「文化としての常磐ものを知ってほしい」いわき出身の学生が「常磐もの」の魅力発信【福島県いわき市】 

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海に囲まれた日本。

なかでも福島県沖は寒流と暖流がぶつかる潮目の海と呼ばれ、各港に水揚げされた魚介類は良品質の「常磐もの」として市場で高く評価されている。新年始まって間もないことし1月、その豊かな資源と営みをもっと知ってもらいたいと活動していたひとりの女性に出会った。

(写真:海の安全を守る塩屋埼灯台)

その女性は松﨑春霞(はるか)さん。JRいわき駅に隣接する商業ビルの一角で「常磐もの」の魅力を発信する「Umami Project」展を開催していた。

(写真:常磐ものを代表する食材「メヒカリ」で作った唐揚げ)

地元いわき市出身の松﨑さんは大学進学を機に山形に転居、現在は東北芸術工科大学デザイン工学部4年生だ。にこやかな笑顔で「高校までいわきで生活していた私は、地元には何もない、って思っていました」と話す。その原体験が彼女にとってのふるさと再発見の始まりだった。

まず、常磐ものについて実態を把握すべく独自アンケートを実施。しかし、知名度は思っていた以上に低く、県内出身者を含めまさかの42%にとどまった。それをきっかけに試行錯誤を重ね、「ホッとする」をテーマにした「Umami Project」を起案。水産資源の魅力だけでなく、いわきで活躍するさまざまな“地域人”に着目した魅力を発信することで、常磐モノが再認識できるのではないかと考えたのだ。言い換えれば、魚介類だけでなく、旨味のある”人”も巻き込んだ企画だ。

「Umami Project」展の会場では、来場者にかつお節、昆布、いりこの入ったそれぞれのビンのふたを開けてもらい、感想を聞く企画も行った。松﨑さんは「くさい、とか、猫のご飯のにおいがする、とか、子供たちの素直な感想を聞くことができました」と話す。

(写真:大漁旗は協力してくれた鮮魚店が提供してくれた)

また、展示の方法にも工夫を重ねた。自らデザインしたビジュアル系のブースを右側に、そして、自ら制作した音声番組や来場者に「あなたの考えるいわきの旨味」を書いてもらう場も用意し、一緒に常磐ものを盛り上げていく仕掛けとした。音声配信サービスポッドキャスト「Umami radio」での情報発信も行った。

「キャンパスがある山形は冬の間は曇天が続くので、いわき出身の私にはこたえますね」と、笑いながら話す松﨑さん。準備に約1年かかったこのプロジェクトを卒業した後は都内の会社に就職することが決まっている。しかし、「いつかはいわきに戻ってきて起業したい」と明るく語った。今後も、常磐ものやいわきの魅力を広めていく上で、彼女は重要な役割を果たしていくだろう。

昆愛

昆愛

福島県郡山市

第4期ハツレポーター

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「東日本大震災における津波で被災した月待塔の追跡調査について」で渡部潤一奨励賞受賞。

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