思わず「寒いっ!!」奇祭・水祝儀(みずしゅうぎ)で身震いするほどの幸せを!【福島県いわき市】

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 福島県いわき市で成人の日に行われる「水祝儀」は、地域の絆と伝統を象徴する行事だ。400年以上前から繰り広げられるこの行事は、新年早々、真冬の厳寒の中で新婚の男性が冷水を浴びせられるという豪快な儀式だ。今回は、この伝統行事の魅力に迫る。

 

福島県いわき市平(たいら)沼ノ内地区で毎年成人の日に行われる「水祝儀」は、400年以上の歴史を持つ伝統行事だ。「水かけ祭り」とも呼ばれるこの儀式は、地域の絆を深め、新婚家庭や地域の住民の健康と幸せを願う温かい意味が込められており、市の無形民俗文化財にも指定されている。

 舞台となるのは愛宕神社。水祝儀は同地区の未婚の青年が新婿に桶の水をかけ、無病息災・豊漁と安全・豊作を祈る江戸時代からの行事だ。

 まず、新婿の額には魔除けの「ダイコバン」と呼ばれる墨が押される。この墨付けは、悪いものをはらうとされ、神前での厳粛な祝詞(のりと)とともに行われる。そして、いよいよ本番へ。未婚の青年たちが順番に新婿の腰から下、胸から下、頭から下と3回に分けて徐々に冷たい水を浴びせるにつれ、水量も勢いも増していく。極寒の気候の中で試練を乗り越える新婿の姿には、見る人々まで寒さが伝わってくる。

また、会場では新婿だけでなく、子供や観客までもが水を掛けられることがあり、逃げ回る様子は笑いを誘うなど、賑やかで楽しい雰囲気に包まれる。

 このユニークな行事はメディアでも格好の取材の的となっている。しかし、少子高齢化や地域活性化といった現代の課題を抱えながら、伝統を守り続けることは簡単なことではない。それでも、地元の人々は未来へこの文化をつなぐため、努力を惜しまない。

 温暖な気候から「東北のハワイ」としても知られるいわき市だが、*1月は平均気温が4度程度、最低気温が氷点下を下回ることも。一年で最も寒い時期に開催されるこの沼ノ内の水祝儀は、伝統文化の素晴らしさだけでなく、地域コミュニティの絆の大切さも教えてくれる。派手なおみこしや山車もないが、新年早々みんなが笑顔になるお祭りは心が温まる。笑顔があふれるこの祭りは、地域コミュニティの大切さと伝統文化の素晴らしさを改めて教えてくれる行事だ。

写真はすべて筆者撮影

*参考:気象庁資料 https://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html

昆愛

昆愛

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。

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