっては、山形へ移住してから3回目の花笠まつりである。初めて見たときは、「山形を代表する大きな祭り」という観光客に近い感覚だった。

しかし3年目ともなると、少し感じ方が変わってきた。街中に花笠まつりのポスターが増え、道路沿いに観覧席が並び、夕方になると浴衣や法被姿の人たちが街へ集まっていく。

そんな景色を見ると、「今年も山形の夏が来た」と思うようになった。花笠まつりの成り立ちや歴史については、昨年の記事で詳しく紹介しているので、ぜひそちらも読んでいただきたい。

今年は「雨のジンクス」を破った3日間

山形で生まれ育った同僚から、以前こんな話を聞いた。

「花笠まつりって、毎年どこかで雨が降るんですよ」

山形では、花笠まつりには雨がつきもの、というジンクスがあるらしい。実際、昨年は祭りの最中に激しい雨が降った。土砂降りの中、それでも踊り続ける団体もいた。

見る側としては、雨粒の中で舞う花笠にもどこか風情を感じる。しかし踊り手に聞けば、当然ながら雨は歓迎できるものではない。濡れた衣装や足元を気にしながら踊るのは、想像以上に大変なのだろう。

ところが今年は違った。3日間を通して大きな雨に見舞われることなく、祭りは進んでいった。雨に遮られることもなく、踊り手たちの掛け声と音楽が街を盛り上げる。毎年のジンクスを破る、熱い3日間となった。

海外から山形へ 花笠を手に踊る人たち

今年、沿道から祭りを眺めていて、特に印象に残った光景があった。

国際交流に関わる団体の中に、海外から山形へ来て暮らしている人たちの姿があったのである。浴衣を身にまとい、花笠を手に、ほかの踊り手たちと一緒に山形の街を進んでいく。

もしかすると、昨年にも同じような参加はあったのかもしれない。しかし、今年改めてその光景を目にしたとき、不思議と心を動かされた。

筆者はどこかで、「祭り」というものに、土地に生まれ育った人たちが代々受け継いでいくもの、というイメージを持っていた。もちろん、特定の地域や共同体の中で大切に守られ、限られた人々によって継承されてきた祭りも世界各地にある。その閉じられた部分もまた、伝統が持つ神秘性や魅力の一つだと思う。

一方で、目の前の花笠まつりでは、山形に生まれ育った人も、県外から来た人も、海外から移り住んだ人も、同じ花笠を手に踊っている。もともとは「外から来た人」だった人が祭りに参加し、その姿がやがて祭りの日常の一部になっていく。

文化が受け継がれる場面というのは、必ずしも昔とまったく同じ姿を守ることだけではないのかもしれない。

「今の花笠まつり」は当たり前ではなかった

そんな今年の花笠まつりを見た後、山形市内の小学校で長く校長を務めた方から、昔の花笠まつりについて話を聞く機会があった。

山形で数十年暮らし、花笠まつりを見続けてきたその方の記憶によれば、かつては現在よりも踊り方の型が厳格で、参加する人や団体にも今より制約があったという。その頃は、統一された伝統的な踊りを楽しめる一方、現在ほど多種多様な団体が参加する祭りではなかったそうだ。

また、時代が進むにつれて少子高齢化や人口流出が進み、祭りの担い手が少なくなっていく中で、「このままでは花笠まつりそのものが下火になってしまうのではないか」と感じた時期もあったという。

あくまで、長年祭りを見てきた1人の山形市民としての記憶である。しかし、その話を聞いたあとで現在の花笠まつりを見ると、目の前の景色が少し違って見えてきた。

今では、伝統的な花笠踊りを披露する団体だけではない。独自の振り付けや音楽を取り入れる団体もあれば、異なるジャンルの踊りを組み合わせたチーム、子どもたち、企業、地域団体、そして海外にルーツを持つ人たちまで、実に幅広い人々がパレードに参加している。

一つの型だけではない。それぞれの団体が、自分たちなりの花笠まつりを表現している。

花笠踊りをする自衛隊の皆さん

変わりながら受け継がれる祭り

伝統を守ることは、もちろん大切である。

長い年月をかけて受け継がれてきた踊りや音、衣装には、それだけで見る人を引き付ける力がある。

しかし今回、花笠まつりを見ながら感じたのは、変わることもまた、祭りを受け継ぐ一つの方法なのではないかということだった。伝統的な踊りがあり、その隣には個性的な振り付けがある。

山形で生まれ育った人が踊り、そのすぐ後ろでは、別の土地や国から山形へ来た人が花笠を手にしている。

同じ通りを歩いているだけなのに、次から次へと違う衣装、音楽、踊りが現れる。3日間、山形の街にいながら、さまざまな土地を旅し、文化を体験しているような感覚にもなる。

その懐の深さが、筆者が花笠まつりを好きになった理由の一つなのだと思う。

観光イベントから「自分の街の夏」へ

山形に移住して、もうすぐ3年。

初めて花笠まつりを見た頃は、有名な祭りを見に来た「観光客」に近い気持ちだった。しかし今年は違った。街に準備が始まれば夏を感じ、「ヤッショ、マカショ!」の声が聞こえれば、今年もこの季節が来たと思う。

花笠まつりが、少しずつ「見に行く観光イベント」ではなく、自分が暮らす街の夏の風景になってきた。

昔から変わらないものがあり、その一方で、新しい踊り手や文化を受け入れながら変わっていくものもある。その両方を抱えながら、今年も花笠は山形の街を進んでいった。

来年、4回目の「ヤッショ、マカショ!」を聞く頃には、この祭りがまたどんな景色を見せてくれるのか。

今から少し楽しみにしている。

山形県出身の人気芸人・ぱーてぃーちゃんのすがちゃん最高No.1さん

※写真は全て筆者撮影(2026年8月5日・6日)

◆山形花笠まつり 概要

開催日:2026年8月5日〜7日
開催場所:山形県山形市中心市街地
主な会場:十日町・本町・七日町通り〜文翔館前
内容:花笠を手にした踊り手によるパレード、伝統的な花笠踊りや各団体の創作演舞など
アクセス:JR山形駅から会場周辺まで徒歩約10〜20分

田口雄太

田口雄太

神奈川県出身。現在は山形県で探究教室の運営に携わっています。アフリカ・ルワンダでの2年間の生活経験もあり、旅と写真を通して、その土地ならではの感動を伝える記事づくりを目指していきます。

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